149.息子、邪竜のためにおかゆを作る【前編】
不調の母を残し、リュージは冒険へいってきた。
仕事の間、ずっと母のことが心配でしょうがなかった。
仕事を終えて、リュージは家のドアをくぐった……そのときだ。
「りゅーくーーーーーーーーーーん!」
母カルマが、元気いっぱいの笑顔で、リュージに抱きついてきたのだ。
「わっぷ」
「りゅーくんおかえりなさいっ! お仕事お疲れ様でしたー!」
ちゅっちゅっ♡ とカルマがリュージの頬にキスをする。
普段ならやめてと押しのける。
しかし今日は違った。
「…………」
「おやどうしたのりゅーくん?」
「母さん……大丈夫なの?」
リュージは母の体をつぶさに見やる。
今朝は、顔色がすごく悪かった。
しかし……。
「もうぜーんぜんへいちゃら! お母さん完・全・復・活!」
カルマはリュージから離れると、むんっ! と腕を曲げる。
「元気すぎてもうヤバいですよお母さんは! もう月まで破壊しちゃいますもんね! オカンびーむ!」
カルマは窓の外を指さす。
そこから光線が発射し、窓を突き破って、空へとビームが飛んでいく。
ビームは月を打ち抜く。
ドーナツ型の月になってしまった。
「…………」
普段なら、ここで母を叱るところだが。
リュージは、その場にへたり込んだ。
「だだだっ、大丈夫りゅーくん!?」
カルマがリュージのそばに座り込んで、気遣わしげな表情で見てくる。
「うん……うん……よかったぁ……」
リュージは眼に涙を浮かべ、微笑んだ。
「よかった……かあさん……死んじゃうんじゃないかって……だから……元気で……良かった……」
うっ、うっ、とリュージは嗚咽をもらす。
それほどまでに、母が倒れたという事実が、怖かったのだ。
あの最強無敵な母が。
倒れてしまうなんて。
よほどのことが、あったんじゃないかって、不安だったのである。
「りゅーくん……ごめんね!」
カルマはリュージを、思い切り抱きしめた。
むぎゅっ、と力強く抱きしめてくる。
リュージのあまたを撫でてくれる。
「ごめんね……心配かけて……。でも、お母さんうれしいわ……本当に優しい子に育ってくれて……」
カルマは何度も何度も、抱きしめる。
愛情を確かめ合うように、リュージ達はハグをした。
ややあって、抱擁を解く。
「おかあ……お母さんもう元気百裂拳ですよ! あたたたたた!」
超高速で、カルマが拳を繰り出す。
どがががががっ!
衝撃で壁に穴が空いた。
壁にはリュージの笑った顔が描かれていた。無駄に器用な母である。
「ね! ほらお母さん超元気! だから安心してね!」
「うん……わかったよ、母さん」
何はともあれ、母の元気な姿を見れて、リュージはホッとしたのだった。
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