103.邪竜、仲間とともに墳墓を探索する【後編】
カルマたちは旧・マシモト城へと、墳墓探索クエストにきてから、数十分後。
一行は通路を歩いていた。
「結構ぐねぐねと入り組んだ構造してるんですね」
先頭を歩くカルマが言う。
通路は天井が低い。
そして地下迷宮のように、曲がりくねっていた。
「ち、地下通路は迷路になっていたようなのです」
「なんでまた?」
「地下は避難通路なのです。何かあった際逃げるための通路。つまり追っ手から逃げるというパターンも想定して作られているのです」
「ははん……なるほど。入り組んでいるのは追っ手をまくための構造なのですね。さすがシーラ、ぼくのフィアンセ、物知りですねっ!」
「そ、そんなぁ……ふ、フィアンセなんて~……」
カルマの後にいるシーラが、てれてれと頭をかいた……そのときだった。
ひゅんっ……!
すかんっ……!
カルマの頭の横に、矢が刺さった。
「おやルトラ、どうしました?」
「べ、つ、に」
「モンスターでもいましたか? 誤射したんですかね」
「ち、が、うっ!」
ルトラは非常に不機嫌そうに言う。
ずんずんと先へ進んでいってしまう。
「りゅーじくん。ルトラさん、どうしたのでしょう……?」
「さぁ……わかりません。何をカリカリ……はっ! わかりましたよシーラ!」
ピクッ……!
「何がわかったのです、りゅーじくん?」
「ルトラがなぜ怒っていたのか……その理由が!」
ピクピクッ……!
「なんでしょうっ?」
「きっと……カルシウムが不足していたのですよ!」
ずでっ……!
「おやルトラどうしたのです? 何も無いところで転んで?」
「……ないでもない」
「あなた何か怒ってます?」
「……怒ってないっ!」
ふしゃーっ! とルトラが歯をむいて言う。
「怒ってますよね?」
「はいなのです、どーしたのでしょー?」
「「わかりません……」」
「……アホが、アホが二人いる」
そんなふうに、狭い通路を歩くカルマたち。
左右の壁は石造りで、地面はむき出しだ。
通路の横幅はそこそこある。
三人が並んでも歩けるくらいだ。
だが天井は低い。
背の低いリュージの体が、手を伸ばしただけで、天井に手が届きそうだ。
そんなふうに通路をあっちへいったり、こっちへいったりしていた……そのときだ。
ピタッ……!
「ルトラ、どうしました?」
「……敵。前方から」
ルトラが背中から弓を抜いて構える。
「OOO…………」「OOO…………」「OOO…………」
やってきたのは……人間だった。
ただし、腐っていた。
手足や皮膚のあちこちが、腐り落ちている。
目は白く濁っており、とてもではないが生きてる人間には見えなかった。
「ぐ、屍鬼なのですっ!」
「ほう。ゾンビですか。映画以外で始めてましたよ」
ふぅむ……とカルマがやってくる屍鬼を見てのんきにつぶやく。
「……のんきしてる場合じゃない! くるよ!」
「おっけー。ぼくにお任せあれ」
剣を抜いて、カルマが屍鬼の群れへと向かおうとする。
「……ばかっ。こんな狭い通路で剣を、あんたの馬鹿力で振ったら死ぬって!」
ルトラがぐいっ、とカルマの首根っこをつかんで言う。
「ではどうします?」
「…………」
ルトラは目を泳がせた。
口を開いては閉じてを繰り返す。
その間にも屍鬼が近づいてきた。
「こ、こっちくるのですー!」
「……っ」
ルトラが弓を抜いて、そのまま屍鬼たち向けて打つ。
シュコンッ……!
「……リュージは防御に徹して! シーラは光魔法の準備!」
「「らじゃー!」」
カルマは剣を持って屍鬼たちのもとへ躍り出る。
攻撃では無く防御、後に屍鬼がこないようにする壁の役割だ。
シーラは距離を取って精神を集中させる。
死霊系モンスターに物理攻撃は喰らわない。
光魔法で祓うしかないのだ。
リュージが剣を使って屍鬼たちを牽制する。
「OOO…………」
「ルトラっ! そっちへいきました!」
「了解!」
カルマの脇を抜けて屍鬼がでていきそうになると、ルトラが弓で眉間を射貫く。
ひるんでいる隙にカルマが屍鬼の前へ移動。
蹴り飛ばして距離を取らせる。
そうやって時間を稼いでいると。
「じゅんびおっけーなのです!」
シーラが杖を構えて言う。
「集え光! 聖なる光となりて、魔を払え! 【死霊祓!】」
シーラの杖から、神々しい光が発せられる。
光は通路を満たす。
強い光を浴びた屍鬼たちは、その場にずしゃ……っと崩れ落ちる。
光が収まると、屍鬼たちは灰になって、跡形も無く消えていった。
「ふぅ……うまくいったのですっ!」
先ほどシーラが使ったのは、中級光魔法【死霊祓】。
神聖なる光を放出し、光に浴びた死霊系モンスターを成仏させるという魔法だ。
「ふぅ……」
「ルトラさんっ!」
ンバッ……! とシーラが両手を挙げて、ルトラに近づく。
「?」
「ルトラっ。ほらっ!」
ンバッ……! とカルマがシーラとともに、両手を挙げる。
「……え、やるの? アタシも?」
「「そー!」」
「い、いいよ……は、恥ずかしいよ……」
ルトラが顔を赤くして言う。
ぱたぱた……と耳としっぽがせわしなく動いた。
「「…………」」しょぼーん……。
「わ、わかったわよっ。やればいいんでしょっ」
「「…………」」ぱぁああ……!!
三人は集まると、両手を挙げて、パンッ……! とハイタッチする。
「「いえーい!」」
「い、いえーい……」
カルマとシーラは、笑顔でハイタッチ。
ルトラは恥ずかしそうにしながらも、それでもちゃんと手を合わせてくれた。
「ルトラさんはすごいのです!」
「なかなかの指揮っぷりです。さすがりゅーくん……じゃなかった、ぼくの仲間!」
グッ……! とカルマが親指を立てる。
シーラもまたグッ……! とカルマと同じく指を立てた。
「……なか、ま。仲間……か」
ルトラは小さく呟く。
さっきハイタッチした自分の手を見て、ふっ……と淡くほほえんだ。
「さっ、探索を続けますよ! レッツらゴー!」
「おー!」
「……お、おー」
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