13.邪竜、息子からプレゼントもらう【後編】
前後編の後編です!前編からどうぞ!
リビングにて、ぽかんと口を大きく開く母。
リュージは照れくさそうに目をそらして、明かす。
「買ったんだ。街で。さっきのスライム討伐の賞金で」
……スモールバットや、そのほかのモンスターを倒して手に入れたお金が、リュージにはある。
だがそれは、いっさい手をつけてない。
だって結局、母の力を借りて手にれたお金であり、つまるところ母から金を恵んでもらったに等しい。
それじゃだめなのだ。
リュージは、あげたかった。
どうしても……自分の力だけで、稼いだお金で……母にプレゼントしたかった。
リュージは母を見て言う。
なぜ、プレゼントを渡したのか、その理由を。
「母さん、お誕生日、おめでとう」
……邪竜カルマアビスがこの世に生まれたのは、数百年前の今日。
であると、リュージは【監視者】より昔から聞いていた。
リュージの誕生日の、数日後が母の誕生日なのだと。
だからこそ……リュージは、自分の誕生日に、家を出る決意をしたところもある。
街へ行き、金を稼いで、そのお金で、母にプレゼントを贈るつもりだったのだ。
職について金を稼ぎ、プレゼントを実家に送ったら……ちょうど今日くらいに届くだろうと、踏んでいたのだ。
……もっとも、あげる当の本人が、まさか上京にくっついてくるとは思わなかったけれど。
「前からずっと、僕、母さんに誕生日のお祝いをしたかったんだ。いつも僕のことは、盛大に祝ってくれるのに、自分の誕生日はしないんだもん」
リュージが物心ついた頃から、母に何かを贈ってあげたいと思っていた。
それでも……何も持たない、子供のリュージには、母にプレゼントを贈れなかった。
森できれいな石を拾ってあげても良い。だがそんなの所詮ただのおままごとだ。
……そうじゃなくて、きちんと金を稼いで、物を買い、それをあげたかった。
母に。
自分をここまで育ててくれた、恩人に。
「母さん。ありがとう」
「りゅー君……」
ぐす……と母が鼻を鳴らす。やがて……。
「うえぇえええええええええええええええええええええええんっ!!!」
と滝のような涙を流した。
「うれしぃよぉおおおお! うれしいよぉおおおおおお!! 息子がっ、息子がぁああああああああああああげほっ! ゴホッ!げほげほっ!」
むせかえってカルマが咳をする。
「だ、大丈夫母さん?」
「う゛ん゛っ。うんっ!」
母が子供のように、明るい笑顔を浮かべる。
「えへ、えへへ……うれしい……私、とっても嬉しいです……。息子に、祝ってもらえる日が来るなんて……」
カルマはもらったネックレスを、きゅっと胸に抱く。
「……嬉しい。嬉しいわ。人生で2番目に嬉しい」
1番目は……と聞こうとして、恥ずかしいから聞かなかった。
「もちろん1番目はっ、りゅー君がお母さんの元に来てくれた日ですからねっ!」
人が恥ずかしくって聞かなかったことを……。
この母は、自分から言っちゃうのだ。
リュージは苦笑する。けど、それがうちの母なのだ。
「さ、食べてこのオムレツ。母さんのために作ったんだ」
リュージが言うと、カルマは「めめめめ、滅相もない!!!」
と叫ぶ。
「か、神が自らの手で作ったお料理……いいえ、御料理を私のような下等生物が口にするのも、ああっ! 罪深いぃいい!!」
ずしゃあああっ! とカルマが膝をついて感涙にむせかえっている。
「そういうのいいから。せっかく作ったのに、食べてくれないと……僕、さみしいな」
すると母は「なぁああああにぃ!!!」
びょんっ! と立ち上がる。
「ではお母さんが秒で完食してあげましょうっ!」
母がイスに座って、両手にナイフとフォークを持つ。
「もうっ。味わって食べてよね」
苦笑しながら母の前に座る。
「もちろんですよっ! 味わいつつ1秒で食べて、そして脳に今日という素晴らしい日の思い出を1秒単位で刻み込んでやるぜええええ!!」
母はいただきます! と手を合わせて、がつがつとオムレツを食べる。
途中、じゃりっ、と卵の殻をかむような音がしたが、
「はぁああああああっ! うまい! うますぎるううううううう!!」
カルマが涙を流しながら、美味いと連呼してくれた。
……オーバーすぎるリアクションだけど。
……そういう母の大げさなところ、あまり好きじゃないけど。
けど。
でも。
……決して、嫌いでは、ないのであった。
お疲れ様です!
これにて一章終了となります!
次回からは、まあ次回からも同じです。カルマが暴走して、息子が苦労するのは同じです。
また名前がまだ出てないエルフさんが参戦してきたり、シーラとのラブコメが進んでお母さんが「恋人とかお母さんは認めませんよぉ!」と怒り爆発世界危機一髪みたいな、ことが起きる予定です。
そんな感じで2章もよろしくお願いします!
可能であれば、下の評価ボタンを押していただけると嬉しいです!皆様のおかげで一章を頑張って書けました!あざます!
ではまた!




