第四話
昨日はすみませんでした。二回目の投稿時間前に眠ってしまったので投稿できませんでした。
本日は三話投稿しますのでどうかお許しを。
修羅場とは、傍から見ている分には笑いの種だが、当事者になるのは御免被りたいものだな。
「「バラド(さん)!」」
とりあえず、現状の把握から始めよう。
エルネスはどうやら、明日からの依頼に同行したいらしい。どこで私の予定を知ったのか。まあ、十中八九ヤガンの仕業だろう。
ユルダは、何故ここに居るかはわからないが頬を膨らませて、不満を前面に出している。
「なぜユルダはそんなにも怒っているのだ? 理由を聞かねば納得いかん」
「り、理由!? そ、それは気にしない方向でお願い。そ、そんなことより、この女を紹介してよ!」
「そんなもの私を介してではなく、勝手にやってもらいたいものだ。この赤髪の女は……」
仕方なく私が紹介してやろうと、ユルダに話しかけると、エルネスが私の言葉を遮って言った。
「あたしの名前はエルネス・バーン。王国からの命でバラドさんを勧誘しに来たの」
「あ、えっと、わたしはユルダです。って王国!? え、バラド、この人偉い人!?」
ユルダはエルネスの自己紹介にこちらを見てくる。特段慌てるところでもない気がするが?
「なんで、バラドは不思議そうに頭捻ってるの!? 王国だよ? 国からの使者って普通の民間人は話すこともできないくらいなんだよ!?」
なぜ、ユルダは分かりきったことを言っているのだろうか?
「え? 何わたしが間違ってるの!? そんな不思議そうな顔しないでよ!」
「まあ、一度落ち着け。お前の勢いにエルネスが若干引いているぞ?」
「全部、バラドのせいだよ~!!」
ユルダはそう言い捨てると、宿のほうへと走り去ってしまう。まったく……何がしたかったのか。
「えっと、ユルダさんを追いかけなくてもいいのですか?」
「それよりも先にお前の用件を聞こうか? いや、なんだ、私の依頼に同行したい、だったか?」
「はっ! そうです! あたしの任務はバラドさんの勧誘と国境付近の調査なんです! 国境付近で起きた事件のことはご存知ですか?」
ヤガンから報告のあった国境防衛騎士の事件か。
「一応な。話は聞いた。だがあれは状況証拠的にも、お前の言っていた情報的にもまあ魔族の仕業だろう?」
それ以外はもう犯人を捜すくらいしかできることはないと思うぞ? いや、こいつまさか……。
「はい。ですので、バラドさんの依頼に同行し、依頼達成を手伝わせていただきたいのです。報酬は受け取りませんのでどうか!」
やはりか。報酬の件に文句はないし、勇者候補なのだからある程度は戦えもするだろう。しかしだ。
「却下だな」
「なぜですか!? 一人と二人、明らかに二人のほうが楽に依頼をこなせるはずです!」
「私は一人での戦闘に慣れている。それに私は自分の命を預けられるほど貴様を信用していない。それと、魔獣騒ぎの犯人探しだが……私は手伝わん」
興味もない。そんなものは勝手にやっていろという話だ。
「そんな!? 民間人に危険が及ぶかもしれないのですよ!?」
「ギルドに依頼があれば私が行くかもな。私がいなくとも王国騎士団と勇者ならそれくらい可能だろう? まあ、依頼にあった森の近くの村までは連れて行ってやる。だが、それ以降は私とお前は別行動だ。明日の出発は早朝だ、いいな?」
そこまで一気に言い切ると、扉を閉める。扉の前にエルネスの魔力を感じたが、少しすると遠ざかっていく。ようやく行ったか。
「リューノは……まだ帰っていないか」
まあ、今朝の段階で父上のいるはずの場所に飛んでもらっているのだ。今日中に戻ってくるのは不可能だろう。
「さて、私が確認・把握しなければならない事柄は、一つ――魔族の動向、二つ――王国の狙い、三つ――皇国の思惑、……こんなところか」
この内、王国はエルネスを介して、なんとなくだが見えてきた。どこからの情報なのかは分からないが、新生魔王の討伐、これを考えているのは明らかだろう。
魔族に関してもリューノが帰ってくるころには分かるかもしれん。だが皇国の思惑、これが問題だ。
今回の依頼、魔獣の討伐は国境をまたぐ森の中で行われる。その際、皇国の邪魔が入らないとは限らない。というよりも十中八九邪魔が入ることは間違いないだろう。
皇国側でも魔獣による被害は出ていよう。それならば、向こう側でも討伐依頼が出ているはずだ。出ていない場合、それは皇国が魔獣騒動に起因しているとみていいのだろう。
まあ、そのあたりも明日以降の調査と討伐作戦で分かるか。
こんな面倒事はさっさと終わらせて、もっと割のいい依頼をしたいものだ。