127.息子、真実を知る【前編】
島の原住民、マキナと打ち解けたリュージ。
彼女は、自分が守っていた祠の中に、案内してくれるという。
マキナの守っていた祠は、この無人島のほぼ中央にあった。
そこは結界のような物が張られていた。
シーラやルトラ、ゴーシュ隊長のような一般人は、入れなかった。
だがリュージただひとりだけ、この結界を越えて、マキナの元へいけた。
結界。
何かから侵入を守る物。
そして結界の中には、それを守護するようにマキナがいた。
守護者。
これもまた、何かを守る物。
結界と守護者。
その二重の防御策で、いったい何を守っていたというのか……。
その答えが、今、明かされようとしていた。
リュージたちは石造りの祠の前に立っている。
入り口はマキナの身長よりやや高いくらい。
「リュージ。この中は地下へと続く階段がある。足下に気をつけろ」
マキナが言うと、リュージはうなずく。
パチンッ、と指を鳴らし、万物創造(偽)でたいまつを作る。
「……その力は?」
「え、あ、えっと……万物創造って言って、何でも作れるスキルだよ」
もっとも、これはリュージ本来の能力ではない。
以前、母と魂を入れ替えた際、副次的に、母の能力が使えるようになった。
魂が元に戻った後も、こうして母の能力が、自分の中になぜかあるのだ。
もっとも、母の力すべてが使えるわけではない。
この万物創造も、完全に使えるわけではなかった。複雑な構造の物は作れない。
「……その力、いったいどういうものか理解して使っているのか?」
「え?」
マキナがジッ……とリュージを見て言う。
「理解してないようだな」
「え、えっと……これは、母さんの……」
「違う」
マキナがずいっ、とリュージに顔を近づけて言う。
「違う。これは、おまえの母の力ではない」
「え、で、でも……万物創造は、母さんが使える能力だし……」
「……その母は、最初からその力が使えたのか?」
ハッ……! とするリュージ。
そういえば、母は昔、普通のドラゴンだったと言った。
普通のドラゴンに、万物を創造する力が備わっているだろうか……?
いない、だろう。
ではいつ母はこの力を手にした……?
「その力は決して、おまえの母が身につけた能力ではない。おまえが使っているその力は……」
「僕の、力は……?」
マキナが黙り込む。
ややあって……。
「リュージ。祠に入るのを、やめないか?」
いつも命令ばかりのマキナが、珍しく、提案してきたのである。
「リュージ。貴様のことは、ここ数日であらかた聞いたな」
「え、う、うん……」
ご飯を食べながら、リュージは母や、母との大冒険を、詳細を省きながらも、簡単に、マキナに語っている。
「リュージ。おまえは、不思議に思ったことはないのか?」
「な、何に……?」
たとえば、とマキナが言う。
「おまえには娘が二人いるようだな」
「うん。ルコとバブコだよね。それが?」
マキナは目を伏せる。
そして言う。
「そのルコとバブコは、どうやっておまえの元へ来た?」
「それは……」
母は言っていた。
リュージがルコたちを出産したと。
チェキータは言っていた。
リュージが、ルコたちを生み出したと。
「リュージ。普通の人間に、魔王四天王を従魔にすることはできない」
「じゅうま?」
「使い魔。下僕。サーヴァント。ようするにシモベだ」
マキナの言葉に……リュージは激しく違和感を感じた。
「マキナ。どうして……ルコとバブコが、魔王四天王だって……?」
そう、自分は単に強い魔物と戦い、その後日にルコやバブコを産んだ(?)と言っただけだ。
ルコたちがルシファー、つまり魔王四天王であることは……言ったことがなかった。
「そんなことは問題ではない。問題なのはリュージ」
マキナはリュージに顔を近づける。
リュージの心臓に、とん……と指を突き立てる。
「この先に、おまえの知らなかった真実があるということだ」
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