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65.邪竜、ワイバーンの心臓をぶち抜く

お世話になってます!


 息子たちと風呂に入った翌日。


 カルマはリュージに背負われながら、今日も息子の冒険に付いていく。


 ここ最近は、比較的安全な採取クエストばかりを、リュージたちはこなしている。


 討伐クエストや、ダンジョン探索では、母の身に危険が及ぶかも知れない。


 というリュージの配慮である。「はぁ……♡ 優しい息子♡ めっちゃすき……♡」


 デレデレ、とだらしのない顔を浮かべるカルマ。


「んー? どうしたの、母さん?」

「キャッキャ♪ あーぶー♪」


 息子はしゃがみながら、キノコ拾いをしている。


 さっきの発言は、小声だったからだろう。

 息子の耳には届いてないようだった。


「…………」


 じっ……とシーラが息子と、そしてカルマを見ていた。


 やばい、バレてしまったか……?


「リュージくん。そろそろお昼ご飯にしましょうっ」


 良かったバレてなかった……。


「うんっ。そうだね。僕もうお腹すいちゃって」


 息子たちは朝から作業をしていた。


 今太陽は中点にさしかかっている。


 シーラは肩かけカバンの中から、レジャーシートを取り出す。


 てきぱきとシートを広げて、ランチボックスとお手ふきを取り出す。


 その間にリュージは、もたもたとおんぶひもを解除。


 カルマを仰向けに寝かせる。


「どうぞ!」

「ありがと、シーラ」


 息子におしぼりを手渡すシーラ。


「カルマさん。ごはんにしましょうねー」


 シーラがカルマの隣に座る。


 魔法使いのローブのそでから、にゅっ、とおしぼりと、そしてほ乳瓶を取り出す。


「あぶー……」


 シーラはカルマの額をちょんちょん、とおしぼりでぬぐう。


 抱っこして、そしてほ乳瓶を向けてくる


 ちゅうちゅう、と吸う。

 美味い。


「9月もまだ暑いのです。水分補給は大切なのです」


「なるほど……」


 リュージはランチボックスの中のサンドイッチをほおばっている。


 ツナサンドと卵サンドとがミックスしたサンドイッチだ。


 パンはこんがり焼いていて美味そうだし、具がたっぷり入っていてボリューミーである。


 具がはみ出ないよう、パンズは爪楊枝で

止められていた。


「リュージくんも、どーぞなのです!」


 シーラが今度は水筒を取り出す。


 息子は嬉しそうにそれを受け取って、くぴくぴ……と飲む。


「……むむ」


 やるな、とカルマは思う。


 確かに今は、8月が終わったとしても、まだまだ残暑は厳しい。


 息子が額に汗をかいてるのをめざとく察知し、シーラは水分補給を進めていた。


「……やりますね、この子」


 くっ……! とカルマは歯がみする。


 赤んぼうという立場上、息子に水筒を勧めることはできない。


 お弁当だって作れない。


 赤んぼうのこの体、息子にめっちゃ甘えられるからいいけど、息子の面倒を見れないのがネックだ。


 そろそろ禁断症状が出そうだ。息子を面倒見れないことに、ストレスを感じているカルマであった。


 そんなふうに和やかにお昼ご飯を食っていた……そのときだ。


「あぶ?」


 カルマはバッ……! と上空を見やる。


 ふたりは気付いてないようだ。


 こちらに向かって、上空から何かが降りてこようとしてることに。


 目をこらす。

 何かがこちら目がけて飛んでくる。


 たぶんシーラが気付いてないのは、そいつがまだ遠くにいるからだろう。


 ではなぜカルマが気付けたかというと、野生の勘だ。


 カルマは魔獣モンスター

 つまりケモノだ。


 誰よりも何よりも、外的から敵意には、人一倍敏感に感じ取ることができるのである。


「……この感じ。ちょっと2人には荷が重いですね」


 びりびり……と肌で感じるプレッシャー。

 このふたりで相手するには、少々強い相手だ。


 なので、カルマは行動する。


 カルマはこっそりと、そこにあったサンドイッチに手を伸ばす。


 サンドイッチには爪楊枝が突き刺してあった。


 カルマはそれをこっそりと手に取り、そして超高速で、上空に向かって投げた。


「ふぎゃーーーーーーーー!!!」


 と、火が付いたように泣き叫ぶ。


「どうしたの、母さん?」


 リュージが抱っこしてくる。


 ごめん、泣くつもりはないんだ。


「ふぎゃあ! ふぎゃあ! ふぎゃあ!」


「ど、どうしよう。ご飯は食べたし……?」


 シーラも泣いてる原因が、このときばかりはわからないみたいだ。


 そりゃそうだ。

 純粋無垢な赤んぼうが泣いているのなら、シーラは経験で何をすれば良いのかわかるだろう。


 だが今カルマは、わざと泣いているのだ。

 ふたりの注意を、頭上からそらすために。

 高速で爪楊枝が飛翔する。


 赤んぼうになったことで、神殺しのスキルは使用できなくなったし、身体能力も極限まで低下している。


 だがそれでも……。


 カルマの元々の強さは、世界最強。


 弱化されたとはいえ、常人の何倍も何十倍も、何百倍も強い。規格外が多少弱くなっても、一般人よりは遥かに強いのだ。


 あまりの早さに、リュージたちはカルマが何をしたのか、気付いてないだろう。


 投げた爪楊枝は、遥か上空を飛ぶそいつにぶつかる。


 正確に、ワイバーンの弱点である心臓を、爪楊枝がぶち抜いた。


「GYAOOOOOOOOOO…………」


「「え?」」


 そのときになって初めて、リュージたちは上空を見やる。


「わ、ワイバーン!?」

「リュージくん!」

「うん、シーラ戦闘態勢に……」


 と思ったのだが、リュージは首をかしげる。


「なんか変じゃない……?」

「お、落ちてくるのです-!」


 リュージは慌ててカルマを抱きかけると、その場から逃げる。


 ワイバーンは重力に従って、


 ずぅうううううううううううううううううううぅん……………………。



 とシーラたちからちょっと離れた場所に落下。


「…………」


 リュージはシーラに、カルマを渡す。


 剣を抜いて、身長に、ワイバーンに近づく。


 だが息子が近づいても、相手は起きる様子はない。


「え……?」


 不審がりながら、リュージはワイバーンに近づく。


 そして抜いた剣で、飛竜をちょんちょん、とつつく。だが微動だにしない。


「死んでる……」

「し、死んでるぅ!?」


 素っ頓狂な声を出すシーラ。


「うん……。心臓に大きな穴空いていた……」

「そ、そんな……」


 ばかな……と2人とも目を大きく剥いて、首をかしげる。

 

 だが飛竜はぴくりとも動かず、絶命していた。


 ふぅ……とカルマは安堵の吐息を付く。

 

 息子たちの危険を回避できて、良かった……と安心する。


「まさか……」


 リュージがカルマを見やる。

 おっとバレたら大変だ。


 だからこそ、カルマは無邪気な赤んぼうのふりをする。


「あぶ? あーい♪」


 するとリュージは「だよね。まさかだよね……」と言って苦笑いする。


「とにかく良かった……。ワイバーンなんて、今の僕らじゃ絶対にかなわないし」


「うん。何が原因かわからないけど……ラッキーだったのです!」


 どうやら気付かれてないようで、カルマはほぅっと吐息を付くのだった。

次回もよろしくお願いいたします!

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