表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

205/383

117.邪竜、バーベキューする【前編】



 無人島生活2日目。

 昼が近づいた頃。


 リュージはシーラ、ルトラ、そして母と供に、砂浜で海水浴をしていた。


 リュージは母とともに、浅瀬で泳いでいた。


「りゅ、りゅーくんっ! 手はなしちゃだめですからねっ!」


 現在、リュージは母の水泳の訓練につきあっていた。

 何でもできる万能ママなのだが、泳ぎは苦手らしい。昔海で溺れたことがあったそうだ。


 リュージは母の手を掴んで、後ろ向きで歩いている。


「大丈夫。絶対に離さないよ」

「きゃ~~~~♡ りゅーくんかっこ……げほっ! ごぼ!」


「か、母さん大丈夫っ?」

「ぺぺっ、……は、はい……海水が口に入っただけです」


 ほっ、とリュージが吐息をつき、厳しい調子で言う。


「だめだよ母さん。泳いでる途中で大口開けちゃ。肺に水が入ったら危ないんだからね」


「うう……ふぁ~い……えへへっ♡ 我が子に注意されるのってとっても新鮮♡ えへ~……げほごぼぼぼっ!」


 リュージは母の手を引いて、バタ足の練習をする。

 母の用意した【びぃとばん】の方が、練習に適していた。


 沈まない板らしいので、これを使えばバタ足は楽に練習できる。

 しかし母は拒否。


 理由は明確。

 息子と手をつなぎたいから。ただそれだけだった。


 そんなふうに海でバタ足の練習をすることしばし。

 太陽がちょうど真上にやってきた頃。


 ぐぅう~~~~~~………………。


「はぅッ……! ご、ごめんなさいなのです~……」


 シーラが大きな腹の音を立てたのだ。

 リュージたちは海から上がる。


「ではお昼にしましょうか」


 ……と、そのときである。


「カルマ様。おはようございます」


 冒険者たちの暮らすログハウスから、黒髪長身の女性がやってきたのだ。


 彼女はゴーシュ隊長。

 今回の無人島調査の、隊長を務める女性だ。


「あらどうも。おはようございます」


 カルマがゴーシュ隊長にペコッと会釈をする。

 ……他者に対して無視が基本のカルマが、きちんと挨拶をしていた。リュージはうれしくなった。


「よく眠れましたか?」

「はい。カルマ様の用意してくれた家と神具がとても快適で、こんな時間までぐっすりと眠ってしまいました」


 ゴーシュは20代後半。

 一方でカルマは、見かけ上は10代後半から20代前半。


 カルマの方が年下(に見えるはず)なのに、ゴーシュの態度は実に謙虚だった。


「ところでカルマ様たちは、お昼ご飯をすませましたか?」


 ゴーシュ隊長がカルマとリュージたちを見やる。


「いえ。これからご飯に使用と思っていたところです」


「それは重畳! 実は私たち、今からバーベキューの準備をしようと思っていたんです」


「「「ばーべきゅー!」」」 


 リュージたちが目をキラキラとさせる。

 夏になると、チェキータとよく河原で肉を焼いて食べていたことがあった。


「わぁ! わぁ! たのしそー! ばーべきゅー!」


 シーラがよだれを垂らしながら、笑顔で飛び跳ねる。


「りゅーくんはどうします?」

「僕もバーベキューしたい!」


「むぅ……。わかりました。りゅーくんの意思を尊重しましょう」


 若干母がふてくされていた。

 どうやら昼食の用意を、ゴーシュたちに取られたと思ったらしい。頼られたかったのだろう。


 リュージはすかさず、母にこう言った。


「母さん。バーベキューの道具や食材、出して欲しいんだ」


 するとカルマはパァ……! と明るい笑顔を浮かべる。


「わかりました! そいッ!」


 パチンッ!


 砂浜に大量の食材と、バーベキューセットが出現した。


「「「すげー! さっすがカルマ様ー!」」」


 冒険者たちがキラキラとした目を、カルマに向ける。


「ま、まぁ。りゅーくんに食べていただくのですから。これくらいの準備と食材は出して当然ですね」


 母はまんざらでもなさそうだ。

 良かった……とリュージは笑う。


「お心遣い感謝いたします、カルマ様。では我々は用意をしますので、ご子息とも用意ができるまでお待ちください」


 ゴーシュ隊長がそう言う。

 リュージが、自分も手伝う、と提案する前に。


「いえ、私も手伝います」


 と、母が自ら、そう買って出たのだ。

 リュージはびっくり仰天する。


「どうしましたか、りゅーくん?」

「う、ううん! なんでもないよっ!」


 リュージは心からの笑みを浮かべた。

 母が誰かと協力して、何かをしようと、自分から言い出してくれるなんて……。


「僕も手伝うよ、母さん! みんなで一緒にご飯の用意しよう!」


「ええっ! なにそれちょーたのしそー! よーうし、お母さん張り切っちゃうぞ~!」


 かくしてリュージたちは、冒険者たちと一緒に、バーベキューをすることになったのだった。

書籍版、コミックス、好評発売中です!!


漫画版はマンガup で連載中!

ちょうどコミックスの続きが無料でご覧になれます!

アプリをダウンロードしてお楽しみください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ