始まりの音
多数の戸建てが並ぶ閑静な住宅街
朝を報せる太陽が昇って、1時間は経つだろうか
まだ冬の名残があり肌寒さを感じさせる季節なのだろう
白い息を吐きながら歩く人の往来がうかがえる。
その住宅街に建つ一件の家の中で
一人の少年が寝ていた。
彼の名は『千流青也』
中肉中背の普通の体型に
寝顔ではあるが整った顔立ちだとわかる
高い鼻、シャープな輪郭、、、etc
中学卒業まで非行なども起こさず
トラブルにも巻き込まれずに過ごしてきた
どこにでもいるような15歳だろう。
「せいやー!朝ごはんよ、起きてきなさい!」
「ン〜〜〜」
階下からの母の高い声が
彼の耳に届き
まだ開ききらない瞼をこすり、あくびをしながら
むくりと起き上がる。
「はーい!今行くー!」
青也は、そう母に返事をすると
寝巻き姿から制服に着替え始めようとして
クローゼットの姿見を見る。
寝癖が付いた髪をかき上げた青也の顔は
いつもと変わらず整った顔立ちをしている。
今日だって右目の黒眼が白いことも変わってない。
生まれつき右目の視力は無かった。
右目を眼帯で隠して、左目だけの生活をしてきた青也だが
そのせいでイジメられることも無く、
右目が使えないことでの苦労も無くやってこれた。