83.邪竜、入学初日から授業参観する【前編】
入学手続きをした翌朝。
いよいよ今日から、リュージの学園生活が本格的にスタートする。
なのだが……。
「はぁ……」
冒険者学校の、廊下にて。
リュージは重い足取りで、【剣士科】の教室へ向かっていた。
「悪目立ちしちゃったなぁ……」
昨日、リュージたちの前に、カルマがやってきた。
カルマはその自由奔放っぷり、そして厄介な母親っぷりを、クラスメイトたちにさらしてしまったのだ。
「きっと、変な子だって、みんなに思われてるよ……」
変人の母を持つやばい奴、とクラスメイトたちから認識されてしまったらどうしよう。
せっかく新しい友達ができるかも、と思っていたのに。
「きっと引かれてる……はぁ~……憂鬱だなぁ……」
ため息をつきながら、リュージは剣士科の教室の前までやってきた。
「うう……帰りたい……」
リュージはその場にしゃがみ込む。
だがいつまでもこうしていても仕方のないことだ。
何も問題は解決されない。
リュージは意を決して、教室のドアを開ける。
「…………」
緊張の面持ちで、リュージは教室に入る。
中にはイボンコたち、他の剣士科の生徒たちがいた。
はたして……。
「おー! リュージじゃん! おはよーじゃんっ!」
猫獣人のスターチが、真っ先にりゅーじに気付く。
たたっ、とかけてきて、リュージの首に腕を回す。
「お、おはようスターチ……」
「なんだ? 元気ねーじゃん! 朝じゃん? 学校初日じゃん? もっと元気よく行こーぜリュージ!」
スターチは人なつっこそうな笑みを浮かべて、そう言う。
「やぁリュージ君。おはよう。良い天気だね」
「おはようなんだなぁ~……」
「…………」
他の生徒たちも、リュージに挨拶してくる。
リュージは目を丸くした。
「あの……みんな。その……どうして普通に接してくれるの?」
リュージの言ったことにしたして、みなが首をかしげる。
「どういうことかな、リュージ君?」
「だって昨日の……うちの母さんが……みんなの邪魔しちゃったでしょ? だから嫌われてないかって……」
リュージの説明に、生徒たちは「「「ないない」」」と首を振った。
「別に君を嫌うことはしないよ」
「そうじゃん。てかリュージはおれらにまだなんもしてねーじゃん?」
「別に嫌いにならないんだなぁ~……♡」
「というか冒険者は変わり者が多い。あれくらい普通さ」
「そうじゃん。おれらだって結構変わりもんじゃん? だから驚かねーって!」
そういう……ものなのだろうか……?
リュージはあまり他の冒険者と絡まない(母が絡ませてくれない)ので、よくわからなかった。
しかし生徒たちが、自分のことを嫌ってなくて、ほっとするリュージ。
「…………」
「ルットラ。君も別に気にしてないだろ?」
人間の少女イボンコが、山小人のルットラにそう言う。
「……別に」
ルットラは無愛想に呟くと、自分の席に座る。
「ということだ。みな君を嫌っていないから安心したまえ」
「そうじゃん! 今日からおれら同じ学校の友達じゃん!」
「なかよくしてほしーんだなぁ~……♡」
みなにこやかに笑い、リュージにそう言う。
リュージはほっとしながら、
「うんっ!」
と元気よくうなずいた。
と、ちょうどそのときだった。
ガラッ……!
ダークエルフの女性、デルフリンガー先生が、教室に入ってきたのだ。
「貴様らいつまで駄弁っている。授業が始まるぞ。席に着け」
「「「はいっ」」」
リュージは慌てて、自分のイスに着席する。
生徒五人が、教壇に立つデルフリンガーを見やる。
デルフリンガーは、猛禽類のように鋭い目つきをしている。
自然、リュージたちの背筋もピンと伸びる。
デルフリンガーはうなずくと、口を開く。
「今日から貴様らに剣の基礎を教えていく。授業は大きく座学と実技に分かれる」
座学は、冒険者としての基礎的な知識を。
実技は、筋肉トレーニングと、そして剣の実技指導を、それぞれ教えるらしい。
「私の授業では基本的に口答えは許さん。なにか質問や要望があるときだけ、手を上げて言え。良いな?」
はい……と答えようとした、そのときだ。
「はいはいはーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい! お母さん要望がありまーーーーーーーーす!」
ガラッ……!
入ってきたのは、ばっちり化粧を決めた、母カルマだった。
「か、母さんッ……!」
「おはようりゅーくん♡ 5分ぶりだね♡ 一日千秋の思いでしたよー!」
「校門で分かれてたった五分しかたってないでしょ……!」
今日もカミィーナから王都まで、母に転移スキルで送ってもらったのだ。
「で? なんだ、貴様? 何のようだ」
デルフリンガーがカルマをにらみつける。
母は臆することなく、すたすたすた、と教壇へ向かう。
「お母さん。あなたに要望があって今日は参上しました」
「ほう? 言ってみろ」
カルマはこほんっ、と小さく咳払いすると、こう言った。
「あなたがちゃんと、息子に正しい授業をしているか……授業参観を要求します!」
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