10.驚愕
朱里は魔術棟を後にしてトボトボと自分が今住んでいる使用人棟に向かった。
途中王宮にある中央通路を通るとそこで第二王子に呼び止められた。
「朱里?」
「シャルル様!なぜこちらに?」
かなり遅い時間だ。
こんな所に高貴な人がいていい時間帯じゃない。
「いや、私はその・・・だな。そ・・・そうだ、アカリはどうしてここにいるんだ?」
シャルルは自分が実はアカリを捜していたのだがそれをごまかすように強引に話題を変えた。
「はい、ちょっと魔術棟に用事がありまして・・・。」
朱里も先程の話のショックからまだ抜け出せず口ごもってしまった。
二人はなんとも微妙な感じでその場に立っていた。
そこに護衛騎士が部屋に戻ってこないシャルルを捜して中央通路にガヤガヤと走り込んで来た。
「殿下此方でしたか。」
ホッとした様子の護衛騎士が中央通路にボウッと突っ立っている第二王子を囲むように駆けつけた。
朱里は駆けつけた護衛騎士に飛び上がると逃げるようにシャルルに頭を下げてその場から駆け出した。
くそっ。
折角二人きりだったのに。
シャルルは内心歯ぎしりしながらも駆けつけた護衛騎士の二人を連れて仕方なく自室に戻った。
護衛騎士を連れて王宮の奥に帰っていくシャルルを通路の陰で見送った朱里は重い足を引きずって使用人棟に戻った。
使用人棟では侍女長が扉の前で待ち構えていた。
「遅いわよ、アカリ。」
「申し訳ありません。」
朱里はぺこりと頭を下げた。
侍女長は溜息を吐くと諦め顔で朱里をこれから彼女が使う部屋まで案内した。
「今日からここを使ってちょうだい。明日は朝が早いから遅れないように。何か質問は?」
「いえ、ありません。」
朱里はまたぺこりと頭を下げた。
侍女長はそんな朱里の様子に何か言おうとしたが時間が遅いこともあってそのまま彼女の部屋から下がってくれた。
朱里は部屋に入るとそのままベッドに突っ伏した。
なんでこんなことになってるんだろう。
涙がにじむ目をこすって明日は仕事が一段落したら裕也たちに相談しよう。
朱里そう考えて自分を納得させるとそのままベッドに横になった。
その日はその部屋を出てお湯を貰って体を拭く気力がわかず。
冷たい水で体を拭くとそれからベッドに入って目を閉じた。