118.息子、金竜と出会う【前編】
昼食を食べた後。
無人島の砂浜にて。
「それではお母さん、ちょっと敵を探してきますね」
カルマがリュージを見て言う。
敵。
カルマ曰く、この無人島には敵がすんでおり、そいつのせいで島からの脱出ができないのだという。
「……母さん」
リュージは心配だった。
確かに母は最強の存在。
誰にも負けないかもしれない。けど相手は未知の敵だ。
万一ということがありえる。
「大丈夫。無理はしません」
カルマが安心させるように微笑む。
「ほんと? 絶対ケガとかしないでね」
「もちろん……はっ! そうだ!」
カルマが子供のような笑みを浮かべる。
……猛烈に、嫌な予感がした。
「ねえねえりゅーくん! お母さんね、りゅーくんの言いつけ絶対守ります! だ、か、ら~♡」
カルマがニコニコ~と上機嫌で言う。
「ハグを! いってらっしゃいのハグをぷーず!」
ンバッ! とカルマが両腕を広げて言う。
リュージは恥ずかしかった。
なにせこの場には、リュージ以外にも、冒険者たちの目があるのだ。
……しかし。
「わかったよ」
リュージはカルマに近づく。
母がすごい上機嫌で、リュージを抱きしめる。
よしよしとリュージの頭を母がなでる。
「はぁああん♡ ちょうどいい抱き心地~♡ ジャストフィット!」
母がむぎゅーっとリュージを抱きしめる。
「……絶対無理しないでね」
これでカルマが約束を守ってくれるのなら、御の字だ。
母はしょうしょう、息子のために無理しすぎるきらいがある。
母の無事をリュージは心から願うからこそ、恥を忍んでハグをしているのである。
「ええ。もちろんです!」
カルマが抱擁をとく。
「ではいってきます。何かあったらお母さんって呼んでくださいね! 秒でかけつけますから! デュワッ!」
カルマがバッ……! と空へと飛んでいく。
あっという間に、カルマが見えなくなる。
あとにはピーカンの青空が広がっているばかりだ。
「さて……みんな少し聞いてくれ」
ゴーシュ隊長が、冒険者たちを見て言う。
リュージを含めて、その場にいた全員が、ゴーシュの元へ行く。
「これからの方針を決めたいと思う」
「方針……ですか?」
リュージが尋ねると、ゴーシュがうなずく。
「そうだ。カルマ様はこの島から我々が脱出するために尽力してくださっている。衣食住まで提供してくださっている。その間、我々は何もせずのうのうと日々を無駄に過ごすのは、カルマ様に申し訳がない」
確かに……とリュージうなずく。
他の冒険者たちも同意見らしく、うんうんとうなずいている。
「なので我々は我々の仕事をしよう」
「仕事……あ、そうだ。魔力結晶の調査!」
リュージが言うと、ゴーシュがうなずく。
「本来我々がここへ来たのは、この島で発見されたとされる巨大な魔力結晶を調査し、回収するためだ」
そうだった。
本来のミッションを忘れるところだった。
ここへ来たのは観光のためじゃない。
冒険者として、依頼を受けて、この場にいるのだ。
「帰還のめどがいつ立つかはわからない。しかしカルマ様なら、早晩、我々を元の場所へ返す手立てを発見するだろう」
ゴーシュの目には信頼の色がうかんでいた。他の人たちもうなずく。
「ならば我々はすべきことをしよう。いいかおまえら?」
「「「はいっ!!!!」」」
冒険者全員が返事をする。
ゴーシュはうなずく。
「では休憩を取った後、島の調査に向かうとしよう」
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