147.息子、母と祖母の仲を取り持つ【中編3】
王都には女神像がある。
この国はみな、地上をつくりし女神様を信仰している。
1年のはじめは、国民は王都まで足を運んで、この女神像の前までやってきて、一年の無事を祈る。
リュージ達は女神様の前でペコッと頭を下げ、今年も無事であることを祈った。
参拝をおえた、帰り道。
「みんなは何を祈ったの?」
リュージはシーラたちに言う。
「しーらは、みんなしあわせになりますよーにって!」
「……シーラらしい願い事ね」
「ルトラちゃんは?」
「……あたしは、まあ、その」
ちらちら、とルトラがリュージを見やる。
頬を染めて、しっぽをゆらゆらとゆらしていた。
「りゅーくん! お母さんはね、お母さんはね!」
「僕の健康とか?」
「な、なぜわかったんですかー!?」
カルマが目をむいて驚く。
リュージ達は苦笑する。
「カルマは相変わらずね~」
「かるま。ひねり。ない」
「呆れるほど単純な思考回路じゃな……」
「でも、カルマさんらしーのです!」
仲間たちがニコニコしている。
カルマもまた笑ってリュージを見やる。
「りゅーくんが何事もなく、平穏無事で、健康的な生活が送れますよーにって! お母さんお賽銭も奮発しちゃいましたからっ!」
え……? と思ってリュージは慌てて背後を見やる。
女神像の前には、お賽銭を入れる箱が置いてあった。
……賽銭箱から、金貨があふれていた。
というか、大量の金貨で埋もれていた。
「おいなんだこりゃ!」「金貨が箱からあふれんばかりはいってるぞ!」「どこの大富豪が入れたんだ!?」
……はぁ、とその場に居たリュージ達は、みな呆れたようなため息をつく。
「母さん、あのお金どうしたの?」
「ここぞというときの昔からため込んでいた金貨の、ほんの一部を入れてきました!」
「もう……」「カルマさんらしーのです!」
みんなが苦笑する。
マキナはそれを見て、目を丸くしていた。
「カルマ。おまえいつもこんなふうに迷惑をかけてるのか?」
「……べ、べつにいつもじゃないですし! ねえ?」
「「「…………」」」
「ちょっと!? みんな!?」
「カルマ……おまえ……」
「ち、ちがいますって! 周りに迷惑かけることなんて、ちょっとですよ! ねえみんな!」
「「「…………」」」
「カルマ……」
「ちっがーう! 迷惑かけてないもん! わーん、りゅーくーん!」
カルマがリュージに抱きついて、おいおいと泣く。
「そうだよね、みんなに迷惑かけてないもんね」
「うん!」
「たまにしか」
「ほらぁ!」
マキナがそのやりとりを見て、アハハと笑った。
「まったく……これではどちらが親なのかわからないではないか。愉快な親子だな」
「う、うるさい!」
よし……とリュージはうなずく。
少しずつだけど、母がマキナと会話し始めてきていた。
これでいいんだ。
もっとたくさん、ふたりは話し合って欲しい。
今まで話せなかったこと、今も話せないで居ること。
お互いため込んでいることがあるせいで、ふたりはぎくしゃくしているのだ。
それを全て吐き出して……仲良くなって欲しいのだ。
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