131.邪竜、息子を守るために立ち向かう【前編】
母が金竜と戦っている、一方その頃。
リュージは部屋にひきこもっていた。
「…………」
設えれたベッドの上で、リュージは横になっている。
突きつけられた真実に、リュージは打ちのめされていた。
「僕に……両親はいない。僕は……作り物の……存在」
自分の両親については、長年の謎だった。
その答えをここで、偶然手にしたリュージ。
だがその真実はあまりに耐えがたい物だった。許容しがたいものだった。
以前から、自分は人間ではないのかもと思っていた。
普通の人間がルコやバブコなど、他人を出産できるわけがないのだ。
自分は人間じゃないとわかっていた。
けれどその実体は……作り物の存在だったということ。
勇者の細胞から作られた命。
つまりそれは、母も父もいないということ。
「…………」
動揺、そして混乱。
頭の中でいろんな情報、思いがぐるぐると渦を巻く。
生まれたときから、自分には本当の両親はいなかった。家族と言えばカルマとチェキータの二人だった。
二人がいればさみしくなかった。
毎日賑やかで楽しかったからだ。
それでも……ふと思うことがあった。
本当の両親は、自分を捨てた存在は、今どこで何をしてるのだろうか……と。
……答えは、いなかった。
本当の両親なんて、いなかったのだ。
「…………」
怖かった。自分が、人間じゃないことが確定したことが。
さみしかった。自分が、人間とは別種の存在であることをつきつけられ、自分が人間という大枠を外れた異端児になったから。
「かあさ……」
母の名前を呼ぼうとした。だがやめた。
今でも母に甘える子供でいたくないという、彼の矜持がそうさせた。
けれど……リュージは今、とてつもなく母を求めていた。
母のぬくもりが欲しかった。なぐさめてほしかった。……けれど、なんて言えば良いのだろう。
自分が人間じゃなく、勇者の細胞を培養して作られた存在だった。……なんて、母に言ったら、母はどんなリアクションを取るのか……。
と、そのときである。
「りゅーじくん!!!」
自分の恋人、シーラがリュージの元へやってきたのだ。
「良かったぁ……ここにいて」
ほっとシーラが安堵の吐息をもらす。
「島にまだいたらどうしようって思ってたのです。外がとんでもないことになってるので」
「とんでもないこと……?」
リュージはシーラとともに、建物の外へ出る。
するとそこには……。
「なっ、なにこれ!?」
島全体が、暴風に包まれていた。
荒れ狂う天空を、2匹の竜が舞っている。
片方は邪竜カルマアビス。
そしてもう片方は……見覚えのない金のドラゴンだった。
「母さんは……いったい何してるの?」
「わからないのです。ただ少し前から、カルマさんは戦ってるのです。そして、苦戦を強いられてるのです!」
リュージはそれを聞いて、空を見上げる。
カルマの攻撃を、金竜がするりと、まるで胴の長い魚のようにすり抜けている。
滝のような雨がドラゴンたちを、そしてリュージたちをぬらす。
視界の悪さが苦戦の原因なのかもしれなかった。
「母さん……いったい何と戦ってるの……?」