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96.邪竜、A級モンスターも普通に倒す【前編】


 ゴブリンの大群を、初級魔法で葬った、数時間後。

 リュージたちは無事、商人たちを目的地である街まで、護衛できた。


 リュージたちがやってきているのは、【マシモト】という大都市だ。


 首都マシモト。

 ここは王都シェアノに継ぐ、この国の要となる街である。


 ここには大商業ギルドが店を構えている関係で、人も物もすさまじい量が行き来するのである。


 マシモトの外壁にて、リュージは商人たちから、感謝されまくっていた。


「ありがとう! いやぁ本当にありがとう!」


 商人のリーダーから、母(リュージの体に入っている)が感謝されまくっている。


「あなた様がいなかったらどうなっていたことか!」

「ふふん。そうでしょうとも。冒険者リュージがいたからこそ生きていられるのです。感謝し、そして冒険者リュージの名前を広めるのです!」


 カルマの頭脳スーパーコンピューターは、ひとつの回答を導き出していた。


 今、体はリュージだ。

 つまりこの体で、多くの人を救えば、そして大きな事を成し遂げれば、リュージの評判が上がる。


 息子が有名になる。

 息子が喜ぶ。

 母、喜ぶ。QED。


 カルマはより一層、リュージのために、頑張って仕事をこなそうと思った。

 いっぽうで背後にいるリュージは、はぁ~……っと重くため息をついていた。

 なぜだろうか。わからん! あとでよしよししてあげないとっ。


「ところでリュージ様は大層お強い……。その強さを見込んで、一つ依頼を受けていただけないでしょうか」

「ふむ、聞きましょう」

「か、母さ……リュージ、安請け合いはよくないよっ」


 息子がカルマの手を引いてくれる。

 身を案じてくれているようだ。

 なんて優しいんだ! 息子は天使か……あ、天使だった。


「……大丈夫。お母さんだいぶりゅーくんの体の動かしかたがわかってきたのです。どんな依頼でも指先一つでダウンですよ」


「……いやでもやっぱり変だって。だって母さんは」


「あのぅ……それで依頼の話なのですけど」

「はいはいなんでしょうっ!」


 カルマは商人に笑顔を向ける。

 そう、ここで母が頑張れば、息子の評判が上がる。

 つまり今この瞬間、カルマの一挙手一投足が、息子のために繋がるのだ。

 ならば頑張らねば。

 より一層、頑張らねばっ!


「実はマシモトから少し離れた森の中に【地竜】というA級のドラゴンが住んでいるのです」


「ふむ、そのドラゴンの討伐を依頼したいと?」


「ええ。本当はこれから冒険者ギルドへ赴き依頼を出そうと思っていたのですがちょうどいい。是非ともお強いあなた方……というよりリュージ様にお仕事を受けていただきたいと!」


「ふふ……りゅーくん……じゃなかった、このリュージをご指名とは、あなたなかなかの慧眼ですね」


 しかしA級モンスターか。

 大天使の獲物には、少々ものたりない強さのモンスターである。


「か、母さ……じゃなかった。リュージ! そんな危ないモンスターと戦うのはやめなさい!」


 リュージがカルマを止めてくる。


「大丈夫ですお母さん。ぼくの戦いっぷりは先ほど見たでしょう? A級なんて大丈夫ですよ。よゆーです」


 余裕であの世に送ってあげよう。

 そして活躍することで、息子の評価が上がる→息子が喜ぶ→私嬉しい!


「で、地竜とやらはどのあたりに?」

「マシモトから南東へ行ったあたりのソルティップの森の近くです」


 どうやらこの商人の持っている店の一つと、マシモトとの間である森の中に、地竜が巣を作ってしまい困っているという。


 確かに物を運んでいるたび、モンスターに襲われていたのでは商売にならないだろう。


「わかりました。依頼を受けましょう」

「リュージッ!」

「大丈夫だぜお母さん。ぼくはあなたのために、見事依頼を達成して見せましょう」


 ふっ……息子に格好いいことを言ってしまった。

 だが息子は「だからねいったんちょっと待った方が……」と言っていた。


 何を悠長な。

 りゅーくん英雄伝(息子を活躍させて、みんなにその偉大さを伝えるための英雄伝説)はすでに始まっているのだ。


「では参りましょうか。シーラ。ルトラ」

「は、はい……」

「けどどうすんの? ソルティップまで結構距離あるよ」


 確かに馬車を手配する必要があるレベルで、離れている。


「こちらで馬車を用意いたしましょう」


 と商人のリーダーが言う。

 だがカルマは首を振る。


「大丈夫です。このリュージにお任せあれ!」

「か、かあさ……リュージ、いったい何を……?」


 息子が見守る中で、カルマは右手を持ち上げる。

 彼女はできる、という確信があった。


 なぜかわからない。

 だができるという強い思いだけがあった。

 カルマは、リュージの体で、パチンッ……! と指を鳴らす。

 すると……。


 ぶぅうんっ……!!!!


「わ、ワープホール!? さ、最上級転移ハイパーテレポーテーションだとおぉおおおおおおおおおおおおお!?!?」


 商人がびっくりして、その場に尻餅をついていた。

 カルマはきょとんと首をかしげる。


「何を驚いているのですか?」

「お、驚くに決まっているよきみ……! 超レアなスキルじゃ無いかっ! 使える人間は現在この国の宮廷魔導師長だけだぞっ!」

「ふーん。あっそう」


 だからなんだという感想しか無かった。

 カルマにとってこの転移スキルは、使いなれたものだからだ。


「SSSランクのスキルを軽々と使うとは……すごい! さすが単身でゴブリンの大群を倒しただけある! まさに英雄ユートと同格レベル!」


「ふふん。まぁ悪い気はしませんね。さぁりゅーくんをもっと褒めるのです!」


 息子が褒められ、得意になる母。

 いっぽうでリュージは、頭を抱えてその場にしゃがみ込んでいた。


「どどどど、どうしたの!? 病気!?」

「いや……うん、大丈夫だから、ほんと……うん……」


 息子が弱々しく呟いた。

 大丈夫だろうか。

 いや! 本人が大丈夫だと言っているのだ。それを尊重するのも母の勤め!


「では参りましょうか。皆さん」

「お、おー!」

「リュージあんたちょっとどうしたの? 変よ?」

「はぁ~~~~………………不安だなぁ」

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