表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

209/383

118.息子、金竜と出会う【中編】


 冒険者たちは、無人島脱出までの間。

 本来の仕事である、巨大魔力結晶を探すことになった。


 ゴーシュの指示で、冒険者パーティごとに行動することになった。


 ひとりで散策は危険だという判断だ。


 パーティごと散らばって、島の探索に当たる。


 リュージたちは島の密林の中を歩いていた。


 水着から洋服に着替えて、熱帯林の中を歩く。


「蒸し暑いのです~……」


 シーラがうさ耳をパタパタさせて言う。それで涼を取っているそうだ。


「……ほんと。サウナの中みたい」


 ルトラが煩わしそうにつぶやく。


「水着の方が良かったのです?」

「いや……それだと植物の葉で肌をきるかもしれないからね。それに虫もいるし」


 リュージは先頭を歩きながら言う。


 手に持っている剣をで、ばさばさと植物を狩りながら歩を進めていた。


 背の高い植物に、見たことのない色をした虫。べたつく湿った空気。そのすべてが、経験したことのないものだった。


 見上げると、木々の間から青空が覗く。

 バサッ……! と母が翼を広げ、【敵】を探していた。


「…………」


 母は、リュージたちを返そうと、必死になってくれている。


 母ひとりに役目を押しつけているのが、申し訳なかった。それに悔しかった。結局まだ、自分は母の力に頼っている。


 心のどこかで、母がなんとかしてくれる。

 ……リュージの心の中には、そんな弱い自分がいる。ダメだ。強くなるんだ。


 母に頼らないで、強くなるんだ……。


 そんなふうに、考え事をしながら歩いていた、そのときだ。


「わッ……! ま、まぶし……」


 気付けばリュージは、開けた場所に出ていた。

 先ほどまでは密集した木々によって、日の光が遮られていた。


 だが今この場において……木は生えていなかった。


「広場……いや、お花畑、かな?」


 足下に色鮮やかな花が咲いている。

 どこかで見たことのあるような花だった。

 ……どこで見たのだろうか?


 リュージは記憶の海をあさる。

 だがいくら考えても、答えが見つからなかった。


「シーラ。ルトラ。この花のなまえ……って、あれ!?」


 そこでリュージは、ようやく気付いた。

 パーティメンバーたちが、近くに居ないことに。

 

「シーラ! ルトラっ! ど、どこー!?」


 リュージは声を張る。

 だがふたりからの返事はなかった。


 リュージは慌てた。

 いつの間に分かれてしまったのだろうか……と。


「大変だ! すぐに探さないとっ」


 リュージは来た道を戻ろうとした……そのときだ。


「誰だ、人間……か?」


 背後から女性の声がした。

 ふりかえるとそこには……。


「えっ!? か、母さん!?」


 そこにいたのは母、カルマアビス……。


「じゃ、ない。人違い……?」


 にそっくりな、女性だった。


 長身の女性だ。

 見れば見るほど、母にそっくりな顔、そして体つきをしている。


 だが細部が異なっていた。


 まず彼女は金髪だった。

 金の川が地面に向かって流れているようだった。


 次に彼女は、側頭部から角を生やしていた。

 牡鹿を想起させられる、樹木のように枝分かれした、とげとげしい角だ。


 さらに、耳がとがっていた。

 チェキータのように、尖った耳をしている。


 そして最後に……。


「お、おっきぃ……」


 目を見張ったのは、その巨大すぎる乳房だ。

 リュージの記憶の中で、一番でかいのはチェキータのおっぱいである。


 だが目の前の彼女は、それを凌駕するほどの、巨大な乳房をしていた。


「…………」

「人間。じろじろと見るな」


 金髪の女性が、リュージを見て言う。


「ご、ごめんなさいっ」


 リュージは反射的に頭を下げる。


 チェキータもいっていたではないか。女性の胸をじろじろと見るのはマナー違反だと。


 女は男が思っている以上に、男の視線に気付いているものだと。


「じろじろと失礼しましたっ!」


 腰を曲げるリュージ。

 その一方で……。


「…………」


 金髪の女性は何も言わなかった。

 罵声でも浴びせられると思ったのだが。


 リュージはちらっと見上げる。

 金髪の女性は、困惑しているようだった。

「ど、どうかしましたか?」

「……いや。人間のくせに、礼をわきまえているなと思ってな」


 彼女にあって警戒心のようなものが、一瞬、緩んだような気がした。


「人間。ここは神域だ。人が立ち入って良い場所じゃない」


 だから立ち去れ、とでも言いたいのだろう。


「そうだったんですね。ごめんなさい。すぐに帰ります」


 リュージはうなずいて、きびすを返すと、戻ろうとする。


「まて」


 女性が呼び止める。


「そういえば……おまえ、どうやってこの神域に入ってきた?」


 女性はこちらに近づいていう。


「えっと……さぁ? 気付いたらここにいました」


 考え事しながら歩いていたら、ここへとたどり着いていたのだ。

 特に何かをしたつもりはない。


「…………」


 金髪の女性は、リュージにいぶかしげな視線を向ける。


 こつこつ……と足音を鳴らしながら、リュージに近づいてくる。


 ……近くで見ると、その胸の大きさに、圧倒させられた。


 ジッ……と女性がリュージの目を見やる。

「……おまえ、あのときの」


 ぶつぶつ、と女性がつぶやく。


「……そうか。だから結界を踏破できたのか」

「あの……もしかして僕、なにかあなたの不興を買うようなこと、していしまいましたか?」


 リュージが恐る恐る尋ねる。

 女性は首を振る。


「いや。おまえは何もしてない。安心しろ」

「そ、そうですか……」


 それなら早くこの場を去ろう。

 余り長居していい雰囲気じゃないし。


 リュージは頭を下げて帰ろうとするが。


「待て」


 ぐいっ。


「ぐぇっ」


 リュージの襟を、女性が引っ張ってきたのだ。


「少し話を聞かせろ」

「な、なにの……?」


 ぱっ、と女性が手を離す。


「おまえについてだ」


 びしっ、と女性が指を向ける。


「は、はぁ……」


 リュージは考える。

 この場に居るということは、現地人だろうか。


 そういえば冒険者たちが、カルマそっくりの誰かを見たと言っていた。

 それがこの人だろうか。


 邪気を感じない。

 だから危ない人ではない……とは思う。


「リュージ。どうした?」

「あ、いえ……」


 彼女が現地人だとしたら、いろいろと情報を持っているかも知れない。

 接触を図るのもいいかもしれない。


 シーラたちの行方は気になる。

 だがシーラもルトラも一流の冒険者だ。

 

 身に降りかかる火の粉は払えるだろう。

 ……だとしたら、リュージの役割は。


「わかりました。お話ししましょう。えっと……お名前は?」


 すると女性は、リュージを見下ろして名乗った。


「マキナだ。マキナアビスという。マキナと呼べ」

漫画版、最新話がアップされました!

「マンガup 」で好評連載中です!


また書籍とコミックス1巻、好評発売中です!

どちらも素敵な本に仕上がってます!ぜひお手にとっていただけたらと!


続刊を出すためには皆様のお力添えが必要です!

なにとぞ!なにとぞご購入のほど、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ