128.邪竜、金竜と対峙する【中編】
息子がマキナのところから、泣いて帰ってきた。
カルマは事情を聞くことなく、すぐさま邪竜化。
家のある海岸を出て、一直線に島の中央を目指した。
【マキナぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!】
息子の話を聞かずとも、誰にいじめられたかはわかっていた。
言うまでもない、マキナだ。
自分の母が、孫たるリュージを虐めたのだ。そうに決まっていた。それ以外に考えられなかった。
一瞬で島の中央へ到着。
マキナの元へ急行しようとする。
バチィッ……!!!
カルマの体を、見えない何かが遮った。
つぶさに見ると、どうやら人を寄せ付けない結界が張っているようだった。
【こざかしいわ!!!!】
カルマは右腕に、【万物破壊】の雷を宿す。
そのまま邪竜の豪腕を、結界めがけて振る。
ばきぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!
【チッ……! スキル封じかっ!!!】
どうやらこの結界、スキルを無効化する術もかかっているようだった。
【…………】
カルマの怒りはまるで収まらない。
息子を泣かして、わびの一つも無いなんて。
【……子供を泣かした罪、万死に値するぞ】
カルマは右手を、ぎゅうううっと握りしめる。
邪神の圧倒的な魔力を、右腕に集中させる。
魔力はこうして、一点に集めることで、攻撃力を高めることができるのだ。
世界の破壊も創造も可能なほど強力な邪神。
その邪神の魔力すべてを、右腕の一点に集中。
その攻撃力は、語るまでもないだろう。
文字通り、世界を図するほどの一撃を、カルマは結界めがけて振る。
ばりぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!!!!
カルマの怒りの鉄拳を受け、マキナの施した結界が瓦解する。
自分を遮る物がなくなる。
【地中か……】
カルマには敵の気配を探知するスキルがある。
一瞬で、マキナの居場所を割り出す。
マキナはこの地下で、ぽつんと一人でいるようだ。
【マキナ……マキナ……】
カルマは体を反らす。
今度はすべての魔力を、自分の体の中で炎に変える。
【貴様は……許さざることをした……】
カルマの怒りが、炎となって、体の中で渦巻く。
感情が高ぶれば高ぶるほど、炎の温度は上昇していく。
【貴様は私の、大切な物を傷つけた。許せない……】
カルマはガバッ……! と大きく口を開く。
体内の炎を、口腔内で凝縮させる。
【絶対に……許さないーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!】
カルマは体を突き出す。
口の中から、凝縮された破壊の炎が、すさまじい勢いで射出された。
破壊の炎は、カルマの足下。
地中にいるマキナの元へ、向かって飛ぶ。
炎は地面を、熱したバターのように、容易く貫く。
体の中に蓄積された怒りを、感情を、すべて炎に乗せて、吐き出した。
それは地表を焼き、地中をやき、そして地下深くまで炎を届かせる。
……その炎は、この星の反対側まで突き抜けていた。
当然、この炎の一直線上にいるマキナは、存在ごと消し飛んだはずだろう。
【やったか……】
だが……。
「カルマ」
すぅ……っと、地中深くから、ひとりの女が、空を飛んでやってきた。
【マキナ……】
そこにいたのは自分の母。
海神竜バハムートこと、【マキナアビス】その人だった。