記憶を辿る物語3
「なにか手がかりは見つかったか?」
「んにゃ、なにもなしだ。やっぱ事件ってだけあってそう簡単にはいかねーわな」
俺とタヌキは捜査を開始していた。仕方なくだが。
今月に入って行方不明者は15人。先月と合わせれば21人にものぼっていた。
今更だが、タヌキは背が高い。176cmの俺より頭一つ分ほど飛び出ている。髪は茶色い短髪でパッと見は好青年に見える。だからどーしたという話だが、この外見が思いのほか聞き込みの役に立つ。
俺はといえば長い前髪で顔を隠した冴えないルックスだ。髪を切れって?嫌だね。このシャラーンってなってるのが自分では気に入っているから。
「そー言えばこの近くに上手いフィッシュ&チップスの店があるらしいぜ~」
だからなんだというのだ。タヌキは本当にいろいろ唐突だ。
「ダメだ。調査が先だ。図書館で頑張ってくれている月にバレたら屠られるぞ」
当然だ。ちょっと鍵閉めただけでMAX COMBOの女。サボタージュがバレればどうなるかは目に見えている。
「それはいただけねーな。もう少し頑張るか蒼!」
タヌキは姿勢をピッと正すとそそくさと歩き始めた。
正直言えばやめて帰りたい。俺は人と話すのとか得意じゃないんだよ。
「あ、あぁ」
俺達の捜査はまだまだ続きそうだった。
「おーす月~。何かわかったことあったか?」
俺達は月と合流すべく図書館に来ていた。
このイデア王立図書館の蔵書数はこの世界でも5本の指に入るほどだと言われている。高尚な哲学本からちょっとアハーンは内容の本まで幅ひろくだ。
月にはここで事件のあった日のイデアTIMESを調べてもらっている。
「ぜんぜんだめー。被害者の共通点もなければ犯行現場もバラバラ。正直お手上げだわ」
「月にしては珍しいなー。」
「しっ。黙って。図書館では静かにして30分ほど息を止めていてタヌキ」
月はタヌキに冷たくすることが多い。ツンデレか何かだと思っていたがたぶん違う。過去に何かあったのだろうか?
「よしきた!任せときな月。レデーの頼みは断るなってうちのばーちゃんが言ってたからな!」
「いやちょっと待てタヌキ。それはおかしいだろう!」
ザーザザッ
ーーーー違う、違うーーーーーー