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08.邪竜、ダンジョンを徹底的に掃除する【後編】

前後編となってます。これは後編、まずは前編からどうぞ!



 息子、初めてのクエストが行われるまであと45分。


 息子が訪れる予定のダンジョン。


 そこの掃除へやってきた母カルマ。


「ここがダンジョンですか。初めて入りましたが、地味なところですね」


 全体的に暗い。


 地面はむき出し。


 固そうな岩や石があちこちに落ちている。


「危ない危ない」


 カルマはその場にしゃがみ込み、地面に手をついて、スキルを発動させる。


 神殺しの持つスキル・【万物変化】


 あらゆるものをゼロから作る、【万物創造】に少し似た効果を持つ。


【万物変化】は、あらゆる物体を、思うまま【作り替える】スキルだ。


 無から有を作り出すのが【万物創造】


 形ある物に、別の形を与えるのが【万物変化】


 これを使ってカルマは、ダンジョンのむき出しの地面を、別の物へ変える。


 固い地面を、柔らかい材質へと変化させたのである。


「しかしずっとぐにょぐにょの地面では、かえって歩きにくいですね」


 ということで、カルマは地面を元に戻す。

 そしてただの地面を、


【人間が転んだときにだけ、スポンジのように柔らかな材質へと変化する】地面へと、変化させた。


「地面はおっけー。では続いて天井……むむ、鍾乳石ですか。とがってて危ないですね!」


 見上げると、円錐状の岩が、天井からぶら下がっている。


「もし落ちてきて、りゅー君の頭にでも当たったら……ああ! 恐ろしい恐ろしい!」


 とは言っても、鍾乳石はしっかりと、天井に張り付いている。


 落ちてくる可能性など、万に一つもないだろう。


 が、カルマの意見は違う。


「一万分の1の確率で、落ちてくるんでしょ!? 危なすぎます!」


 ……たとえ億が1、けいが1の確率だろうと、0でないなら危険は存在するのだ。


「ということで鍾乳石は全部撤去です。はぁっ! うなれ私の破壊の雷!!!」


 カルマは右手を掲げる。


 そこに黒い雷が集まっていく。


 カルマの持つ神殺しのスキル、【万物破壊】


 あらゆるものを消し去ることのできる、破壊の雷を発動させる。


 雷がダンジョンの天井を走り、鍾乳石はきれいさっぱり取り除かれる。


「ふぅ……すっきり。これでりゅー君の頭に石が突き刺さることは、ありませんねっ。ぐす……良かったぁ……」


 本気でカルマは涙ぐんでいた。


 息子の無事を確保できて、ほっと安堵する。


 ……無事も何も、そもそも鍾乳石が落ちるなんてことはありえないので、何もせずとも無事は保証されていたのだが。


 それはさておき。


「地面オッケー。天井もオッケー。となるとお次はアレですね。ダンジョン名物、あれですね」


 カルマは先ほど使った、【強制転移(最上級)】を再び発動させる。


 今度は、ダンジョン内の【あれ】を、カルマの目の前に出現させる。


 ドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサドサ………………!!!!


 落ちてきたのは、無数の宝箱だ。


「ダンジョンと言えば宝箱。宝箱と言えば……トラップ。あけてびっくりトラップ発動! とかしゃれにならないですからね」


 たとえばミミックというモンスターがいる。


 こいつは宝箱に擬態して、蓋を開けてきた冒険者に襲いかかるという恐ろしいモンスターだ。


 またミミックに限らず、迷宮内の宝箱には、トラップが仕掛けられているものが多くある。


 蓋を開けて矢や毒ガスが出る物。


 開けたらアラームが鳴り響き、モンスターたちを呼びよせるトラップ。


「危ない危ない……。そういうのホントだめ。ダンジョンの悪いところですよ」


 そんなわけで、危険な宝箱は全て排除。


「……しかし仕分けするのは面倒ですね」


 トラップのある宝箱と、そうでない宝箱の仕分けは、至難の業だろう。


 なにせ迷宮には無数の宝箱があるのだから。


「めんどっちいので、全部消去しましょう」


 万物破壊のスキルを使い、山積された宝箱を全部無に返した。


「で、お母さんが新しく宝箱を用意します」


 今度は万物創造スキルを使って、さっき消した宝箱と、まったく同じデザインの物を出す。


「宝箱の中身は……そうですね。お母さんの宝物を入れておきましょう」


 パチンっ! と指を鳴らすと、無数の宝箱の中に、カルマの思う【宝物】が詰められる。


 ……ちなみにカルマの言うところの宝物とは、


・リュージのブロマイド

・リュージがかつて使っていた歯ブラシ

・リュージがかつて


 ……と、カルマ以外の人間からすれば、ゴミ同然のがらくたが、宝箱につめられて、ダンジョンの各地へと配置された。


 まあ全てがそれだとさすがにいけないなとおもい、カルマは適当に、【ゴミ】を詰めておいた。


 ……とは言っても。


 それはカルマにとっての【ゴミ】であって、普通の人間からすれば、違うもの。


 宝箱に適当に詰められたゴミとは、


・無限魔力の水晶(無限の魔力を内包する超レアアイテム)

・勇者の聖剣(あらゆる魔を滅する破邪の剣)

・10000000ゴールド


 ……等など。


 冒険者が開けたら、垂涎ものの超お宝だった。


 まあリュージ愛なカルマからしたら、そんなもんゴミも同然だが。


 それはさておき。


 宝箱の以外にも、ダンジョン内にしかけられた罠を、【万物変化】のスキルを使って全て解除する。


 また、リュージが迷子になってしまわないように、1階層以外には立ち入れないよう、結界を張る。


「さて仕上げです」


 カルマは先ほどの【強制転移(最上級)】を発動させる。


 あらゆるものを自分の思うがまま動かせるスキルを使う。


 さて何を動かすかというと……。


「ぎぎー!」「ぎききぃー!」「ぎー!」


 集められたのは、ダンジョンの中にいる、スモール・バット。


 その数、約1500。


 その全てを、カルマの前に呼びよせたのだ。


「さて仕上げといきましょうか」


 カルマは最上級雷魔法・【磁石化マグネティック・フォース】を発動させる。


 物体を磁石化させる、超強力な磁力魔法だ。


 これを使って、モンスターの身体を磁石に変える。


 すると1500いたコウモリたちが、バッチーン! といっせいにくっついたのだ。


「ふうぅぅ~…………。これでよーし」


 掃除をやりきった母は、すっきりとした表情を浮かべる。


 あとはリュージがこのモンスターたちを倒せば、彼らはクエスト完了。


「磁石で動けなくなってますからね。返り討ちにあうことはないでしょう」


 だが万一に備えて、カルマはコウモリたちに闇魔法のろいをかけておいた。


 もし、リュージに少しでもダメージを与えたら、全員即死するという最上級闇魔法【死神デス・イレイザー】をかけておいた。


「ふふ……掃除終わりはいつも気分が晴れやかになります。これでりゅー君は安心安全です、ふふっ、よろこんでくれるかなぁ~」


 息子が無事笑顔で、クエストから帰ってくるところを想像して、カルマは笑顔を浮かべる。


「さて帰りましょう。息子の帰りを座して待つ。くぅ! なんかいま私、とってもお母さんっぽい!」


 ……いやまったく座して待ってないよ、と突っ込む人物は、【その場には】いないのだった。


「……ほんっと、あいかわらず規格外よねぇ、カルマってば」

お疲れ様です!


次回は7話(8話)のあとの話となります。


明日のお昼頃にあげたいと思ってます。予定は未定ですが。


明日も全力全開で頑張りますので、よろしければ下の評価ボタンを押していただけると嬉しいです。モチベーションがあがります!


ではまた!

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― 新着の感想 ―
[一言] あまりにも規格外でナレーションが意思を持っているな。 こういうの面白くて大好きやでぇ!
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