146.邪竜、息子たちと初日の出を見る
年の瀬と言うことで、パーティをしているリュージ達。
酔い潰れた母も、数十分後にはケロッとした表情で帰ってきた。
飲んで騒いで大はしゃぎし、0時を越えて、新年を迎えた。
「ハッピーニューりゅーくん! りゅーくん!」
カルマが不思議な筒とヒモを引っ張ると、筒から紙吹雪が出てきた。
異世界の【くらっかー】とやららしい。
「もう、ハッピーニューりゅーくんってなにさ」
「新・りゅーくんをお祝いするって意味ですよ!」
いえーい! とカルマがテンション高めで言う。
「これで新しいりゅーくんを迎えたわけです……ぐす……大きくなってぇ~……」
「もう、大げさなんだから……」
いつも通りの母を見て、ホッとするリュージ。
もうすっかり体調は元通りになっているみたいだった
「新年明けたと言うことで、初日の出を見ましょう!」
いえー! とカルマがまたもハイテンションで言う。
「まだ夜が明けるまで、時間があるのです~」
「でも。るぅ。ねむい……ふぁー……」
幼女たちが眠そうに、ウトウトしていた。
「ご安心ください。このお母さんにお任せあれ!」
ドンッ! とカルマが胸を叩く。
母の「安心してください」ほど、安心できないものは、この世になかった。
「ささっ、みんな厚着して。お外に出ましょうね~」
とてつもなく嫌な予感を覚えながら、リュージ達はコートを着て外に出る。
顔が痛くなるほどの寒さの中、リュージ達は家の屋上へと上る。
「母さん、何するの?」
「もちろん、初日の出を。ルコたちが眠くなる前に」
「でっでもでも、夜明けまでまだ6時間くらいあるのです~」
ふふんっ、とカルマが鼻を鳴らす。
「大丈夫! よい子に夜更かしなんて、お母さんさせません! うなれ! 私の母力!」
カルマが右腕をバッ……! と前に出す。
「はぁ~~~~~~~~~~~~!」
カルマが気合いを入れて、腕を上に上げていく。
額には汗と、そして血管が浮き出ていた。
いったい何を……と思った、そのときだった。
ごごごごごっ……!!!!
突如、地面が激しく揺れだしたのだ。
「な、なんだぁ!?」「ゆれゆれなのですー!」
そして……リュージは気付いた。
「あれ!? 空が……明るくなってる!?」
さっきまで真っ暗だったのに、辺りがぼんやりと明るくなってくる。
バカな! と思って東の空を見て……リュージは絶句した。
太陽が、昇っていたのだ。
まだ夜が明ける時間ではない。
なのに、朝日が立ち上っている。
「お母さん、ちょっと気合い入れてこの星を動かしました。これで夜明けまで待たずとっも、初日の出が拝めるってもの!」
「「「…………」」」
その場にいた全員が、呆れたようにため息をついた。
「母さん……相変わらずだなぁ」
「カルマさんは今年も元気元気なのです!」
「ささっ♡ みんな、一年の計は元旦にあり! 太陽にお願い事しましょう!」
リュージ達は手を合わせて、太陽に頭を下げる。
「……今年も一年、比較的……何事もありませんように」
確か去年も同じことを願ったはずだ。
だが結果は去年のとおり。
今年もまた波瀾万丈が待ち受けていることは、この母がそばにいるかぎり……確定していた。
けれどリュージは、嫌じゃない。
母が起こす騒動は、賑やかで大好きなのだから。
今年もいい年になれば良いなと、リュージは思ったのだった。
書籍、コミック、いよいよ明日発売です!
精一杯良い本になるよう、僕も鍵山さんも、四志丸さんも頑張って作りました!
本当に良い作品になってます!
ぜひ、お手に取っていただけますと嬉しいです!