131.邪竜、息子を守るために立ち向かう【中編】
海底に引きずり込まれていたカルマは、息子を守るためにと奮起し、なんとか自力で脱出できた。
そのまま空中戦に持ち込む。
マキナは空を飛ぶことができない。
海上からこちらに向かって嵐や雷の魔法を打ってくる。
それらは万物破壊でいなす。
マキナのしっぽが絡みつく前に、飛び上がる。あれに捕まると厄介だ。
「母さん!!!」
無人島の浜辺に愛する息子がいた。
カルマはさらに発奮する。
息子のためにやるのだ。
たとえ、親殺しをすることになっていても。
【うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!】
カルマはブレスを吐き出す。
マキナは海中へ潜ってそれをかわす。
天空より何本も竜巻が発生し、カルマの体をすりつぶそうとする。
だが万物破壊の雷を体に纏わせることで、竜巻を破壊。
【先ほどまでとは打って変わっての、冴えた戦い方だな、カルマ】
【……うるさいですよ】
カルマは念話で、母と会話する。
そう、苦戦していたのは、マキナを倒すことに対して、躊躇していたところが、少なからずあったからだろう。
なんだかんだ言っても、マキナはカルマにとっての生みの親だ。
ネグレクトされても、酷い仕打ちを受けても、それでも親は親。
倒すことにためらいを覚えていた。
……しかし、迷いはもう振り切っていた。
【私はおまえを倒す!!】
【……そうか。それでいい】
マキナが魔法攻撃をやめて、カルマめがけて直接、突進してくる。
カルマはそれを飛んで逃げようとする。
だがその先にマキナのしっぽがあった。
マキナのしっぽが素早い動きで、カルマの足に絡みつく。
その瞬間、カルマは邪竜から人間へと変身。
マキナは邪竜の太い足に、自身のしっぽを絡めていた。
人間サイズになったことで、しっぽをカルマはすり抜けることができる。
【こしゃくな】
そう言って、マキナが大口を開ける。
口から嵐と雷のブレスを、カルマめがけて飛ばす。
カルマはそれを……避けなかった。
両腕をクロスさせ、万物破壊の雷で、魔法攻撃をはじく。
【……ほう。避けぬか。後の人間たちに当たるからか?】
カルマの背後にはリュージ……ではない。
ゴーシュたち冒険者の住居スペースがあった。
【カルマ。貴様、息子以外の存在を守ろうとしたのか?】
「……そうですよ。それがなにか?」
あのまま避けたらゴーシュたちに当たっていた。
となると、カルマにとっては嫌なことだった。
息子と仲良くしてくれたゴーシュたち。
そして自分を頼ってくれた彼らを……殺したくないと、そう思ったのだ。
【いや。……変わったのだなと思ってな】
「……うるさい。さっさと終わらせますよ」
カルマが再び邪竜へと変身しようとした……そのときだ。
「母さん!!」
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