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70.邪竜、息子の交際を認める【後編】


 母がチェキータとともに出て行ってから、数十分後。


 カルマがリュージたちの元へ、もどってきた。


「ただいま帰りました、りゅー君。ああっ! りゅー君! あえなくて死ぬかと思いましたよー!」


 ダダダッ! と全力で走ってくる。ベッドに半身を起こしているリュージの体に、だきぃ! と抱きついてくる。


「はぁ~♪ ムスコニウムが補充される~♪ 生き返るぅ~♪」


「もうっ、またそれ。そんな物質ないってば」


 母曰く、息子から発する物質らしい。摂取しないと死ぬとのこと。


「それで……その、母さん」


 さっき中断されていたことについて、リュージは話す。


「シーラと、僕、付き合うから」


 付き合ってもいい? じゃない。リュージの中で、この愛しいウサギ獣人と付き合うという事実は、換えられない。


 それほどまでに、リュージは彼女を愛している。


 たとえ反対されたとしても、無理にでも……と思っていたのだが。


「ええ! いいんじゃないですか! お母さんふたりの交際を、祝福しますよ!」


 元気いっぱいに、カルマがうなずく。


「え、あ……うん……。うんっ! ありがとう!」


 やっぱり良かった。母は認めてくれていたのだ。


 あのホテルの夜。母は許すと言ってくれたけど、どこか納得いってないような雰囲気が合った。直後に石化したし。


 因果関係はわからないが、付き合うのが嫌すぎて、石になった、あかんぼうになったのでは……と危惧していたのだ。まあ荒唐無稽ではあるけど、そもそもこの人に常識って言葉は通じないし。


 だが今の母はどうだろうか。


 笑顔のカルマは、心から、リュージたちの交際を、言葉通り祝福してくれてるようだった。


「リュージくんっ」


 シーラが嬉しそうに笑う。


「シーラっ! 良かった!」

「よかった~」


 えへへ、とふたりが笑い合う。


「えっと……その、母さん」

「はいはいなんでしょう?」


 顔を赤くしながら、


「ちょっと……出て行って貰えないかな? シーラとその、大切な話したいし」


 告白をやり直すつもりだったのだ。


 交際を許してくれたのだ。母は素直に出て行ってくれるだろう。


 カルマは笑って、「だめです!」と首を横に振るった。ずっこけるリュージ。


「な、なんで……?」


 するとカルマが最高の笑顔で言う。


「息子が恋人に告白するシーンなんですよ!? 一世一代の大イベントじゃあないですか!」


 カルマはそう言うと、スキルを使って、記録の水晶を取り出す。


 これは映像データを残すマジックアイテムだ。


「録画せずにはいられない! さっ……! お母さんのことはお気になさらず、告白して! そんでもってキッスを!」


 ……リュージは頭を抱えたくなった。


「あの……母さん?」

「キッス! キッス! キッス!」


 どうしよう。母親が全力で、恋人との交際を応援してくれている。


 それ自体は嬉しい。最愛の人が、自分たちの交際を祝福してくれているのだから。


 だが……。だとしても、母親がいる前で告白なんて恥ずかしし。なにより母がいる前でキスなんて……できるわけがなかった。

 恥ずかしくて死ねる。


「……んー」

「し、シーラっ?」


 シーラが嬉しそうに目を閉じて、唇を向けてくる。これは……やらないと行けない雰囲気だ!


「かるま。ぱぱ。しーら。なに。する?」

「ルコはお母さんと端っこの方へいきましょうね」


 ばちこーん☆ とカルマがウインクする。空気を読んで娘を離しておきました! みたいな感じだろうか。


 そこを空気読んで欲しいんじゃないんだけど……とため息をつく。


「リュージくん……」


 もじもじしながら、シーラがリュージを待っている。


「りゅー君! りゅー君! キッス! ほらシーラがキッスを待ってますってば! はやくぅ!」


 シャッターチャンスは逃さないぜ! みたいな感じで、記録の水晶を100個くらいだして、空中に浮かべてるカルマ。


 ……ええい、ままよ。


「シーラ」


 勇気を出して、リュージはシーラの肩を抱く。


「シーラ。僕は君が好きだ」

「……はいっ。しーらも、大好きです!」


 シーラの細い肩を抱く。


 その肩は、ホテルの時のように震えてなかった。目を閉じて口びるを近づけてくる。

「りゅー君! 目は! 目は閉じるんですよ! それがマナーだって母子クラブにかいてありましたっ!」


 母が息子にアドバイスを送ってくる。……なにこれ羞恥プレイ?


 しかし母の助言は、このタイミングに限りありがたかった。


 リュージも目を閉じて、シーラに顔を近づける。瑞々しい感触が、自分のくびるに重ねる。


 今。

 この瞬間。


 リュージは恋人シーラと、ひとつになった。


 甘いシーラの唾液。彼女の呼気が口の中に広がる。


 やがて、どちらからともなく、顔を離すと、ふたりとも笑った。


「大好き」「しーらも」


 えへへ、と笑うリュージたち。

 すると……。


「おめでとぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」


 パンパンパン! とカルマが、どこから取り出したのか、クラッカーを鳴らした。


 カルマが両手に、ルコが片手で、クラッカーを持っている。きっとスキルで作ったのだろう。


「りゅー君! シーラぁ!」


 カルマは凄い笑顔で、リュージたちの元へ駆けてくる。


 そしてバッ……! と両手を広げて、リュージたちを包み込むようにして抱きしめる。


「えへへっ。息子に恋人ができたっ。私に娘ができたっ! えへへっ、えへへっ、嬉しいな~♪」


 子供のように、母が無邪気に笑っている。喜んでくれている。


 リュージにとっても、喜ばしいことであり、嬉しいことだった。


 母が、愛しいひとが、自分たちを祝福してくている。それが本当に、リュージにとっては嬉しかった。


 基本的に、リュージは、カルマが喜んでくれていることが、嬉しいのである。


「ルコっ! あなたもっ!」


 カルマがぐいっと手を伸ばし、ルコと3人を、ぎゅーっと抱きしめる。


「家族が4人に増えました! ああ、嬉しい……嬉しすぎて天に召されそうですよ!」


 ……かつて。


 母にとって家族とは、息子と同義語だった。


 しかし今は。


 自分だけじゃない。ルコもいる。そして、シーラもいる。


 1人だけだった家族が、3倍にも増えた。


 母が喜んでいる。天涯孤独だった母に家族ができて、喜んでいる。


 それは、リュージにとっても、喜ばしいことだった。母が笑って、母が喜んでくれて、嬉しいのである。


「母さん」


 リュージは言う。

 

 自分の正直な気持ちを。


「僕、今とっても嬉しいし、幸せだよ」


 自分の愛する家族たちが、笑って、幸せそうにしている。


 この上ない幸せであると、リュージは胸を張ってそう言える。


「ええっ!」


 カルマは大きくうなずいた。


 万感の思いを込めるかのように、目に涙をたたえながら、大きな声で言った。


「お母さんも、今ちょ~~~~~幸せです!!!」


 こうして、最強ドラゴンの息子である自分に、恋人ができた。家族が増えた。


 これからもどんどん、リュージたちの周りは賑やかに、楽しくなっていくことだろう。


 冒険者になって、立派に独り立ちするという目標は、まだまだ遠いけど。


 けど、大好きな人たちと、幸せな日々を送っていれば、きっと。


 いつか、目標は、絶対に叶う。

 リュージはそう、思うのだった。

これにて6章終了です!お疲れ様でした!


さて。


昨日言ったとおり、今日は重大な発表があります!


この度、

このカルマのお話が、



書籍化します!

そして、漫画にもなります!



つまり書籍化とコミカライズ、同時にします!


皆様がカルマのお話を読んで応援してくださったおかげで、こうして世に本という形で、カルマを送り出すことができます。


読者の皆様、本当にありがとうございます。そしていつもありがとうございました!


書籍化やコミカライズの詳しい話は、また後日連絡させていただきます。

とりあえず今日は書籍化するよ、漫画にもなるよというお知らせでした。


さて次回からですが、普通にいつも通り、更新していきます。


まだリューくんの最終目標である自立には至ってませんからね。まだまだお話は続きます。


それでは、次回7章。たぶんシリアスな展開が続いたので、基本に立ち返り、お母さんが全力で息子の冒険についてこようとしてくるような、軽いお話にしようかなと思います。


以上です!

それでは、次回も、そして今後ともこの作品を、よろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] もうこの話ここで終わってもいいぐらいの感動したんですけど…
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