136.息子、母とデートする【前編】
シーラとともに、夜の街でスープを食べて、その数十分後。
リュージは自宅の前までやってきた。
「りゅーくん」
ふわり、とカルマが宙に浮いている。
「母さん」
リュージの前に母が軟着陸する。
「こんな夜更けにどこへいってたのですか?」
「えっと……シーラとちょっとお散歩」
ジッ……とカルマがリュージを見やる。
こんな寒い中、外に出るなんて危ない! とでも言われるのかも知れない……。
「そうですか。とがめる気はありませんが、次からは出かけるときは一声かけてくださいね」
カルマはごく自然な調子で、リュージに当たり前のことを言う。
リュージは目を丸くした。
「どうしたのですか?」
「あ、いや……なんでも……」
当たり前のことを言う母に驚いていた、なんて、母に言うのはためらわれた。
「夜も遅いですし、中に入りましょう。ね?」
「う、うん……」
そのときだ。
ふっ……とチェキータが、煙のように、隣に現れたのである。
「ハァイ、リュー、しーちゃん」
「チェキータさん」
「カルマ、リューはしーちゃんとデートしてたみたいよ」
「なんと!」
カルマがリュージとシーラを見やる。
むむっ、とカルマの目がつり上がる。
「うらやましー!」
かーっ! とカルマが両手を挙げて叫ぶ。
……アア良かった、いつも通りの母だ。
リュージは内心でホッとする。
「りゅーくん! お母さんも! お母さんとデートしましょう!」
「うん……いいよ」
リュージはうなずいた。
母とも話したいことがまだあるのだ。
「よぅし! これからデートしてきます!」
カルマがリュージの腕に触れる。
そのときだ。
バチッ……!
リュージとカルマの間に、電流のようなものが走った。
「あいたっ」
「あぁあああああありゅーくん大丈夫ゥうううううう!? ケガ無いぃいいいいいいいいいいいいい!!!」
カルマが目を品むいて叫ぶ。
「落ち着きなさい、カルマ。ただの静電気よ」
「そ、そうですか……良かったぁ……」
ほぉ、とカルマが安堵の吐息をつく。
「もう肌が乾燥する季節なのです。静電気が起きても不思議じゃないのです」
「そうよぉ、静電気くらいでまったく、カルマはおおげさなんだから」
やれやれ、とチェキータが首を振る。
リュージは自分の手を見やる。
確かに、静電気だと思った。
……けど、何か違和感のような物を感じた。
「どうしたのです、りゅーくん? ハッ! まままっ、まさか今ので大けがを!?」
カルマが青い顔をしてリュージに詰め寄る。
ハシッ、と母がリュージの頬を両手で包む。
今度は、電流を感じなかった。
やっぱり、さっきのは、ただの静電気だったのだろう。きっとそうだ。
「大丈夫だよ、母さん」
「ハァ~~~~…………良かったぁ~…………りゅーくんが無事で……」
くすん、とカルマが鼻を鳴らす。
「じゃ、リュー。お姉さんたちもう寝るけど、カルマのことよろしくね」
チェキータはシーラとともに、家の中へと戻っていた。
あとにはリュージとカルマだけが残される。
「さっ! デートしましょう!」
「うん、いいけど……どこいくの?」
「おまかせあれ!」
カルマは気合いを入れる。
すると、美しい人間の体から、見上げるほどの大きさの邪竜へと変化した。
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