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100.母の一日、息子の一日【中編】



 愛する息子と別れた後、カルマ(リュージの体)は冒険者としての仕事をしていた。

 やってきたのは、カミィーナから離れた場所にある、塔型タワーがたのダンジョンだ。


「今日はこのダンジョンで、ボスさんを倒すお仕事なのですっ」


 ふんすっ、とウサギ少女が、杖を持ってそういった。


「……結構高い塔ね。8……10階くらいあるかも」


 人狼少女のルトラが、塔を見上げて言う。

 筒状の塔が、空に向かって伸びている。

 あの塔のどこかに、ダンジョンボスがいる。

 それを倒すのがリュージたちのクエストだ。


「たかーい……ボスさんさがすの、たいへんそーなのです……」

「……だね。部屋数も多そうだし」


 するとカルマが「そうですか?」と仲間たちを見やる。


「結構簡単なクエストですよ」

「……どうする気なの、リュージ?」

「まぁ見てなさいって」


 カルマは塔の前に立つ。

探知サーチ】の魔法を使って、塔の中に人がいないことを確認する。


「中にはモンスター以外いないそうですね。よし、シーラ、ルトラ、下がりなさい」

「はーい!」

「わかった……けど、なにするの?」


 シーラが素直に従う。

 ルトラが首をかしげつつも、リュージから距離を取る。


 ふたりが十分に離れたのを確認。

 索敵で塔の周り人がいないこと確かめた後……。


「ボスを求めてダンジョンをさまよい歩くなど非効率的です。だから……こうします」


 カルマは右手を差し出す。

 そこに魔力が膨大な量の集中していく。

 シーラたちが慌ててその場にしゃがみ込んだ。


「最上級火属性魔法……【灰燼爆炎撃エクスプロード】!」


 バッ……! とカルマが天に向かって手を振り上げる。

 ……すると遥か上空から、すさまじい勢いで、隕石が落ちてくるでは無いか。


 カルマはとっさに【結界バリア】をシーラとルトラに張る。

 隕石は塔のてっぺんから地上に向かって、すさまじい速さで落下。

 そして……。


 どっがぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!


 隕石が地面と衝突した瞬間、すさまじい爆発が起きた。


 周囲一帯にあったものを、すべて焼き尽くす。

 森も塔も、いっさいを灰燼に帰す、最強の魔法だ。


 しゅぅううう…………………………。


「うん、クエスト完了ですね」


 ふぅ、とカルマがかいてない汗を拭うポーズ。

 シーラもルトラも、目を白黒させたが、そこまで気にしてない様子だ。

 ここ数日の冒険で、カルマ(リュージの体)の規格外っぷりを、ありありと見せつけられているからであろう。


「りゅーじくん、ほんとーに強くなったのです! カルマさんみたいー!」

「おほー! この子ったらいいことをいいますねっ! ぷらす10兆ポイント!」


 えへーっと笑うカルマとシーラ。

 その一方で、ルトラだけが冷めた表情で、はぁ……とため息をつく。

 ……不思議なことに、彼女はカルマのぶっ壊れた性能の魔法を見ても、何も突っ込んでこないのだ。


 それはさておき。


「あれ? リュージ。ダンジョンの焼けた跡に、なんかない?」


 目の良いルトラが、いち早くそれに気付いた。

 カルマたちは、吹き飛ばされた塔のあとへとやってくる。


「な、なにか床にあるのです……」


 他の地面がすすだらけのなか、床の一部だけ、焼け焦げになっていなかったのだ。

 

「どれどれ」


 カルマはあやしい床の前にやってきて、だぁあああああああああああんっ! と踏み抜く。


 床はボゴォ……! と音を立てて、床板が外れた。

 あとには階段が、地下へと続いている。


「なるほど、隠し扉ですか」


 カルマは右手に、魔力を集中させて言う。

「まった。リュージ、何する気?」

「水魔法でも使って、中のモンスターを窒息しさせようかなと」


「水棲モンスターだったらその作戦意味ないよ。それにそうだった場合は、水びだしになって、アタシたちが中に入れなくなる」

「なるほど……爆撃で吹っ飛ばせませんし、ここは中に入るのがベストですか」


 そう言って、カルマたちは階段を降りることにした。


 地下の構造は下へ伸びるだけの単純な構造だった。


 おそらく地下迷宮型のダンジョンとは違い、塔型のダンジョンの地下は、あくまで一時避難所シェルター的な場所なんだろうと思われた。


 ややあって、階段が終わる。

 眼前には分厚い鉄の扉があった。


「いかにもボス部屋っぽいね」

「が、がんばりましょーなのです!」


 ふんす、とシーラが気合いを入れる。


「ふたりとも、下がってなさい」


 カルマがシーラたちを下がらせる。

 ドアの前で腰を落とし、右腕を、ドアにたたきつける。


 どがぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!!!


 鉄のドアが勢いよく吹き飛んでいく。


【ふははは! よくぞやってきたぞ挑戦者よ! 我が名は地底王……ぐぁああああああああああああああああああああああああああああああああ!】


 吹っ飛んでいったドアが、中にいたボスの腹にぶつかる。

 そのまま部屋の端っこまで、吹っ飛んでいった。


「ドアの直線上に立っているとは、間抜けなボスもいたものですね。さて、ふたりとも、戦いに参りましょうか」


 カルマは剣を抜いて、シーラたちを引き連れ、その地底王とやらの元へと近づく。

 地底王は壁に埋まっており、微動だにしていなかった。


「ち、ちてーおうさん……モグラさんなのです?」

「……でかいもふもふ。かわいい♡」

「? どーしたのです。ルトラちゃん?」

「……な、なんでもないよ。シーラちゃん」


 ふたりの会話をよそに、カルマたちは地底王へ近づく。

 いつかかってきてもいいように、戦闘態勢は取ったままだ。

 

 だがいくらカルマたちが近づいても、地底王は動こうとしない。

 カウンター狙い……にしては様子がおかしい。

 その顔に血の気はなく、微動だにしていない。


 カルマが剣を持ったまま、地底王の胸に、耳を与える。


「りゅ、リュージくん! あぶないのですー!」


 あわあわとシーラが慌てて言う。


「……ああうん。大丈夫でシーラ」


 カルマは腰に剣を戻して、仲間たちを見て言う。


「こいつ、もう死んでます」

「「へッ?」」


 ととと、とシーラとルトラがやってくる。

 ルトラがいぬ耳を心臓に当てて「ほんとだ……」と絶句する。


「す、すごいのです! こんな強そうなもぐらさんを、パンチ一撃で倒すなんてすごいすごーい!」


 ぴょんぴょんっ、とシーラがその場でジャンプして、リュージ(カルマ)を褒める。

「ふふん。そうでしょうとも。りゅーくんならこれくらいできて当然ですからね!」


 どやん、とカルマは得意顔。

 ルトラはあきれたようにため息をついた。

「……隠す気ゼロかよ」

「何か言いました?」

「いや、なんでもないわ……」


 そんなふうに、カルマは仲間たちとともに、昼間は冒険をするのだった。

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