147.息子、母と祖母の仲を取り持つ【中編】
初詣にやってきたリュージ達。
ここはこの国の王都。
みな正月になると、女神の像のある王都へとやってきて、一年のご挨拶にいくことが習慣としてあるのだ。
カルマの転移スキルで、リュージ達は一瞬で王都へと到着。
「ひとがおおいのですぅ~……」
「しーら。まいご。ならぬよう。きをつけ。る」
「るぅちゃん! ありがとー! 気をつけるね-!」
「ほらほらみんな、早く動きましょう。後のヒトが困っちゃうわ」
「「「はーい!」」」
正月ということで、普段以上に王都のヒトの数は多い。
メインストリートが、ヒトで埋まっている。
視界いっぱいに人間の顔が合って、普段田舎に住んでいるリュージとしては、こんなにたくさんひとがいるのかと圧倒された。
「そう言えばリュー、正月に王都へ来るのは初めてだったわね」
「そうですね。母さん、人混みで僕が迷子になったらどうしようってことで、つれてってもらえなかったんです」
だから今回、はつ初詣である。
「……女神様にあいさついかないひとって、いるんだ」
ルトラが目を丸くする。
「あはは……ごめんね、田舎者だから僕……」
「そんなことはなぁい! りゅーくんは超都会人! 断じて田舎者ではないです! 気に病む必要はナッシング!」
カルマがグッ……! と拳を握る。
逆の手には、幼女化したマキナの手が、にぎられていた。
どうやら母は、リュージのお願いを、素直に聞いてくれたみたいだ。
「…………」
さて、なんでこんなことになっているのか。
リュージはマキナとカルマの関係性を知っている。
マキナはカルマの実母。
しかしカルマは、マキナのことを遠ざけている。
その理由は、マキナの記憶から読み取った。
勇者としての自覚を得たからなのか。
従者であるマキナの過去を、のぞき見ることができたのだ。
それによると、どうやらカルマは、マキナからあまり愛情を持って育ててもらえなかったみたいだ。
そのことを母が今でも気にしている。
だから、ぎくしゃくした関係性となってしまっているのだ。
……しかし、そんなのはおかしいと、リュージは思った。
マキナたちには、仲良くして欲しい。
だって血の繋がった、本当の母と子なのだから。
家族とは仲良くする者、愛情をもってそばにいることと、リュージはカルマから教わった。
だから、マキナには、カルマと普通の親子として、普通に接して欲しい。
仲良くなって欲しい。
だから、こうして一計を案じ、カルマとマキナとが仲良くなれるよう策を講じた次第だ。
「ヒトいっぱいで迷子にならないように、子供組はちゃんと大人の手をにぎってましょうね~」
チェキータがリュージ、そしてマキナを見やる。
今回チェキータにも協力を仰いでいる。
ふたりの仲を取り持ちたいと相談したところ、快諾してくれたのだ。
ルコとバブコは、リュージが。
そして……マキナは、カルマが。
しっかりと手を握って、歩く。
「……迷子にならないでくださいよ。面倒だから」
「ああ。ありがとう、カルマ」
「……別に。あなたのためじゃ、ない」
たどたどしくも、しかし、ちゃんと会話してくれていた。
リュージは嬉しかった。
家に居るとき、カルマは積極的に、マキナと関わろうとしないのだ。
これなら、ちゃんとふたりで会話してくれる。
「さっ、まずは女神像のところへいって、お参りよ~。レッツゴー」
「「「おー!」」」
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