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132.息子、真実に向き合う【後編】



 リュージは母に、無人島で知り得た真実を語った。


 マキナとであったこと。


 祠の中で自分そっくりの、子供勇者を見つけたこと。


 それは勇者ユートの転生した姿であり、リュージそっくりだったこと。


 実はリュージは勇者の細胞から作られた人造生命体であること。


 自分は純粋な人の子ではなく、作られた存在であるため、本当の両親はいないこと。

 リュージは、マキナから聞いたことを、母にすべて伝えた。


 母に包み隠さず話したのは、胸の中でひとりで抱えていくことができなかったから。

 一人じゃ処理しきれなかった。自分が人間ではない、常人の枠を越えた異端の存在であることを、自分一人じゃ受け止められなかったから。


 ……母に、甘えたのだ。


 常日頃から母に甘えてはいけないと自分に言い聞かせているリュージだが。


 このときばかりは、母の優しさと、ぬくもりが欲しかったのだ。


「そうだったんですね」


 リュージが真実を語る間、カルマはリュージの頭を胸に抱き、頭をなで続けた。


 彼女の温かな肌と、そして優しい愛撫が、リュージのささくれだった心をいやしてくれた。


「りゅーくんが……勇者、かぁ……」


 うむむ、とカルマが考えた後。


「うちの子……すごい!!!!」


 ぺかーっ! と表情を明るくさせて、カルマが弾んだ声で言う。


「へ?」

「すごい! すごいわりゅーくん! 大天使か神かといつも思っていたけどまさか勇者とは! ひゃあすごい! さすがりゅーくん! お母さん自慢の子ですよー!」


 えへへっと笑いながら、カルマがリュージをキツく抱擁する。


「はぁ~~~~~ん♡ 自慢したい! うちの子が勇者だったんですよー! 特別なんですよー! って、全世界に知らしめたい! いやっ! 知らしめなきゃっ!」


 ぱちんっ! とカルマが指を鳴らす。

 万物創造の力によって、そこらじゅうに【朗報! 息子が勇者だった!】みたいなポスターが山と積まれる。


「や、やめてよ。やめてってばっ」

「おやどうして? 息子が超すごい存在だったんですよ! これはもうお祝いです! そしてこの嬉しい知らせを全世界に向けて共有しなければっ! 自慢したい! あー自慢したい~!」


 明るい態度を一貫するカルマを見て、リュージは不思議がった。


「母さんは……どうして? どうして……喜んでいるの? どうして、いつも通りなの」


 自分は作られた存在だった。

 自分は、なんだかよくわからない存在だった。


 それを知ってなお、カルマは普段通りを貫いていた。

 

「僕は……作られた命だったんだよ?」

「? 命はみな作られるでしょう? 母親と父親によって」


「いや……それは……」

「普通だって雄と雌とが交尾して子供を作ります。それは命を作る作業ではありませんか。りゅーくんがどう作られたのか知りません。けど子供は皆、作られてこの世に生まれ落ちるではないですか。それのどこがおかしいのです?」


 それに、とカルマが力強く言う。


「りゅーくんはりゅーくんです。たとえあなたが何者であっても、あなたがお母さんの息子であることは、微塵も揺らぎませんよ」


 ね……とカルマが笑う。

 母の笑みに、優しさに、リュージは救われた。


「エグっ……ぐす……うぇえええええええええええええええん…………」


 リュージはうれし涙を流した。

 自分を受け入れてくれる母の存在に感謝しながら、リュージはいつしか、深い眠りについたのだった。

これにて11章終了です。

次回から新展開に入ります。その前に掌編いくつか挟む感じになると思います。


次回からもよろしくお願いします。

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