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111.邪竜、息子と嫁2号のラブコメを支援する【その3】



 息子と嫁候補2号が、街でデートをする。

 ……その様子を、カルマはチェキータとともに、離れた場所で監視していた。


「しかしこれ、ちゃんと姿消えてるんですか?」

「大丈夫よぉ、お姉さんの隠密術は最強なんだから」


「ほんとですか? 疑わしいものですね……ちょっとそこで服脱いで全裸になりなさい。それで騒がなかったら……って、わかったわかったから! 脱がなくて良いから!」


 爆乳美女チェキータが半裸になったのに、街ゆく人たちは、まるで気付いていなかった。


 ……今、カルマはチェキータ秘伝の【隠密魔法】をかけてもらっていた。


 周囲の人間から完全に認識されなくなるという魔法だ。


「しかしこれほんとすごいですね……。向こうからはこちらの姿も匂いも、完全にシャットダウンされてるのに……こちらは物体に触れるとは」


 カルマは息子のすぐ背後まで近づいて、彼の黒髪をちょんちょんと触って言う。

 

 ここまで近づいても、そして触れているというのに、息子はいっこうにこちらに気付いていなかった。頭をかゆそうにぽりぽりとかいてる。


「ハッ……! あなたまさか、これを使ってりゅーくんにいかがわしいことしてないでしょうね!?」


「するわけないでしょ~? もー、心配性ねカルマは」


「大事な息子を傷物にしたくない、母親なら当然の心配です」


 カルマとチェキータは、リュージたちの本当にすぐ後を、どうどうと歩く。


「逆にカルマ、今リューに何しても怒られないからって、いたずらしちゃいけないわよ?」


「ハッ……! そんなことするわけ……する……わけ……いいなそれ」

「カルマ。もう、いけない子ね~」


 クスクスと談笑しながら、リュージの後を追うふたり。


「えっと……まずは八百屋さんだね。こっちだったかな」


 ふたりは今日の晩ご飯の買い出しにやってきいる。

 名目は、カルマが風邪で寝込んでいるから、息子たちが夕飯を作るというもの。……もちろん嘘だった。


「大天使に嘘をつく大罪を犯してごめんなさい、りゅーくんエル」

「なによりゅーくんエルって……」


 どうやら、りゅーくん+天使っぽい(~エル)ということらしい。なんじゃそりゃとチェキータはおかしそうに笑っていた。


 ちなみにシーラがついてきてないのは、カルマの看病をしているということになっている。(シーラにはすでに協力を要請して了承を得ていた)


「しーちゃん嫌がるかと思ったけど、うれしそうだったわね」

「当然でしょう。りゅーくんの嫁ですよ? 器が違うんですよ。嫁がひとり増えたところでぎゃーぎゃー言う子じゃありません」


「うんうん、そうねぇ~……」

「……だから、その慈愛に満ちた笑顔やめろ。むかつくから」


 はいはい、といってチェキータがカルマの頭を撫でる。いやがりはしたが、拒絶はしないのであった。


「さてリューたち八百屋に向かっているけど、このままあっさりだとラブがコメないわね。カルマ、なんとかできない?」


「日本語でしゃべれ日本語で」


「にほ……なにそれ?」


「え? ……そういえば、なんでしょうか。ニホンゴ……はて?」


 自分で口にしたわりに、どういう意味かはよくわからなかった。りゅーくんと比較すればまあささいなことだ。


「あなたが言いたいのは、このまま八百屋へ直行するとふたりが接触することがなく終わってしまうので、何かハプニングを起こせって意味ですか?」


「そうそう♡ よーくわかってるじゃない? さすがお姉さんのカルマ♡ 以心伝心ね」


「あなたの所有物になった覚えはいっさいありませんよ」


 さてではどうするか……。

 考えた末に、カルマは【万物創造】を発動させる。


 リュージたちが向かう先に、【それ】を作る。


 やがてリュージたちが、Y字路へとたどり着く。


「確かこっちを左……って、あれ?」

「道路工事中だって……どうする?」


 通路に看板を立て、侵入防止のバリケードが置いてある。

 無論カルマが先に作っておいてあったものだ。


「回り道になるけど右の道から行こうか」


 ルトラがうなずき、リュージたちが右の道へとやっていく。


「この調子で通行止めだったり偽の道を作ったりして、なかなか八百屋へ到着できないようにします」


「なるほど……一緒に迷子になることで、【一緒に迷子になった】という共通体験を作ることで、親密度をアップさせようという作戦ね」


「え、ああ……そうですよ! どうですわたしの作戦は!」


 ……そこまで深く考えてなかった。ただあっさり八百屋に到着しないようにすれば、何かしらのハプニング的なサムシングが起きるのではないか……と思っていただけだった。


「なぁんだ、カルマ、あなたいつも通りだったのね」

「こ、心を読むなっ。ほらいきますよ!」


 カルマはその後も、リュージたちを迷子にさせるよう、様々な邪魔を講じた。


「あれ、おかしいな……こっちもいけないや……」

「…………」


 ルトラが疲れているのか、肩で息をしている。リュージは道を探しているのに夢中で、ルトラの様子気付いていない。


 それを見かねたチェキータが、リュージのそばまでやってくると、つんつん……と息子の背中をつつく。


「え? なに?」

「……え?」


 リュージが振り返り、ルトラを見やる。

 こちらは隠密魔法がかかっているため、見えていない。


 リュージはすぐに、ルトラが疲れていることに、めざとく気付いた。


「ごめんね。歩き疲れたね」

「いや……そこまでは……」


 ルトラが強がる。


「遠慮しないでよ。僕ら友達でしょう?」

「……そう、だね」


 ルトラが自分の胸に手を置く。

 目を閉じて、微笑む。


「……それじゃ、お言葉に甘えて。休みたいな、リュージ」

「オッケー。あっちにカフェがあるから、そこで休憩取ろうか」


 こくり、とうなずくと、リュージはルトラとともに歩き出す。

 さっきまでと違って、今度は妨害をしないので、あっさりと喫茶店へと到着する。


「な、なんか妙にあっさりついたね……」「だねぇ。じゃあ入ろっか。アップルパイおいしいんだここ」


 ピーン! とルトラのしっぽが立つ。

 スカートがめくれそうになったので、リュージが慌ててスカートの裾を抑えた。


「……リュージ、あんがと」

「どういたしまして」


 そう言って、息子たちが喫茶店に入る。


「見たカルマ~。良い感じじゃない~?」

「ええ。ナイスですよりゅーくん。女性のために気を使える……ぷらす3億ポイント!」


 いえーい! とカルマがはしゃぐのだった。

書籍版、コミックスは7月25日に同時発売です!



また、新連載、始めました。


自由を奪った状態で倒すなんて、この卑怯者!」と追放された最強の暗殺者、人里離れた森で魔物狩りしてたら、なぜか村人たちの守り神になってた

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最強の影使いの暗殺者が無双するお話です。頑張って書いたので、読んでくださると嬉しいです!


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