二十九話目~決戦~
消えゆく寧々さんを見送った後で、俺はすぐさま保健室から飛び出した。
まだ、ルシファーは残っているだろうか?
俺は身体能力を強化し、一目散に二階へと向かう。
やがて到着し、見てみるとそこには――血まみれのサタンと龍さんの姿だけがあった。ルシファーは、もういない。おそらく、時間が来たのだろう。
俺は手甲を嵌めつつ、問いかけた。
「なぁ、お前ら。一つ聞いていいか?」
「あ? 何だよ、お前か。どうもやってくれたらしいな、色々と」
龍さんが嫌悪感を露わにしてくる。だが、知ったことか。
「孝臣。ルシファーはやはり……」
追いついてきたらしきアスモが言ってくる。ああ、知ってるよ。もう、あいつは消えた。
だけど、あいつの思いは、あいつらの思いは俺の中にある。
俺は拳を握りながら、再び彼らに向きなおった。
「お前ら、このゲームが好きか?」
サタンは、即答した。
「ああ、好きだね。このゲームは最高だ。何せ俺たちは死ぬ危険がねえし、何より暴れられる。ま、殺せねえのは辛いところだがな」
「俺もだ。こんなに最高なゲームは味わったことがねえ。スリルが違う」
やはりな。この二人は危険だ。ここなさんがああ言っていたのも理解できる。だからこそ、ここで倒さねばならない。
俺はグッと構えを取りそれから口を開いた。
「なぁ……あんたら、嫉妬を殺したんだろ? どんな気分だった?」
「どう……って、なぁ?」
サタンが首を傾げると、龍さんは口元を不気味に歪めた。
「すっげえ興奮した。わかるか? 涙を浮かべながら懇願してくる女をいたぶる感覚が。あんなの今までできなかった。法がうるせえからな。けどよ、ここなら、この場所なら合法だ。それに、俺が勝ったらその腐った方なんかを全部ぶち壊すんだよ。そして自由な世界を作る。最高じゃねえか?」
「悪いけど、賛成はできない」
わかった。こいつらは本当のクズだ。無蓋さんたちとも違う、クズだ。
何より……俺の大事な幼馴染を傷つけ、殺した奴らだ!
俺はこみ上げる怒りを押し殺しつつ、口を開いた。
「アスモ……行こうぜ」
「ああ、孝臣」
『これが最後の戦いだ』




