護ることと戦うこと 2
しかし、当然まだそれで竜の民の協力が完全に得られたわけではなかった。村長の条件は、改革派と保守派の意見をまとめて、そのうえで飛竜の谷がセイラン国に協力するということだったのだ。ユイハの改革派はもともとの考えがエレノアたちと同じだったのである。早々に話がつくのは当然のことと言えた。
問題は保守派のほうである。
エレノアらと同じくして、保守派のリーダー宅へと訪問しに行ったリバゴたちだったが、完全に拒否され、その姿すら見せてはもらえなかった。
「で、おめおめと戻ってきたというわけか」
村長の家に再び集結した騎士団は、それぞれの話し合いの結果を報告しあい、その成功と失敗に一喜一憂していた。
「いやいやいや。おめおめととは、聞き捨てなりませんな。だいたい、保守派は最初から難しい話し合いになるだろうことはわかっていたじゃないですか。団長のほうの成功は当然であり、こちらと一緒にされてもらっては困ります」
自分たちの失敗をエレノアに冷たく一蹴されたリバゴは、これまた丁寧なのか乱暴なのかわからない言い方で、そう答えた。
「リバゴ。お前らしくないな。つまりそれは、卵の殻を割ろうとして、ヒビひとつ入らなかったというのに等しい。結果は確かにそちらのが難しいだろうということは予想していたが、まるきりの収穫なしというのは、さすがに駄目だろう。せめてリーダーの顔くらいは拝んでこないと」
確かにそのとおりだった。
「す、すみません」
自分の力不足を痛感したのか、今度は素直に謝ったリバゴである。がっくりとうなだれ、肩を落としている。そんなリバゴを見て、ともについていったリュードとアーニャも肩身が狭そうな様子で部屋の隅でうつむいていた。
「まあ、しかし確かに保守派は一筋縄ではいかないだろうということはわかっていたことだ。今度は私が直接交渉に当たるさ。それより、先程からニナの姿が見えないが、どこにいる? お前たちと一緒じゃなかったのか?」
「ああ、そういえば、話し合いに行く途中まではアーニャにひっついていたんですが、いつの間にか姿が見えなくなっちまいましたね。まあ、どこかに遊びにでも行ったんでしょう」
それを聞いたエレノアは、怪訝そうに眉間に皺を寄せた。
保守派のリーダーナギリという男は、かなり慎重な男だとサトが話していた。外部から来た人間に、そう簡単に会いはしないだろうということも。
だが、それであきらめるわけにはいかない。村長の条件は、保守派も改革派もひとつにまとめなければ、飛竜の谷として協力することはできないということだったのだ。一度門前払いを食らったくらいで挫けているわけにはいかない。再び、今度はエレノアたちも加わってナギリの家に出向くことになった。
エレノアたちはさっそく草原を進み、ナギリの家のある東のはずれへと向かった。すると、ちょうどその付近で、飛竜を連れて歩いている小柄な獣人の男の姿が見えた。
男に声をかけようとエレノアが近づいていくと、その姿を見た男はぎくりとした表情を浮かべ、慌ててそこから走り去ろうとした。
直感的になにかを感じたエレノアは、男を追いかけた。そしてすぐに男を捕まえると、他の団員たちの前まで連れていき、話を聞くことにした。
「なぜ逃げた? ずいぶん失礼な態度じゃないか」
腕組みをして見下ろしてくるエレノアに怯えた表情を浮かべながら、男はおどおどと言った。
「ナ、ナギリさんに言われたんだ。人間たちと絶対に接触するな。見たら逃げろって……」
その言葉を聞き、エレノアは眉間に深く皺を刻んだ。
「そうか。相当嫌われたものだな。私たちも。だが、はいそうですかとここできみを放してやるほどこちらも余裕があるわけではないんだ。悪いが、ちょっときみに働いてもらいたいことがある」
そうして、エレノアは男にあることを話して聞かせた。




