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126.息子、金竜と打ち解ける【前編】



 ……リュージは夢を見ていた。


 夢の中で、リュージは【別人】だった。


 自分ではない別の存在だった。

 

 リュージの前には、骸骨のバケモノがいた。


 おどろおどろしい容姿の、骸骨のバケモノと、リュージは戦っていた。


 自分の右手には、見たことのない紋章が浮かんでいた。


 竜と剣をあわせたような、特殊な紋章である。


 その手で美しい剣を握り、バケモノと剣を切り結ぶ。


 魔法を斬り、本体を斬る。


 激しい戦いは昼夜問わず行われた。


 ややあってリュージは、骸骨のバケモノを討伐した。


 人々からの賞賛を受けるリュージ。

 竜と剣の紋章がついた手を、人々に振る。

 ……場面が暗転する。


 今度はまたさっきとは【別人】になっていた。


 リュージはこの星の外から、地上を見下ろしていた。


 やがて地上へとたどり着く。


 するとその瞬間、地面が割れた。


 中から巨大な竜が出現した。


 竜は、リュージの体を、丸呑みにした。


 やがて竜の体に、リュージが吸収されていく……。


「うわぁあああああああああああああああああああああああ!!!」


 ガバッ……! とリュージは体を起こす。

「はぁ……はぁ……ゆ、夢……?」


 リュージは自分の手を見て、その後その手で自分の顔をペタペタ触る。


 窓に映るのは、黒髪の中性的な見た目の少年。


 剣を持った何かでも、竜に飲み込まれた何かでもなかった。


「いったい……あれはなんだったの……?」


 不思議な感覚だった。

 明らかに夢だったのに、妙にリアルだったのだ。


 まるで、実際に経験したことのように思えてならない。

 しかしあんなことをした覚えはまるで無かった……。


 とそのときだった。


「りゅーくんどうしたーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 どがぁああああああああああああああああああああああああん!


 とカルマが天上を突き破り、リュージの目の前に着地したのである。


「なにどうしたの病気!? ケガ!? それとも寝起きのりゅー君を襲おうとした不埒物がいたのかおのれぶっ殺してやるぅううううううううううううう!!!」


 カルマが目からビームを、口から火を出しながら、わあわあと騒ぎ立てる。


「母さん! 落ち着いて!」

「うぉおおおおおおおお! 愛する我が子に手を出す愚か者めぇえええええええええ! 死よりも恐ろしい目にあわせてくれようかぁああああああああああああああああああ!」


 カルマが両手を体の前で付き合わせる。


 すると手の中に黒い球体が出現した。


 ごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!


 球体の中に、周囲の物が吸い寄せられていく。


「か、母さん何やってるの!?」


「ミニブラックホールを生成したのです。これで不届き者をすべて闇に飛ばしてくれましょう……」


 母が何を言ってるのかわからなかった。

 だがろくでもないことをやっていることは事実だった。


「やめてっ! やめてってば! ただ寝ぼけただけだから-!」


 するとカルマがそのミニブラックホールとやらを消す。


「りゅーくーーーーーーーーーん!」


 びょんっ! とカルマがリュージに抱きついてくる。


 その豊満なバストが、リュージの顔に押しつけられる。


「怖い夢を見たのですね! おーよしよし! おかあさんが慰めてあげますからねぇえええええええええええ!」


 ぐにぐにと動く生温かな物体を、リュージはぐいっと押しのける。


「だ、だいじょうぶだからやめって」


「無理しなくて良いのです! ほらおかあさんの胸でいっぱい甘えて! おかあさんにかかれば悪夢なんてちょちょいのぱーですよ!」


 よしよしぎゅーっ、とカルマがリュージを抱きしめる。

 まるで赤子扱いだ……。


 はぁ……とため息をつくリュージ。

 ……これでまた悪夢の内容を話したら、母が大暴れするだろう。


 だからリュージは黙っておくことにした。

 そんなふうに、朝は母の気が済むまで、抱きしめられ続けるのだった。

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