145.邪竜、新年会する【中編】
年末と言うことで、リュージ達は自宅でパーティをすることになった。
夜も更けてきた頃。
「レッツパーティーですよ、みんな!」
母が笑顔で言う。
パチンッ! とカルマが指を鳴らす。
テーブルの上に並ぶのは、とてつなく豪華な食事の数々。
「じゅるる……うまそう……こんなにたくさん……」
「おかわりもありますよ♡」
「カルマさんっ♡ だいすきなのですー!」
わぁい! とシーラが両手を挙げる。
リュージ達はリビングのテーブルを囲う。
それぞれの目の前に、シャンパングラスが出現した。
「この無駄肉エルフが、良いところのシャンパンを買ってきてくれましたー。はい適当にはくしゅー」
カルマがじつにやる気なさそうに言う。
「かあさんっ。もうっ。チェキータさんがせっかくもってきてくれたんだよっ?」
「いいのよぉ。別に気にしないで♡ それより早く乾杯しましょう?」
カルマがシャンパンの栓を、手刀で切る。
パチンっと指を鳴らす。
するとボトルからシャンパンがあふれ出し、それはそのまま、リュージ達のグラスに注がれた。
1滴もこぼさず、見事均等な量に分けられていた。
「あら器用ね。るぅちゃんの【念動力】?」
「そう、ルコから教えてもらいました。ねー、ルコ~♡」
「かるま。のみこみ。はやい。ししょー。るぅ」
どうやら母は、相手の能力だろうとコピーできるようだった。
さすが規格外母。
「さぁみんな~♡ 新年に向けて~……かんぱーい!」
「「「かんぱーい!」」」
リュージ達がグラスを付き合わせる。
ぐいっ、とシャンパンを飲む。
喉を通る炭酸が、じつに心地よい。
「どう、リュー?」
「シャンパンって僕初めて飲みましたけど……とってもおいしいです!」
「それは良かった♡ 今度別のお酒もっともってくるわね。あなた大人なんだから、酒はたくさんたしなまないと」
そう言えば15歳で成人を迎えたはずだった。
だが母がそばにいるので、あまり自分が大人になった実感がない。
お酒とか飲めば大人っぽくなるだろうか?
「りゅーくぅ~~~~~~~~ん♡」
カルマが(いつも通り)、リュージに抱きついてきた。
「えへへ~~~~~ん♡ りゅーくんちゅっちゅ~~~~~♡」
カルマが真っ赤な顔して、リュージのほっぺにキスの雨を降らす。
いつも通りだが……なんだか母の様子が変だ。
「こんらりおっきくなっれ~♡ おかーしゃんうれしい! だいすきっ!」
「か、母さんっ? もう酔っ払ったの?」
「しょーなの! よっぱらったの~♡ あははははははっ!」
ケラケラとカルマが楽しそうに笑う。
「りゅーくんもっとたっくしゃん食べて飲んで~♡ わらしいっぱいつくったんらか~♡」
ねーねー、とカルマが赤い顔でリュージに言う。
いつも脳天気そうだが、今は輪をかけて知性を感じなかった。
「ほぉらカルマ。リューが困ってるじゃあない。どきなさい」
「はーーーーい♡ ちぇきーたー♡」
カルマが……素直にチェキータの言うことを聞いていた。
リュージは目を丸くする。
「母さんって、お酒ダメだったんだ」
「そー、あの子ってば下戸も下戸よ」
「知らなかった……」
母派との付き合いが長いと思っていたけど、知らないことも多いみたいだ。
「ほらカルマ。ちょっとあっちで酔いを覚ますわよ」
「やーらー。もっとのむ~」
カルマがチェキータに引きずられ、いずこへと去って行った。
「ええっと……じゃ、食べよっか」
「「「おー!」」」
そうまだ料理はまったくの手つかずなのである。
書籍、コミック第2巻、いよいよ今週発売です!
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ぜひお手にとっていただけたら幸いです!
「冒険に、ついてこないでお母さん!」
第2巻はどちらも12月25日発売です!!!