表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/34

三十二話目~別れ~

 目覚めるとそこは白い部屋だった。そこにいるのは、俺とアスモだけ。彼女の体にはサタンたちの戦闘において負った傷はどこにもなく、いたって平然としていた。

 戸惑う俺に向かって、彼女は優しく微笑みかける。

「おめでとう、孝臣。君の勝利だ」

「本当か? やったな、アスモ」

「ああ、本当だ。本当に、よかったね、孝臣」

 俺たちは互いに顔を見合わせて笑い合う。彼女は清々しい笑みを浮かべながら空を見上げた。

「私は君と出会えてよかったよ。決して長くはない時間だったけど、とても楽しかった」

「俺もだよ。お前と出会えて最高に楽しかった。できるなら、こんなゲームなんか関係なく、お前とは友達になりたかったな」

 彼女は苦笑しつつ、俺の方に右手を伸ばしてきた。俺もそれに応じ、固い握手を交わす。

「孝臣。さぁ、君の願いを言ってくれ」

「ああ、俺の願いは、参加者全員を生き返らせること。ただし、記憶は残してくれ」

 そこで、アスモはキョトンとした表情になった。

「いいのかい? 君たちにとっては嫌な記憶だったんじゃないのか?」

「まぁな。最悪だったよ。初めて人を殺したしな。でも、嫌なことばかりじゃなかった。お前や、ルシファーや、寧々さんや、ここなさん……色んな人たちと出会えたことは幸運だったと思うんだ。だから、残してくれ」

「……君らしいね。わかった、そうしよう」

 言って、彼女はパチンと指を鳴らす。直後、アスモの手からいくつもの光の弾が出現し、それは天へと上り、弾けた。彼女はそれを見終えた後で、ほぅっとため息をつく。

「これで大丈夫だ」

「そうなのか?」

「ああ、安心したまえ……さて、そろそろ私も帰らなくてはいけないかもしれないね」

「待てよ、アスモ」

 俺は彼女を呼びとめ、告げた。

「なぁ、また会えるかな?」

「会えるとも。だって、私たちは悪魔だよ? いつでもこっちに遊びに来るさ」

「ならさ、少しお願いがあるんだがいいか?」

「何だい?」

「出来るなら、今度、ルシファーやベルフェゴールたちも連れてきてくれ。あいつ等とも、もう一度会ってちゃんと話したいからさ」

 アスモは微笑を浮かべながら、続けた。

「ああ、約束するよ。ただし、私からも条件がある。その時は、寧々やここなを呼んでくれ。私も彼女たちのことをもっと知りたいんだ」

 いつも通り、少しだけ澄ましたような顔をして告げるアスモに俺は苦笑を返す。やっぱり、こいつも俺と同じ考えを持っていたか。

 と、そこで彼女の体が不意に発光しだした。かと思うと、アスモはふっと微笑む。

「どうやら時間だね。ありがとう、孝臣。君と出会えて本当に幸せだった」

「俺もだぜ、アスモ。じゃあな……いや、違うな。また、な」

「ああ、また会おう。それと、孝臣」

「何だ?」

 首を傾げる俺に向かって、アスモは満面の笑みを浮かべ、

「私は君のことが大好きだ」

 それだけ言って、その場から消えた。

 白い部屋も、徐々に消えつつある。おそらく、アスモが消えたからだろう。

 俺は彼女がいたはずの場所を見つつ――

「俺も大好きだぜ、アスモ」

 そっと目を閉じて、彼女への言葉を綴った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ