表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

213/383

119.息子、金竜とランチする【後編】



 無人島の密林の奥、花畑にて。


 リュージは現地人マキナとともに、昼食を取っていた。


 レジャーシートを広げ、リュージたちは座る。

 

 目の前にはランチボックス。

 母が作ってくれた昼食が入っている。


 弁当箱を開けると、中にはおにぎりやウィンナーなど、定番の品が入っている。


 また中身が腐らないよう、魔法の氷(レアアイテム。どんな暑い場所でも解けることはない)が入っていた。


「ふむ……」


 マキナはおにぎりを一つ手に取る。

 大きく口を開き、バクッ! と食べる。


「もむ……もむ……」


 最初はゆっくり咀嚼し、飲み込む。


 ガシッ!


 マキナは二つ目のおにぎりを手に取ると、また一口で食べる。


 三つめ、四つめと、すごい勢いでおにぎりを食べていく。


「お、おかずもあるよ……?」


 リュージが進めると、マキナは手づかみで、ウィンナーと卵焼きを口に放り込む。


「もごおぉ!!!」


 マキナが目をむく。

 おかずも手づかみで、どんどんと口の中に放り込んでいく。


 マキナの表情は崩れない。

 母に似て、超絶美人の女性だ。


 その人が、頬をリスのように膨らませ、そして子供のように、手づかみでご飯を食べていく。


 そのギャップに驚かされるリュージ。

 そしてマキナに、どこか親しみやすさを抱いた。


 リュージは水筒からお茶をついで、マキナに差し出す。


「ふぁふぁんふぁ、ふぁふぇ?」


 マキナが口の中身をイッパイにして言う。

【なんだ、これ?】とでも言いたいのだろう。


「お茶だよ。飲み物。そんなにいっぱい食べたら喉渇いたでしょう?」


 マキナはコクコクとうなずく。

 リュージからコップを受け取り、ごっくんっ、と飲み込む。


「どう、おいしいでしょう?」

「まあまあだな」


 すまし顔でマキナが言う。


「そこそこだな」


 口の周りを、お米でイッパイにして、マキナが真面目くさった顔で言う。


「ぷっ」

「……なんだリュージ? なぜわがはいを馬鹿にしてるのか言え」


「いやごめんね。別に馬鹿にしてるわけじゃないよ。ただ……可愛くって」


 リュージは微笑んで、マキナの口周りの米粒を取る。


 マキナは微動だにせず、リュージのされるがままになっていた。


「マキナ。おかわりまだあるよ。食べる?」


 リュージが弁当箱を、マキナに手渡す。


「それはおまえの分ではないのか?」

「僕は全部食べられないから。マキナが食べて」


「ふむ。まあ、おまえがどうしてもというのなら。食べてやっても良いぞ」


 そう言って、マキナが弁当箱をハシッ! とリュージから回収。


 まるで子供のように、中身をばくばくばくばく! と勢いよく食べていく。


 リュージは嬉しかった。

 母の作ってくれたお弁当を、おいしそうに食べてくれているからだ。


 ややあって、リュージの弁当も、マキナはからにする。


「リュージ。もうないのか? 弁当はもうないのか? 隠しても無駄だ。あるなら素直に出せ」


 マキナがリュージの後をのぞき見るようにして言う。


 リュージは苦笑して首を振る。


「ごめんね。お弁当もうないんだ」

「……………………………………………………………………………………そうか」


 ものすっごい残念そうに、マキナがつぶやく。


 依然として表情の変化は見られない。


 だが所作から、感情が変わった。

 なによりドラゴンのしっぽが、捨てられたイヌのように、ぺちょんと垂れているのである。


「次はもっとたくさん作ってもらってくるよ」

「! そ、そうか……」


 マキナのドラゴンしっぽが、ぴんっ、と立つ。


「ま、まあわがはいはどうでもいいが、作るヤツにこのタコさん型の腸詰めと、甘い卵を固めたヤツをたくさんつくってこいと頼んでこい」


「たこさんウィンナーに卵焼きね。わかった。母さんに伝えておくよ」


 リュージが笑って言う。

 母の料理を気に入ってくれる人が増えて、うれしかった。


「母……」


 マキナがジッ、とからになった弁当箱を見て言う。


「リュージ。おまえの弁当は……母親が作ったのか?」


 マキナがリュージに言う。

 ……それは、なんだろうか。


 まるで何かを、確認するかのような口ぶりだった。


「うん。母さんが朝作って、僕に持たせてくれたんだ」


 リュージが答えると、マキナが呆然とつぶやく。


「……そうか。あの子、弁当を息子にもたせられるのか」


 マキナが、からになった弁当箱をなぞる。

「……立派になったな」


「マキナ?」


 なんでもない、とマキナが首を振る。


「リュージ。また弁当を持ってここへ来い。いいな?」


「え、あ、うん! もちろん!」


 リュージはやった! と心の中でガッツポーズを取る。

 現地人と友好を図れた。

 しかも、次も来て良いという。


「母さんにおいしいお弁当、いっぱい作ってくれるように頼んでくるね!」

「うむ。そうしろ」


 

書籍版、コミックス好評発売中です!


続刊継続のためには、皆さまのお力添えが必要です!

なにとぞ、ご協力お願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ