表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/383

13.邪竜、息子からプレゼントもらう【前編】

前後編となってます!



 リュージが仲間シーラと協力して、自力でモンスターを倒した。


 その日の夜のことだ。


 リュージたちの家、1階の部屋のベッドには……カルマが眠っている。


 仰向けに眠り、すぅすぅと寝息を立てていた。


 リュージは母の寝るベッド、そのかたわり座り、母が目覚めるのを待つ。


「…………」


 その手に、【とあるもの】を握らせながら。


「……母さん、喜んでくれるかな」


 なにせ母の趣味というものを、リュージは知らない。


 いつも息子ラブ! を全開にしているので、じゃあ息子以外で何が欲しいのか。


 リュージにはわからなかった。


 だから【監視者】のエルフの助力を仰ぎ、市場マーケットへと向かって、買ってきたのである。


「……母さん」


 仰向けに眠る母は、意外にあどけない表情をしていた。


 母の実年齢は、何歳なのかわからない。


 だが人間の姿のカルマは、ともすれば19とか18とか、下手したら姉に見えなくもない。


 もっと言えば、カルマはその言動も含めて、幼い感じを見受けられる。


 ……まあ、体つきは、まったく幼くないのだが。


 呼吸するたび、母の柔らかくも大きな二つの丘が、ぷるぷる……と震える。


 花のつぼみのような可憐な唇が、むにゃむにゃ……と、今はだらしなく緩んでいた。


 ややあって、カルマが目を覚ます。


「んがっ……。ここは……?」


 カルマは寝ぼけ眼で、半身を起こし、「あ、りゅー君はっけん」


 と言って、びょんっ! と飛び起きて、息子に抱きつて来る。


 でかすぎる乳房が、リュージの顔につぶれる。苦しい。だが柔らかくて気持ちいい。だが離れて欲しい。


 ……こんな姿、シーラに見られた恥ずかしくて死んでしまう。


「ああ、ムスコニウムが補充されていきます~……」


 カルマはリュージを胸に抱くと、思い切り抱擁してくる。


「なにそれ?」


 ただ母は力を加減してるようで、強く抱きしめられていても、しかし、苦しくはなかった。


「息子に触れてないと身体から失われる成分です。こうして息子をぎゅーっとすることで補充されます。ぎゅー」


「聞いたことないよそんなの……」


 あきれ口調でリュージが言う。どうせ母が作ったでたらめだろう。

 

「それはさておきりゅー君っ」


 カルマがパッ……っとリュージを離す。

 

「お祝いしないとですねっ!」


 にぱーっと子供のような、あどけない笑顔を浮かべる。


「りゅー君が初めて自力でモンスターを倒した記念です。これも記念日に登録しましょう。全世界のひとにとって、この日は国民の祝日にするよう、ヒルダに頼んでみます」


 今にも母は竜に変身して、王のいる城へとすっ飛んでいきそうだった。


「そういうのいいからっ、おおげさすぎるからやめてっ!」


 そうですかー、と残念そうなカルマ。


「ではごちそうを作りましょう。何が良いです? お母さんステーキですか?」


「なんだよそれ……」といいかけて、思い当たる物体が脳裏をよぎり、「いやいいや聞かないでおく……」


 とやめた。


 その間、母が立ち上がってリビングへ移動する。


 料理を用意しようとしているのだろう。


「……必要ないよ、って言いそびれた」


 リュージがつぶやいた、そのときである。


「なんですか、これはーっ!」


 リビングの方から、母の大声がした。


 リュージは立ち上がって、母のいるリビングへと移動する。


 そこにいたのは……リビングのテーブルを凝視する、母の姿だ。


「りゅー君……これは、この料理は……いったい……」


 カルマが息子を見て、わなわな……と唇を震わせている。


 テーブルの上には、オムレツがのっていた。


 ……と言っても、母が作るような、きれいな、そして上手そうな物ではない。


 あちこち焦げてる、不格好なオムレツだ。

「……僕が、作ったんだ」


 リュージの言葉に、カルマが目を大きく見開く。


「作った……。万物創造スキルのない、りゅー君が? どうやって……?」


 ……別に料理の仕方は、スキルで作るだけじゃないと思うのだが。


 しかし母にとっては、料理とは作るものじゃなくて【出す】もの、あるいは食材を【料理へと変化させる】ものだった。


「シーラさんに……教えてもらったんだ。彼女、料理上手なんだ」


 カルマをベッドに寝かせた後、リュージはシーラの力を借りて、夕食を作ったのである。


 だれに?


 それは……もちろん、母に。


「母さんさ、いつも僕に記念日記念日ーって、言うくせに、自分の記念日忘れてるんだもん」


「ふぁ? お母さんの、記念日?」


 リュージはうなずいて、母に近づく。


 ポケットから箱を取り出して、母に渡す。


「これは……?」


 震える手で、母が箱を受け取る。


 カルマが息子を見やる。そして、中を開けると……そこには、


「ネックレス……ですか?」


 それは、銀のチェーンのネックレスだった。


 デザインはシンプルで、ついてる飾りも安物。


 それでも……これは。特別な物だ。


「りゅー君、これはいったい……どうやって? どこから……?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ