124.息子、恋人と海岸でいちゃつく【前編】
カルマに化粧水を塗った翌朝。
早朝。リュージは起き上がると、海水パンツとパーカーという格好で、建物の外にでる。
今日も朝から良い天気だった。
朝日が水平線からわずかに顔を覗かしている。
リュージは海岸へやってくると、パチンッ! と指を鳴らす。
するとリュージの目の前に、1振りの剣が出現する。
これはリュージが愛用している剣ではない。
船が波に飲まれたとき、荷物はあらかた波にさらわれてしまったのだ。
ではこの剣は何かというと、リュージが作り出した剣である。
前回、母と魂を入れ替えた事件の後。
リュージの体の中には、母の力の一部が、まだ残っているのだ。
そのおかげで以前よりさらに強くなっているリュージ。
それもあって無人島調査という危険な依頼をギルドから降られたのだろう。
リュージは剣を出すと、素振りをし出す。
これは彼の日課だ。
リュージが冒険者として登録する前から、朝の素振りを欠かしたことはなかった。
無人島に漂流してから数日は、そんな余裕はなく、日課をサボっていた。
しかしここ最近、ここでの暮らしに慣れたリュージは、また日課のトレーニングを再開したのである。
朝日が出ていないのに、少し動いただけで汗みずくになる。
それでもリュージは剣を振り続ける。
ややあって、トレーニングを終えたリュージは、そのまま海水につかる。
「ふぅ……きもちい~……」
リュージは仰向けなって海水に浮く。
体が水で冷やされ、体温が徐々に下がっていく。
疲労とともに、体のほてりも、この海に溶けていっている感覚だ。
そんなふうにしばしぷかぷか浮いていたそのときだ。
「りゅーじくーんっ!!!!」
誰かが慌てて、こちらにかけてくるではないか。
「りゅーじくーん!!!!」
やってきたのは恋人の兎獣人、シーラだった。
彼女は薄着のママ、ばしゃばしゃとこちらにやってくる。
どうしたんだろうか……?
とそこで気付いた。
シーラがただならぬ様子だった。
「りゅーじくん! 今助け……ぶべっ!」
波に足を取られ、シーラが顔から海水に突っ込む。
リュージは慌てて、恋人の元へゆき、彼女を助ける。
「けほっこほっ! ぺぺっ。く、口に海水が~……塩辛いのですぅ~……」
リュージとシーラは波打ち際へと上がる。
シーラは砂浜に腰を下ろす。
「待っててね」
そう言って、リュージは指ぱっちんをして、水の入ったボトルを出す。
「はいどうぞ」
「わぁ! すごい! りゅーじくんカルマさんみたいなのですー!」
にぱーっと笑うシーラ。
「ありがとう。けど母さんみたいにいろいろ作れないし、まだまだだよ」
「でもでもすごい……けほこほ」
「いいから早くお水飲んで」
リュージが苦笑しながら言う。
シーラは、こくこく……と水を飲み、ほっと一息つく。
「助かったのです~……」
「ごめんねシーラ。何か勘違いしちゃった?」
そうでなければ、シーラが服のまま、海なんて入ってこないだろう。
「えと……りゅーじくんが海で溺れちゃったのかなって」
「ああ……やっぱり。ごめんね、涼んでただけなんだ」
「そうなんだぁ。しーらおっちょこちょいだったのです。ごめんね?」
「ううん。こっちこそごめんね。誤解させてびしょぬれにさせちゃって」
リュージはタオルを作って、シーラに手渡す。
「こんなのすぐに乾いちゃうのです」
「じゃあ……乾くまでもうちょっとここにいようか」
リュージの提案に、シーラが耳をぴーんと立てる。
嬉しそうに笑うと、こくりとうなずくのだった。
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