表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

27/383

19.邪竜、(遠隔操作で)息子を強くする【前編】

お世話になってます!




 自動回復システムを作ったその日の夜。


 母はリビングにて、ひとり優雅に【日課】をこなしていた。


「ハァイ、カルマ。こんばんは」


 ドアが勝手に開き、監視者チェキータが入ってくる。


「家の人間の許可を取らずに入ってこないでください」


「まー、いいじゃない。監視者ですもの」


 この女が無神経なのは承知している。


 それよりカルマは、日課をこなす方が先決だった。


 カルマはイスに座って、ふんふん、と目の前の【それ】を見ている。


「あなた何してるの?」


 チェキータがカルマの背後に回り込み、ぐにゅっとそのでかすぎる胸の押し当ててくる。


「その暑苦しい胸を押しつけないでください」


「まあまあ。……で、なにそれ。リューが写ってるけど」


 カルマが見ていたのは、【鏡】だ。


 ただしカルマの姿は映ってない。


 かわりに、リュージの姿が、鏡の中にあった。


 それも上空から見下ろすような映像である。


「無知なるあなたに教えてあげましょう」


 ふふふん、とカルマがドヤ顔になる。


 どうやら自分の作った素晴らしい発明を、誰かに自慢したかったみたいだ。


「これは天空城から送られてきた映像を、魔法で映し出しているのです」


「天空城って、あんたがこの間作ったあれ?」


 そう、とカルマがうなずく。


「りゅー君を24時間監視するシステムは以前作りました。で、その監視映像を録画して、この鏡へと転写するようシステムを改良したのです」


「監視者よりもよっぽど監視者じゃない、今のあなた」


 あきれ調子でチェキータ。


「母の愛ゆえにです。りゅー君の身に危険が及んだら困りますからね。母には、24時間365日、息子を守る義務があるのです」


「そんな義務、お姉さん聞いたことないわよ」


 やれやれ、とチェキータが首を振るう。


「まーたリューに叱られて凹むわよ」


「だまらっしゃい。……むむ、りゅー君の部屋にシーラが入ってきましたね」


 鏡の中にリュージの部屋が移っている。

 

 寝間着姿のシーラが入ってきた。


「あら、リューったら。シーちゃんと夜の密会かしら?」


「ふふ、馬鹿めチェキータ。りゅー君は明日の冒険の打ち合わせをしているだけですよ。夜の密会とか、これだから色ぼけエルフは」


 ふーやれやれ、とカルマが首を振るう。


 息子の行動パターンは全て把握しているのだ。


 夜寝る前に、彼らは明日の打ち合わせをするのである。


 さておき。


 カルマは映像に注視する。


 監視映像は録音機能までついているので、ふたりの会話が聞こえるのだ。


 息子はシーラと向かい合って座っている。


【最近まずいと思うんだ】


【まずい? そんなことないのです。カルマさんのお料理はいつもとってもおいしいのです】


 どうやらシーラは、息子が母の料理の話をしていると、勘違いしているらしい。


「いいですよシーラ。ぷらす5ポイント」


「何のポイントよ何の……」


 息子がシーラに説明する。


【最近レベルが上がってないなって思って】


【あー、そっちかぁ】


【最近採取クエストばかりでしょ。お金は貯まるけど、モンスターを僕らは倒してない。だから強くなれてないんだ】


 息子の言うとおり、彼は最近ずっとアイテム採取だけで、モンスター狩りをしてない。


「なぜでしょうか?」


「いやぁどう考えてもあんたのせいでしょ」


「なんと。私が? 何かしましたっけ?」


「ま、リューが説明するわよ」


 カルマが鏡に視線を戻す。


【天空城からのビームのせいで、僕らが敵を倒す前に、母さんが敵を倒しちゃうから】


【そっかぁ。経験値がたまらないんだね】


 息子の安全のため、リュージに敵が近づくと、自動で【光】が落ちて敵を撃滅するシステムを作ったカルマ。


 これによって、息子の身の安全は守られた。


 素晴らしい発明だと、自負していたのだが……。


「思わぬ誤算です……」


 鏡の映像を切って、がっくり、と肩を落とすカルマ。


「た、確かに私が敵を倒してるから、りゅー君たちのレベルがあがりません……」


 はわわ、とカルマが慌てる。


「これはなんとかせねばっ!」


 とカルマが奮起したそのときだった。


 2階から、リュージと、そしてシーラが降りてきた。


「母さん。ちょっと話があるんだ」


 どうやら息子が、母に頼み事をしたいらしい。


 言うまでもなく、さっきのレベルが上がらない問題についてだろう。


 我が意を至りとカルマはうなずく。


「大丈夫です、りゅー君。お母さんに任せてくださいっ!」


 どんっ! とカルマは自分の胸をたたく。ばうん、とその大きな胸がはねた。


 リュージはそれを見て……額に冷や汗を垂らす。


「ま、任せるってなんのこと?」


「だからお母さんに任せてください。全てを母にゆだねるのです。さすれば問題はたちどころに解決するでしょう」


 自信満々のカルマ。


 すでに【息子強化計画】は頭の中に何通りも浮かんでいる。


「いや……母さん。僕の話聞いてって」


「大丈夫大丈夫。お母さんに任せれば大丈夫です」


「母さんに任せて大丈夫だったときって、一度もないんだけどっ!」


「だいじょぶだいじょぶ」


「母さんの大丈夫は大丈夫じゃないんだよぉもぉおお!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ