81.邪竜、息子と一緒に学校へ行く【前編】
遅くなって申し訳ございませんでした!
犬人に自分だけ負けてしまい、力不足を痛感したリュージ。
レベルアップのため、彼は冒険者学校に通うことになったのだった。
入学を決意してから、1週間後の朝。
拠点であるカミィーナの、リュージたちの家の玄関先にて。
「それじゃ……みんな、行ってくるね」
黒髪で中性的な顔つきの少年、リュージが、仲間たちにそういった。
「ぱぱ。がんば。るー」
ぬぉおおお、と褐色銀髪の幼女が、両手を挙げる。
彼女は自分の娘一号、ルコだ。もとはルシファーという大悪魔だったのだが、母が倒したことで幼女化し、現在はリュージたちのもとで暮らしている。
「るぅ、ぱぱいない。さみしい。けど。がまん」
「うん……ごめんね、さみしい思いさせて」
リュージはルコを抱き寄せて、よしよしと頭を撫でる。
「だいじょうぶ。るぅ。がまんづよい」
んふー、っと鼻息をつく。彼女の頭をわしゃわしゃと、リュージが撫でた。
「りゅーじよ。気をつけるんじゃぞ」
「バブコ。ありがと」
緑髪の幼女に、リュージが言う。
彼女はバブコ。元はベルゼバブという、魔王四天王の一人だったモンスターだ。こいつもカルマが撃破したことで幼女化。娘二号として家で暮らしていた。
「まかせろ。このお子様のめんどうは、われが見よう」
「るぅ。おこさま。ちがう。ばぶこ。おこさま」
「はいはいそうじゃのー」
「ざつ。むかつく」
ぺんぺん、とルコがバブコの頭をたたく。緑髪のてっぺんから生える虫の触角が揺れていた。
「あのあの……えとえと……リュージくんっ」
さて残るは、白髪のウサギ少女・シーラだ。
童女といっても過言ではないほど、幼くあどけない顔つきと体つき。目はくりっとしていて、実に愛らしい。
彼女はリュージの冒険者としての相棒であり、そして同時に、恋人でもあるのだ。
「本当に……がっこういっちゃうのです……?」
不安げに、シーラの耳がぺちょんと垂れる。
「うん。僕は強くなるために学校通うんだ。シーラのお荷物には、なりたくない」
「そ、そんな……! しーらはリュージくんのことっ、お荷物だなんて一度も思ってないのですっ」
シーラは優しい。リュージの弱さを肯定してくれる。しかし現実は違う。シーラは強い。単体で犬人を倒せていた。
倒せなかったのはリュージのみ。彼女との実力差が開いていることは、明白だ。
「うん……ありがとう。でも……ごめんね。僕は、強くなりたい。強くなって、その……君を支えたいんだ」
「りゅーじくん……」
ぽぉー……っとシーラが、顔を真っ赤にする。潤んだ表情で、リュージを見てくる。
「ひゅーひゅー。ぱぱ、ひゅーひゅー」
「やめいルコ。ちゃかすでない」
幼女組がばっちりと、リュージたちを見ていた。恥ずかしくなって、二人は目をそらす。
「し、しーらリュージくんが強くなって帰ってくるまで、ルコちゃんとバブコちゃんたちと、家で待ってるのですっ!」
シーラが二人を抱き寄せる。
「けど……本当に良いの? 僕が学校に行っている一ヶ月も……冒険者やすんで」
学校に通う間、シーラは何もすることがない。リュージは彼女に、暫定的に、他の人とパーティを組んだらどうかと提案した。
だがシーラはその申し出を拒否したのだ。
「ううん、できないのです。しーらのパートナーは、りゅ、リュージくんだけなのですー!」
シーラが顔を真っ赤にして、そんな嬉しいことを言ってくれる。
「あう……………………」
言ってから恥ずかしくなったのか、シーラが両手で顔を隠してしまった。
「あ、ありがとうシーラ……。僕……うれしいよ、とっても」
「リュージくん……」
潤んだ目で見つめ合う二人。良い雰囲気の中……ふたりの顔が近づこうとした、そのときだった。
「ンンッ……! りゅーくん、そろそろ学校に行く時間ですよッッ!」
後で待機していた母、カルマが、咳払いしてそういった。
「ふたり仲が良いのは大変結構ですが……学校に遅れるのはよくないです。決して……決して! ふたりのキッスの邪魔をしたかったわけじゃないですからね、あしからず」
「「き、キスなんてしないよ(なのです!)」」
顔を真っ赤にする二人。
さておき。
「それじゃ……いっています!」
「「「いってらーっしゃーい!」」」
リュージは仲間たちに見送られ、その場を後にする。
「ではお母さんのスキルで、学校までレッツらゴーですよ!」
パチンッ! とカルマが指を鳴らす。転移スキルが発動し、リュージはその場から消え去る。
……そういえば。
みんないたけど、チェキータさんだけいなかった……。とリュージは呟くのだった。
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