聖王シューミラ 3
そして、ユヒトたちは案内役のエルフに連れられる形で、ついに謁見の間の前までやってきた。
扉が開かれると、その先には広い空間が待っていた。
すぐに目についたのは、天井付近で点々と光っている不思議な光の球。それぞれの光の球は独自に様々な色あいで光り、さらにそれらは重さがないものかのように宙に浮かんでいた。なにを光源にしているのか、どうやって宙に浮かんでいるのかわからないが、きっと優れた魔法使いを多く有しているとされるこのエスティーアでは、こんなものも案外容易く作れてしまったりするのかもしれない。
そしてその部屋の正面奥には、森と水をイメージとしたハザン国の旗が飾られ、その下には玉座が鎮座していた。美しい宝玉で装飾された玉座の上には、まだ誰もおらず、ユヒトらはちらちらと横に並ぶ警護の兵士たちに視線を送っていた。
「もう少しで入室されるはずだ。しばし待たれよ」
すぐに会えるものだとばかり思っていたユヒトは、少しだけ緊張していた体を緩ませた。とりあえず言われるままにしばしその場で待機する。
しかし、それからかなり時間が経っても、シューミラはなかなか謁見室に姿を現さなかった。
「どうしたんでしょう」
「なにか不都合でもあったのか?」
ユヒトたちが落ち着かない様子になってきたのと同じように、周囲の警護のものたちもそわそわと謁見の間の奥に設けられている扉に視線を送っていた。
聖王の侍従らしき美しい女性のエルフが、様子をうかがうためにそちらへと向かう。彼女が奥の部屋に入ってすぐに、そこから悲鳴が聞こえてきた。
「何事だ!?」
警護の兵士たちがそれを聞きつけてそちらへと向かっていく。ただ事でない様子に、しばらくその場に跪いていたユヒトたちもその場を立ちあがった。
「なんだ? どうしたってんだ?」
「何事かあったんだろうか」
仲間たちが疑問を口に乗せると、次の瞬間大きな音を立てて奥の部屋の扉が開き、なかから一人の兵士が叫びながら転がり出た。
「た、大変です! 聖王様が……!」
それを聞いたユヒトたちは、互いに顔を見合わせると、すぐに奥の部屋へと駆けつけた。




