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96.邪竜、A級モンスターも普通に倒す【後編】



 商人からA級モンスター、地竜の討伐を依頼されたリュージたち。


 母はシーラたちを連れて、転移スキルで、目当ての森までひとっ飛びでやってきた。


「さぁクエストです! りゅーくんのために……じゃなかった。がんばるぞー!」

「おー!」


 ウサギ獣人のシーラが、かわいらしく腕を上げる。


「ところでリュージくん。さっきのスキル……カルマさんの技なのです? いつの間に使えるようになったのです?」


 シーラがめざとく、カルマに聞いてくる。

「ええ。そうです。しかし何も不思議なことではありません」


 ふっ……とカルマが笑って言う。


「だってぼくは、お母さんの息子だから」


 決まった……。これ以上の理由がどこにあるというのか。


「なるほど……そーゆーことなのです!」

「ええ、そういうことなのです。飲み込みが早いですね。さすがりゅーくん……じゃなかった、ぼくの恋人だよ」

「も、も~♡ はずかしいですぅ~♡ ルトラさんとカルマさんが見てるのです~♡」


 ひゃー♡ とシーラが両手で顔を隠す。


「はぁ~…………」


 重くため息をつくリュージ。

 そして……。


「…………」

「おやルトラ、どうしたのです? おか……ぼくの顔をじっと見て」


 カルマがルトラを見て言う。


「ううん……なんでもない」

「ふぅん……ま、いいです。ささっ! 地竜とやらを倒しにいきましょう。れっつらごー!」


 カルマが先導を切って、森の中を進んでいく。


「ところでリュージくん。地竜ってみたことあるのです?」


 シーラが(息子の体に入っている)カルマに尋ねてくる。


「見たことが無いですね。竜というのだから空を飛んでいるのでしょう。空を見ながら歩きましょうね」

「なるほどー! リュージくん天才なのですー!」


 シーラはことあるごとに、息子を褒めてくる。

 ううむ、さすがカルマが認めただけのある、見事な嫁っぷりである。


「いいですよシーラ。その調子。ぷらす5兆ポイント」

「リュージくんカルマさんみたいなのです~。おかし~」


 その背後で、リュージがハァ……っとため息をついた。


「カルマさん、どうしたのです? 今日は元気がないのです。心配なのです……」


 息子にシーラが言う。ぺちょん、とうさ耳が垂れていた。


「……ううん、大丈夫。心配しないで」

「わかりました……けどっ、つらかったすぐいってくださいなのです! しーら、回復魔法を使うのです!」


 ふんすふんす……とシーラが気合いを入れて言う。

 ああほんと……優しくて良い嫁だ。

 さすが大天使むすこの嫁だけある。


「しーら……5京ぽいんと!」

「けい? なんなのです?」


 そんなふうに雑談しながら、リュージたちは森の中へと進んでいく。

 だがいっこうに地竜とやらは見当たらなかった。


「いないのですー」

「そうですね……このままいったん戻って商人に報告しにいきましょうか?」


 と思ったそのときだ。


 ごごごごごごごご………………!!!


 突如として地面が揺れ出したのだ。

 もこっ……と地面が隆起する。


 やがて爆発が起き、そこから1匹の……。 1匹の……。


【誰だ……我が領地を踏み荒らす、愚か者どもはぁああああああああああああ!?】


「なんだ、トカゲか」


 翼の無い、土に汚れたトカゲが、地面から出てきたのだ。


 ちょっと仰ぎ見る程度の大きさのトカゲである。

 足だけがぶっとい。

 実に貧弱そうな見た目だ。息子を見習って欲しい。見てこの息子のかっこよくたくましいすがた……!


 まあそれはさておき。


【我が領地を土足で踏みにじった罪……死を持ってつぎな】「うるさい」


 カルマは一瞬でトカゲの懐に潜り込む。

 軽くフック。


 どっごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!!


 すさまじい衝撃とともに、トカゲが空へと吹っ飛ぶ。

 カルマは軽くしゃがみこんで、


「りゅーくんの冒険の邪魔住んじゃ無いですよこのトカゲ野郎が」


 ジャンプ。トカゲより上空へと飛んでいき、そして両手をそろえて、トカゲの腹をめがけて、ハンマーの要領で振り下ろす。


 ばっごぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!


 ずずずうぅうぅ~~~~~………………………………ん!!!!


 トカゲがすさまじい勢いで落下。

 あとには魔力結晶と、そして素材アイテムが残される。


 カルマはカレイに着地を決める。


「しかしいないですね地竜とやら……」

「あの……かあさ……リュージ。今のモンスターが地竜なのでは?」


 息子が恐る恐る、カルマにそう尋ねてくる。


「は? まさか。こんなクソザコがA級なわけないでしょう?」


 よくわからないが、A級とは上から二番目くらいに強いモンスターなのだろう。

 一番目を自分カルマだとして、二番目というのだから、そこそこ歯ごたえのある相手に決まっている。


 だのにこのトカゲと来たらなんだ。

 あんな魔力もスキルも使ってない、軽くたたいただけで死にやがって。


「ちがいますよぅ。もっと強いモンスターですってば。それに竜なのでしょう? 空を飛んでいるはずです」

「いや……けど地竜ってたしか……」


「ささっ。さがしますよみんな。地竜を発見したすぐに報告することッ!」


 ……しかしその後いくら探しても、森の中に地竜を見つけられなかった。


 今日の探索は諦めて、一度商人たちのもとへ、報告へと向かう。


「地竜は見つかりませんでした。明日改めて出向きます」

「わかった。ちなみに今日の探索で何かモンスターは倒さなかったか? 素材アイテムがあれば買い取るが?」


「ではこちらを」


 そう言ってカルマは、別空間に閉まってあった、さっきのトカゲの素材をどさっと出す。


「さっき軽く倒したトカゲから剥ぎ取った素材です……って、どうしました?」


 商人がなんだか、目玉を飛び出すほど、まぶたを大きく見開いていた。


「いや……いやいやいや! ちょっとリュージさん……いや、リュージ様!」


 なんだか知らないが、商人の態度が結構変わった。

 様付けか。わかってるじゃないかこの商人。


「これです! これが地竜です!」

「は? へ? 嘘でしょう? こんな弱いモンスターが、A級なわけないですってば」


 たった2回で倒せるわけない……。

 だが商人は「これです間違いありません!」と素材を見ながら叫んだ。


「はぁ……。なんだA級もたいしたことありませんね」


 すると商人が、キラキラとした目を、自分(リュージの体)に向けてきた。


「すごい……すごいですリュージ様! 地竜を易々と倒してしまうなんて! 天才だ!」

「ふふん……でしょう!? りゅーくんは天才なんですようー!」


 商人とともに、カルマは笑顔になる。


「しかも空間収納まで使えるなんて……ほんと、あなたは何物なんですか!?」

「よくぞ聞いてくれました!」


 カルマは格好いいポーズを取って、高らかに言う。


「ぼくはリュージ! 素敵な母さんをもつ……ただの冒険者さ!」


 ……その後、息子に烈火の如く怒られたのは言うまでも無い。

 なぜ? ホワイ?


 お母さんのスペシャルな息子なら、これくらいできて普通なのに……?

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