129.邪竜、金竜とバトルする【前編】
漫画版、最新話が更新されました!
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無人島の本島から離れた海上にて。
2匹の竜が、相対していた。
1匹は、漆黒の体に、暗黒の翼を広げた邪竜カルマアビス。
1匹は、黄金の体に、長い体を蒼海に沈める海神竜マキナアビス。
空の竜と海の竜。
2匹の竜が互いににらみをきかせあっている。
【前より少し体が変化したか? 邪神を取り込んで存在進化したのか?】
マキナがカルマをつぶさに見て言う。
確かに自分は、昔はただの平凡なるドラゴンだった。
だがあるとき世界の破壊を企む邪神王ベリアルを偶然体内に取り込み、結果、最強の力を手にした。
その際にカルマの外見は変貌を遂げている。
より強大に、より凶悪に、己の持つ力に見合った姿へと変化したのだ。
【たくましくなったな】
【……うるさい。そのせいで、どれだけの人間やドラゴンから、虐げられたかわかっていってるですか?】
世界を救ったカルマを待っていたのは、長きにわたる孤独と苦痛だった。
人は皆カルマの外見と能力を恐れた。
同族たちはカルマの強さに嫉妬した。
そのせいでカルマは、洞窟の中、一人孤独な生活を送っていた。
その孤独を救ってくれたのは、天使であるリュージの存在。
自分の元へリュージが来たあの日から、カルマの地獄は終わったのだ。
……カルマにとってリュージは、救いの天使に他ならない。
その天使を、この母はいじめたのだ。
……許せるわけがなかった。
【カルマ。話し合うことはできないか?】
【…………うるさい!!!!】
カルマがバッ……! と漆黒の翼を広げる。
こいつと話し合う余地などない。
あるのはただ、純粋な殺意だ。
……相手は自分の母親?
こんなやつ、母親でも何でも無かった。
子供を捨て、孫を虐める。敵でしかない。
カルマは今までたくさんの、息子を虐める敵を屠ってきた。
今回もまた、そうするだけだ。
自分が戦うのはいつだって、息子のため。
そのためにこの体に神の力が宿っているのだ。
【うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!】
カルマは高速で海神竜へむけて特攻をかける。
海上に浮かぶマキナの頭部めがけて、竜の巨大な腕を振る。
ゴォッ……!!!!
マキナの体の周りに、風邪の結界が張られた。
逆巻く竜巻によって、カルマが吹き飛ばされる。
【こしゃくなぁ……!!!】
カルマが万物破壊のスキルで嵐をかき消す。
再びマキナに攻撃を仕掛けようとする。
だがその前に、自分の足に、何かが巻き付いた。
【チッ……!!!】
マキナの長いしっぽが、カルマの足にからみついていた。
そのままぐんっ……! とカルマが海の下へと引っ張られる。
カルマは逃れようと翼を広げるが、体に激しい電流が走った。
【くっ……!!!】
嵐と雷を使う、海の王。
それがマキナアビスというドラゴンだ。
マキナの雷によってひるんだカルマは、そのままぐんっ……! と海の下へと、引っ張られる。
激しい水しぶきとともに、カルマは空から海へと、堕とされるのだった。