116.邪竜、息子と海水浴する【前編】
無人島生活2日目。
「……あつい」
目覚めてすぐ、リュージは猛烈な暑さを感じた。
背中がじっとりと汗で濡れているようだ。
額を手の甲で拭う。
脂汗の感触に不快感を覚えた。
「……今冬なのに、こんなに暑いんだ、ここ」
リュージはベッドから起き上がる。
ここは、カルマがスキルで作った、お城の中だ。
城にはたくさんの部屋があった。
リュージたちパーティは、おのおの好きな部屋を使っている次第。
ちなみに母は当然のようにリュージと同じ部屋に寝ようとしたので、長い時間をかけて説得し、別の部屋へ送った。
部屋にはベッドにソファ、本棚と簡素な作り。母が内装を着手する際、あまり派手にしないでいいよと頼んだのだ。
リュージはベッドから降りて、窓際へ行く。
カーテンを引く。
石造りの窓枠に手を置いて、外を見やる。
「うわっ、ま、まぶし……」
外には真っ青な空と、ぎらぎらと照りつける太陽があった。
抜けるような青空を見て、リュージは思わずため息をつく。
「っと、そうだ。着替えないと」
リュージは慌てて、クローゼットの中からシャツとズボンを取り出す。
夏用の服を母に用意してもらっていたのだ。
しっかりベストまで来て、リュージは部屋を出る。
城の構造は昨晩、母に教えてもらっている。
リュージは食堂へと到着し、ドアを開けた。
すると……。
「おはようりゅーくん!」
輝く笑顔の、母カルマがそこにいた。
流れるような黒髪。
メリハリのあるボディ。
つぶらで大きな目。
「か、母さん……なにそのかっこうっ?」
母の衣装が、普段と違った。
いつもはセーターにロングスカートという出で立ち。
しかし今は……青いビキニに、腰に布を巻いていた(パレオというらしい)。
「水着ですよ。賢いりゅーくんなら見れば一発では?」
「見ればわかるけど……え、なんで水着なの?」
「そりゃあもう、暑いからに決まってますよ♡」
確かに気温は、カミィーナにいたときと比じゃないくらい高い。
湿度も高いのだろう。空気がべたついていた。
カルマはパレオ水着に、そして長い髪をポニーテールにしていた。
普段見れない母のつやのある姿に、ドギマギしてしまう。
ただ別に母を異性とは見てないので、ドキドキはしないけれど。
「りゅ、りゅーじくんっ」
後ろを振り返る。
そこにいたのは……恋人のシーラだった。
「し、シーラもっ?」
「は、はい……カルマさんに用意してもらったのです」
シーラはピンクのワンピース型水着だ。
母と比べると子供っぽいデザイン。
しかし二の腕やそけい部など、普段見えない部分を露出している。そこにリュージはドキドキしてしまう。
なだらかな曲線に、細い腰。
思わずごくり……とリュージはつばを飲む。
普段余りシーラに欲情しないリュージではあったが、このときばかりは目がいってしまっていた。
「……リュージ」
「る。ルトラも……!?」
ルトラの水着は強烈だった。
ルトラはセパレートタイプの水着を着ている。
胸と尻がバインと出ている。
なんてことだ……と目が胸にいきそうになり、いやいや失礼だぞ! と首を振る。
「ささっ、りゅーくんも水着にお着替えしましょう♡」
ニコニコと笑顔で、カルマがリュージに近づいてくる。
その手にはトランクスタイプの、緑色の水着が握られていた。
「……あ、あの母さん。もしかしなくても、僕を着替えさせる気?」
「え?」ばりーん!「無許可で服を弾き飛ばさないでっ!!」
カルマが万物破壊スキルを使い、リュージの衣服を消し去った。
すっぽんぽんになるリュージ。
「「「わー!!!!」」」
リュージ、とシーラとルトラが、顔を真っ赤にして叫ぶ。
「ささっ♡ お着替えお着替え♡ お着替え上手にできる人~?」
「もうっ! いいから早く水着かしてっ!」
リュージは母から水着を奪おうとする。
だがカルマが頑として、着せるのを譲ろうとしない。
「お母さんがはかせるんです!」
「わ、わかったよもぉ~……」
自力じゃ水着を確保できない。
そう思い、リュージは諦めた。
「さぁりゅーくん♡ まずは右足から~」
カルマは非常にゆっくりと、時間をかけて、リュージに水着を着せた。
どうやら息子の着替えを手伝うのが嬉しいらしい。
着替え終わった後には、リュージもシーラたちも、ぐったりしていた。
「りゅーくんはともかく、なぜシーラたちも恥ずかしがってるのですか?」
「……そ、そりゃそうでしょ。異性の前だよ?」
「?」
「……あかん。この人ドラゴンだった」
ルトラがため息をつく。
「さぁお次はトロピカル朝ご飯ですよ~♡」
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