135.息子、恋人と夜のデートする【中編】
リュージは厚着に着替えて、自宅の前でシーラの到着を待った。
季節はもう冬。
今にも雪が降っていそうなほど、外気は寒い。
はぁと吐いた吐息は真っ白になっていた。
「おまたせなのです!」
自宅の出入り口が開く。
そこには……もこもこの毛玉があった。
否、温かそうな白いコートを着た、シーラだった。
「あったかそうだね」
「はいなのです! チェキータさんからもらったのです!」
首元にも白い手編みのマフラー。
頭にはニット帽。
手袋も白い毛糸で編んであった。
「りゅーじくん、はいこれ!」
シーラが笑顔で、何かを手渡してくる。
青い毛糸で編んだマフラーだった。
「おそろい……なのです! しーらが作ったのです!」
「わぁ……! 僕にくれるの?」
「はいなのです! あげるために作ったのです」
えへへとシーラが笑う。
自分のために、恋人が何かを作ってくれた。
そのことが無性にうれしかった。
リュージはお礼を言って受け取る。
「あ、まってりゅーじくん! しーらが……しーらが!」
「シーラが?」
こくこくとシーラがうなずいて、リュージからマフラーを受け取る。
彼女は背伸びして、リュージの首に、マフラーを巻いてくれた。
「えへへ♡」
シーラは微笑むと、リュージの手を取る。
「いこ、なのです」
「うん、いこっか」
リュージは手をつないで、冬の夜道を歩く。
繁華街へ向かって歩くと、人が増えてくる。
「夜遅いのに結構いるね」
「夜型冒険者さんなのです」
冒険者は自由業。
何時に仕事をしても言い。
むしろ夜に活動する人の方が多いとか。
リュージの様に朝仕事へ行って夕方帰ってくる方が少数派らしい。
道行く人たちが、手をつなぐリュージ達を見やる。
リュージは恥ずかしくてうつむく。
シーラもまた、首まで真っ赤にしていた。
「て、照れるね。手を離そっか」
しかしシーラが、リュージの手をハシッと掴む。
「シーラ?」
「きょ、今日は……や、なのです。一緒に……いよ?」
ね、とシーラが見上げてくる。
「う、うん……」
気恥ずかしいが、振りほどくことは出来なかった。
彼女の温かな肌に触れていると、凹んでいた気分が、回復していく気がするから。
今日は彼女のぬくもりが欲しい。
そばにいたい。
リュージはうなずいて、彼女と手をつないで、街を歩く。
道行く人たちの目線を気にしながら、リュージ達は歩く。
「どこいくの?」
「おいしースープの屋台さんあるのです。そこへいこーなのです!」
リュージはうなずいて、彼女の案内で、目的地へと向かう。
そこは、ギルド近くにある、噴水広場だった。
「こんな夜遅くにやってるの?」
「やってるのです。ほら!」
噴水の近くに、屋台が出ていた。
近づくとコンソメの良い匂いがしてくる。
簡単なテントの下で、店主が鍋をかきまわしている。
「きょーはしーらがおごるのです! おじさま、スープ2つなのです!」
「あいよー」
店主は紙コップにスープをつぐ。
それを二つ、リュージに手渡す。
「いいの?」
「もちろん!」
そう言って、シーラがコートのポッケに手を入れる。
「あ、あれ?」
ポケットに手を突っ込んで捜すシーラ。
ややあって。
「お財布置いてきちゃった……」
リュージは苦笑すると、カップをシーラに手渡す。
リュージが勘定を済ませる。
「ごめんなさい~……」
しゅん……とシーラが凹む。
「謝ることないよ。そもそも奢る必要ないし」
「けど……けど、おちこんでるりゅーじくん、はげましたかったのに……」
なるほど、そういう意図があったのか。
「ありがとう。その心遣いだけでうれしいよ。ほら、冷めないうちにスープのも」
「……うんっ」
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