124.息子、恋人と海岸でいちゃつく【中編】
早朝の海岸にて。
リュージはシーラと供に、砂浜に座り、朝日を見ていた。
「あちちなのです~」
シーラは今、ピンクのトップスに短パンという格好だ。
ローブは海水で濡れてるため脱いだのである。
「朝なのにもう暑いよね」
「今が冬ってこと忘れちゃうのです!」
「そっか……今冬なんだよなぁ」
リュージはこの青い空と海を見て、不思議な感覚にとらわれる。
青々と生い茂る熱帯植物に、殺人的な太陽光線。
どう見ても冬の様相を呈していなかった。
「……不思議だよね。この島。冬なのに夏みたいで」
「ねー。不思議なのです。ふしぎ~」
さぁ……と海から風が吹く。
シーラのうさ耳が、ぴくぴくっと動く。
「不思議って言えばシーラの耳も不思議だよね。どうやって動かしてるの?」
「改めて言われても……えいえいっ」
シーラが目を閉じて気合いを入れる。
するとうさ耳がぴょこぴょこと動く。
「はぁ……はぁ……つかれるのです~……」
「驚いたときとかは、あんまり力入れなくても動いてるのにね。不思議」
リュージは水の入ったボトルをまた作り、シーラに手渡す。
シーラはお礼を言って、こくこくと飲んだ。
不思議なうさ耳に……リュージは触れてしまう。
「ひゃうんっ!」
ぱしゃっ、とシーラがボトルを落としてしまう。
ピンクのトップスに水がかかる。
「ご、ごめんっ。だいじょうぶ? いたかった?」
「う、ううん……痛くないのです。あのその……気持ちよくって……」
かぁ……っとシーラが顔を赤くしてうつむく。
リュージも気まずくなって目線をそらす。
……というか、今気付いた。
シーラのトップスが、水で透けていた。
そして……その下には、薄ピンクのぽっちがあって……。
「っ!?」
リュージがバッ……! と全力で顔をそらした。
心臓が早鐘のように脈うっている。
「し、シーラ……その下って何も……つけてにないの?」
「へ? あ、うん。上下のしたには何もつけてないのです。肌着みたいなものなのです」
それが何かと、シーラが首をかしげる。
リュージはさらに体が熱くなった。
え、うそ?
いつもローブの下に来ているピンク色のそれは……下着なの!?
つまり今シーラは、ブラとパンツという格好なのか……!?
「どーしたのです?」
「え、あえっ!? な、なんでもない……」
リュージはスキルでバスタオルを作る。
それをシーラに手渡す。
「風邪引いちゃうから、これ羽織って」
海からの風はかなり強かった。
濡れたからだが冷えて風邪を引いてしまうからも知れなかったから、バスタオルを渡したのだ。
……まあ、シーラの下着姿が目に毒だったこともあるが。
「ありがとー♡ えへへ♡ りゅーじくん優しいからだぁいすきなのですっ♡」
シーラが無垢な笑みを浮かべる。
リュージは若干気まずくなって、目をそらした。
「どーしたのです?」
「いや……ごめんね」
「ごめん?」
「だってその上下って、下着なんでしょ? じろじろ見てゴメンネって意味」
「ほえー…………はぇ!?」
シーラがかぁ……! と顔を真っ赤にする。
「あわ、あわわっ! あ、改めて言われると確かに! し、しーらハシタナイ子なのですぅ……はずかしー……」
シーラが顔を手で隠す。
うさ耳がものすごい勢いでぴょこぴょこと動いていた。
「ごめんね。いやだったよね」
「えっと……ううん。いやじゃなかったよ?」
「え?」
リュージはシーラを改めて見やる。
シーラは頬を朱に染め、潤んだ目をしていた。
その表情には嫌悪はなく、ただ笑っていた。
「ほ、他の人ならともなく、りゅーじくんは……特別だから」
「そ、そう……」
すごく気恥ずかしかった。
そして感慨深くもあった。
母以外で、誰かの特別になる日がくるとは思っていなかったから。
「僕も……シーラは特別だよ」
「えへっ♡ じゃあおそろーなのです♡」
リュージとシーラは微笑む。
どちらかともなく、手を重ねる。
ふたりは昇る朝日を、静かに見つめるのだった。
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