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始まりの音
天龍高校に向かう生徒を乗せた電車がゆっくりと
スピードを落としてホームに停まり
アナウンスが車内に響きドアが開く。
青也と瞬矢はドアから他の生徒たちと同様に
車外へ出るとそこには、
白く荘厳にそびえ立つ学校が見える。
「でっけー。」
瞬矢が間の抜けた声でそう言うも
青也もたしかにと言うような顔で目の前に見える
『天龍高校』を見つめている。
周りの生徒たちも二人と同じように
足を止め見つめているようである。
一人、また一人と決意を固めた面持ちで
生徒たちが歩いていく。
青也と瞬矢もそれぞれが胸に期待と不安を抱き
入学式が行われる天龍高校本館ー大会議堂へと
歩き始めたのだった。
二人が式場の並べられた椅子に並んで座り
15分ぐらい経つと、式場内は生徒たちで溢れかえる。
騒ぐ者は一人もおらず、皆じっと式が始まるのを待っている。
時計の針が9時を指すと
ーーリンゴーンーーリンゴーンーーリンゴーーンーー
透き通るような鐘の音が式場内に響き渡った。
生徒たちが座る場所から前に見える舞台上の袖から
白髪の老人が舞台の中央に歩み出てマイクを握る。
「ようこそ。『天龍高校』へ。」