唯先生とひかりちゃん
こんにちは、ひじきたんです。
連載の合間に、休憩で作ったものです。軽い気持ちでどうぞ。
唯先生とひかりちゃん
二〇〇九年十二月三十一日、東京。松岡唯二十六歳、新任教師やってます。
実家は政治一家で、三人の兄も政治家で、親に期待されて育ったけれどなにをやってもダメで……なんとなくなった高校教師も、いつも自信がなくて。生徒にもなかなか興味を持ってもらえる授業ができない。
向いてないのかな、とか辞めたいとか思いつつ、神社で一人年明けを待っていたら。
「あれー?松岡先生?」
長い黒髪の女子だった。担当クラス、二年二組の生徒。金沢ひかり。
ひかりは唯を見て駆け寄り、笑顔で話しかけてくれた。
「先生も年越し?」
「あ、あぁ……。金沢も?一人で?」
「友達が一緒だよ。同じクラスのななみんと、風香ちゃん」
「そうか……受験祈願できたの?」
「うん。うち、結構無理めじゃん?あ、ねぇ先生、先生が補習してよ」
「お、おれが?でも……」
「ね、お願い!先生の授業、うち好きなんだ!」
好き?好きって言ってくれるの?
「あ、ごめん先生。ななみんたちが呼んでる!じゃ、よいお年をー!」
それが、唯先生とひかりちゃんのはじまりでした。
二〇一〇年十二月一日。金沢ひかり、高校三年。
「金沢……受験大丈夫か?」
「えーと、やばいね。へへ」
ひかりは都内の国立大学を志望していた。そこそこの成績だったら行ける、普通の大学。
「もう一度やろうか」
唯はテキストを開いて、ひかりの苦手な範囲を探す。
「ういー……先生休憩!」
「金沢、もう少し頑張ろう」
「先生がキスしてくれたらうち、頑張るー!」
「冗談もほどほどにしなさい」
「ジョーダンじゃないよ?」
唯はぎょっとして、ひかりに目を向けた。ひかりはまっすぐ見つめ返して、はっきりと口にする。
「うち、先生のこと好きだもん。ずーっと好きだった」
唯はその場から逃げた。
それからひかりを避けるように、理由をつけては補習から逃れた。
三月、卒業式。
ひかりは無事に志望校を合格して、卒業式に出席する。唯は担任として、出席する。式の間中、ひかりから目を離せなかった。
一年前のあの日、ひかりが言ってくれた言葉を思い出す。
『先生の授業、うち好きなんだ!』
あの言葉に救われて、唯は今でも教師を続けられている。ひかりのおかげで……。
式は終わり、卒業生も帰宅した。教師も帰るところだ。唯も自分の車に乗り込もうと、ポケットからキーを出そうとした。
「先生!!」
帰宅したはずのひかりがそこにいた。
「金沢……どうしてここに?」
「告白しに来ました」
ひかりは息を深く吸い込み、絶叫した。
「金沢ひかりはッッ松岡唯のことが好きですッッッ!!!!!!!!!!」
息を切らせて、ひかりは涙を流す。
「うちのこと……生徒だからダメっていうなら……せめて、一度だけ『ひかり』って呼んでください……」
桜が散る。ひかりの黒髪と桜のピンクの、コントラスト。
「ひかり」
忘れられないのは、心に残るから。太陽の光のようにこびりついて離れない、深い想い。
「ひかりが好きだよ」
「…………ほんと?」
あの時逃げたのは、あのひかりに届かない気がして、怖かったから。だって自分は、こんなに劣等感の塊で、君にふさわしくないと思っていたから。でも、君の言葉は、おれの深いところに届いた。
「好きだよ、ひかり」
これは唯先生とひかりちゃんの、小さな恋の物語。
ひじきたんです!
初の短編でした。連載の合間に作りました。女子高生を叫ばせたくて、こんな感じになりました。黒髪と桜が好きです。
連載中の亡霊×少年少女もよろしくお願いします。
2015.8.4 ひじきたん




