128.邪竜、金竜と対峙する【前編】
息子がお弁当を持って、マキナの元へ行った。
カルマはその後、家に留まって、息子の帰りを待っていた。
「…………」
マキナ。
自分を産んだ母が、この島にいることは、ずいぶんと前から知っていた。
マキナがリュージと交流を持っていると聞いたとき、カルマはすぐさまマキナの元へ行こうとした。
……あの女を、殺そうと思った。
だって自分の母は、自分を捨てただけじゃなく、かつてリュージを殺そうとしたことのあるドラゴンだ。
またリュージに手を出すのではないか……リュージに危険が及ぶのではないか……。
そう思って母を討伐しようとした。
……だが、できなかった。しなかった、ではない。できなかった。
いくつか理由がある。
その理由の一つに、マキナにもう二度と会いたくないという気持ちがあった。
マキナはかつて、カルマを捨てて出て行った。
それどころか育児放棄をしていた。……最低最悪の母親だ。
平たく言えば、カルマはマキナを憎んでいる。大嫌いだ。
だから……会いたくなかった。
二度と顔を見たくなかったから。
しかし息子に危害を及ぼそうとていると聞いて、カルマは会いに行こうとした……が。
どうにもリュージは無事なようだ。
なぜだか知らないが、マキナはリュージに手を出していない。
それどころか、カルマの作った弁当を、おいしいと二人で食べている、とのことだった。
「……なんなんですか、あのドラゴンは」
マキナのことなんて大嫌いなのに……。
マキナが、かるまの作った弁当を食べて、おいしいと、気に入ってくれたと聞いて。
カルマは、マキナの元へ乗り込むのを、、やめたのだ。
その理由を言葉にするのは難しい。
いろいろな感情が、自分の胸中で渦を巻いている。
その中の一つを手で掬って、つぶさにみると。
そこには……喜びという感情が、少なからずあった。
カルマは首を振る。
何を喜んでいるのだと。
まさか、料理を褒められて、喜んでいるのか……?
「馬鹿馬鹿しいっ!」
あんな自分を捨てた女なんて大嫌いだ。
そいつに好かれようが何も関係なかった。
関係ない、はずなのに……。
「…………」
カルマは律儀に、弁当を作って、息子に持たせている。
リュージが全部食べてないことは知っている。
マキナが弁当を食べてくれるということを承知の上で、しっかりとした弁当を作っている。
「…………」
気持ちの整理がつかない。
頭の中がぐちゃぐちゃだ。
どうして自分は、大嫌いな母のために、弁当を作っているのか……?
「チェキータ……教えてくださいよ……」
いつも自分を導いてくれた、あのエルフの言葉が、恋しかった。
……と、そのときだ。
「ただいま……」
息子のリュージが、家に帰ってきたのである。
「りゅーくんっ! おかえ……」
そこで、すぐさま気付いた。
リュージが、泣いて帰ってきていることに。
「……りゅーくん」
ぷちん……と何かが切れる音がした。
息子が、マキナの元から、泣いて帰ってきた。
それを悟った瞬間。
カルマは、邪竜へと変化していた。
【りゅーくんを……泣かしたなぁああ! マキナなぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!】
邪竜となって、カルマはマキナの元へと、すっ飛んでいったのだった。
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