86.母と息子の学園生活【母編】
リュージが学校に行っている間の、カルマの行動を見ていこう。
朝、リュージを学校に送り届けた後、転移スキルで自宅のある【カミィーナ】までひとっ飛びで戻ってくる。
リビングにて、ほっ……と一息つく。
「ふぅ……さてっ! 朝食の準備です」
ぱちんっ! とカルマが指を鳴らす。
リビングのテーブルに、食い切れないほどの量の料理が並ぶ。
カルマの【万物創造】スキルがあれば、この程度、文字通り朝飯前なのだ。
「さぁって、愛する孫娘たちを起こさないと~!」
カルマは転移スキルで、孫たちのいる部屋まで一瞬で移動。
「ぐーぐー……」
「ぬぅ……」
ベッドの上には、ふたりの幼女が眠っている。
褐色金髪のルコ。元・ルシファー。
緑髪に触覚のバブコ。元・ベルゼバブ。
二人はひとつのベッドの上で眠っている。
「はぁあ~~~~ん♡ りゅーくんのかわいい娘たちが! 仲良く眠ってるよぅ! りゅーくん並に天使だよぅ! さすが天使の娘だYO!」
天使と書いてリュージと読む。
カルマにとっては、それは当たり前のことだった。
カルマはしばしルコたちの寝顔を、記録の宝珠で撮影しまくる。
ややあって、孫たちが起きる。
「かるま。おはよ」
「はいっおはよー! ルコ、バブコ。今日も良い天気ですよぅ♡」
カルマは二人の孫を、むぎゅーっと抱きしめる。
ルコはされるがママ。
バブコは嫌そうに顔を背ける。
「暑苦しい。離すのじゃ」
「ばぶこ。うそ。ほんと。はぐ。すき」
「嘘じゃないわい!」
「すなお。じゃない」
「えへへ~♡ 愛しい愛しいりゅーくんの娘たち~♡ 今日も元気でハッピーだよぅ♡」
カルマは孫たちを抱きしめると、ベッドの上でゴロゴロする。
ややあって、二人を抱っこしたまま1階へ。
ちょうど起きてきた嫁(暫定)のシーラと四人で、食事を取る。
「しーら。きょうも。はたらかないの?」
「おいルコ。やめるのじゃ。その言い方ではシーラが無職みたいに聞こえるじゃろ」
バブコがツッコミを入れる。
「そうなのです。リュージくんが帰ってくるまで、しーらは魔術書をたくさんよんで、魔法をイッパイ覚えるのです!」
ぴょこぴょこっ、とシーラのうさ耳が動く。
「しーら。むしょく。いえ。ほん。よんでる。ばかり。ニート。思った」
「違いますよルコ。シーラはこうしてりゅーくんのために動いているのです。尊いことです。褒めてあげないとダメですよ?」
「しーら。とーとい」
「あはは♪ ありがとるーちゃん」
よしよし、とシーラがルコの頭を撫でる。
その様をバッチリと、カルマは撮影していた。
いついかなる時も、シャッターチャンスは逃さないのである。
朝食を終えると、カルマは空いた食器の皿洗いをする。
シーラとともに、台所に立つ。
「はぁあああん♡ 嫁と一緒にお皿洗いなんて……すっごくお母さんぽいですよー!」
ちなみにカルマは、万物破壊と創造が使える。
なのでお皿は使い捨てでオーケーなはずだ。
それでも皿を洗っているのは、こうして母親っぽいことをしたいから、あえて洗っているのだ。
「むっ! りゅーくんがマラソンに行く時間! シーラ! 後任せましたよ!」
「はいなのですー! カルマさん、いってらっしゃい♪」
シーラを残して、カルマは転移スキルで王都へ移動。
息子がちょうど体育の授業で、マラソンをしていた。
その様子をしっかりくっきり録画して、家に帰って家事の続きをする。
食器を洗い終えた後、カルマは部屋中の掃除をする。
真っ先に掃除をするのは、リュージの部屋だ。
時間をかけて、念入りに、掃除をするのである。
「らんらんらーん♪ らららららーん♪ 息子の部屋を掃除するおかーさーん♡」
楽しそうに、カルマが手に持った掃除機で、部屋を掃除する。
これは異世界の便利グッズだ。
つい最近、市場に出回りだした物を、カルマがスキルでゼロから作ったのである。
スイッチ一つで、ゴミをすごい勢いで吸い込める優れものだ。
カルマは掃除機を使って、リュージの部屋の床を掃除していた……そのときだ。
「おや? ベッドの下に何かありますね?」
なんだろう……とカルマはベッドを、万物破壊で消し飛ばす。
ベッドの下には……1冊の本が置いてあった。
「本? なんでしょう。本棚からおちたのでしょうか……?」
本を回収。万物創造を使って、新しいベッドを作り出す。
「ハッ! こ、これはーーーーー!」
カルマが手にしている表紙には、ちょっぴりエッチな格好の、女の子が書いてあった。
「これはもしや……伝説の、えっちぃ本というやつかーーーーーーー!」
伝説の剣を持ち上げる勇者の如く、カルマがエッチな本を掲げて言う。
……ちなみにが、これは別にえっちぃ本ではなかった。
青年向けの雑誌だ。
表紙が今回、水着のグラビアだっただけである。
寝る前に雑誌を読んでいて、ベッドの下に落としてしまったのだが……カルマはそんなことを知らない。
「どどど、どうしましょうどうしましょう! えっちぃ本を……どうしましょう!」
とはいうものの、カルマはすっごく楽しそうだった。
顔をキラキラとさせている。
「りゅーくんが、あの小さな赤ん坊だったりゅーくんがっ、もうエッチな本を買う年になってるのですね~♡ はぁあん……♡ おっきくなったわねぇりゅーくん♡」
というわけでカルマはよろこんでいるのだ。
「これはどうするのがベター? やっぱり、セオリー通り、机の上にそっと置いておくのがいいかしら……?」
カルマはううーん……と悩む。
繰り返すが別にこれはえっちぃ本ではない。
「見て見ぬ振りが母の愛……? ノー! 違います。答えはこれです!」
ぱちんっ。
どさどさどさどさどさどさどさッッ!!
カルマが万物創造を発動させる。
リュージの机の上に、えっちぃ本(本物)が、大量に出現した。
「真の母親とは、息子のよろこぶことをする者! エッチぃ本を1冊見つけたら、100冊買ってそっと置いておくのが母の愛! そういうものですっ!」
また見当違いな母親理論を展開するカルマ。
いろいろと試練を乗り越えてきたけど、まだまだカルマは子育て15年目のビギナーだった。
カルマはエッチぃ本をリュージの机に置いた後、お昼ご飯を届けに学校へ行く。
帰ってきて孫娘たちに昼食を食べさせ、昼寝させる。
その間に家中のお掃除、お洗濯をする。
シーラがいつも家にいるため、一人でやらなくてすみ助かる。
「嫁ができたらこんな感じですかね~♡」
「よ、嫁なんてそんな……ま、まだ早いのですぅ~……」
カルマはシーラとともに、洗濯を干す。
繰り返すが万物創造と破壊があるので以下略。
「ところでカリューとルーマの顔を、いつ見せてくれるのですか、シーラ?」
「だ、だれ……?」
(想像の)リュージとシーラの娘のことだ。
そんなふうに嫁(暫定)と家事をして過ごしていると、あっという間に夕方になる。
息子を学校まで迎えに行き、家でみんなでご飯を食べる。
孫たちをお風呂に入れて、1日は終了。
寝る前にカルマは、リュージを前に言う。
「さありゅーくんっ♡ おやすみのハグとちゅーをっ!」
「か、母さん……もうやめようよ。僕もう大人なんだよ?」
「はぐー! ちゅー!」
「もー……わかったよ……」
やれやれ、といってリュージはカルマにハグをしてくれる。
リュージは、なんだかんだいって、カルマの行動を否定しないところがある。
そこがリュージの良いところだ。
ハグを終えると、カルマはリュージを部屋に送り届ける。
ミッションクリア。
明日も頑張ってお母さんやるぞ!
「かーーーさーーーーーん! 何この本ーーーーーーーーーーー!」
そんな感じで、最近はこんなふうに、1日を過ごしているカルマであった。
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