Mission1-6
[いや、話は単純でしょ? 要するに、地球が破壊される前に戻してしまえばいいんだよ]
そうは言っても、単純な話しではないでしょうに……
[いやいや、1人だけ可能な女性がいるんだよ。 俺の知る限りね……]
「ディルか?……」
[うん。 彼女なら、時空間魔法を扱う、彼女なら……それも可能じゃないかな?]
{理論的に考えれば、そうなのだが――――――果たして、こちらの世界でも魔法を使えるかどうか……}
えっと……ディルって言うのは、翔琉さんの仲間でしょうか?
[そうだよ。 時と空間を支配する魔法の継承者……彼女なら、地球を元通りにできるんじゃないかな? って思ったんだよね……でも、もしこの世界で魔法が使えない場合には、他の方法を探すさ。 元々人類の役に立とうと思って行動してきた頭なら、きっといい案も出るはずじゃないかな? 優秀な科学者も、そろってるんでしょ? この火星の基地には]
ええ、それは勿論。
世界から厳選された、優秀な科学者たちの集まりみたいなものですし―――――
[では、行動に移すことにしよう……では、ツバサ君。 現実世界でまた会おう]
そういって天野翔琉博士達が消えたところで俺は目が覚めた。
眠りについてから約30分くらい経過していた。
いつの間にかミアが帰ってきたようで
「あら、お目覚めかしら」
といい、ベッドの方へと歩いてきた。
しなやかにジャンプして、スタッと俺の膝元に着地した。
点数をつけるとするならば、100点満点中、70点と言うべきなのだろうか?
-30点の理由は、着地の時に俺の足を思いっきり踏んだため、痛かったことが主な要因である。
「そういえば、さっき救急センターから連絡が来ていたわよ。 博士が目を覚ましたみたいよ。 行ってみない?」
「ああ……そうだな……」
ミアは不思議そうに俺を見つめていたが、俺が抱きかかえると嬉しそうに頭を俺の手にこすり合わせている。こちょばしいので、すごく手がかゆい。
まあ、そんな事より急いで俺は、否俺たちは、救急カプセルのあるフロアへ向かった。
到着早々、ミランダやルート、その他の研究スタッフが博士を取り囲んでいた。
しかも、女性スタッフばかりであるので、目的は歴然としている。
こんな時にも、女性陣はどうして……まあ、いい。
「すみません、通してくださいね~」
と言いながら、隙間をかき分けて進んでいく。
さながら、密林の生い茂る林の中を、慎重に進んでいる気分である。
「ふう……あ……」
先頭に出ることができて、ようやく天野翔琉博士の元へとたどり着けた。
博士は俺を見るなり
「やあ、ジェット君」
と明るく手を振る。
それを聞いていた女性スタッフは、驚いていた。
何故なら、一応俺と博士の対面はこれが初めてなのだから、顔はおろか、名前を知っているというのは不思議な話である。
少し間が空いて、ルートが研究スタッフに戻るように指示を出すと、部屋には俺とルートとミランダと白百合のみになった。
「で? ジェット。 なんで、博士はあんたの事知ってるわけ?」
と白百合は俺にぐいぐい顔を寄せながら聞いてくる。
途中ミアと目があったようで、2人の間に火花が散っているのは気のせいだろうか?
「えっと……それは……」
なんて説明しようか。
”夢で出会いました”なんて、非科学的と言われそうなことは言えないし、かと言って精神世界でなんて言うと……
とまあ、悩んでいると、博士は助け船を出してくれた。
「いえいえ、俺がジェット君の事を知っていたのは、先ほど目覚めた時に、助けてくれた人物の名前を聞いていたからですよ。 名前からして、男性かな?って思ったので、彼がそうなんじゃないかと思って呼んでみただけですよ。 ね? ジェット君?でいいんだよね?君」
なんかかなり焦ってごまかしているようにしか聞こえなかったが、さすがはご都合主義。
俺以外は納得していた模様。
と、ルートが少し博士に歩み寄る形で近寄って
「ところで博士、あなたはどうしてあんな状態になっていたんですか?」
天野翔琉博士がルートの質問に答えようとした瞬間に警報が鳴った。
しかも、レベル9の緊急警報である。
この基地にはいくつもの防衛システムや、世界の状況において警報が鳴るようになっている。
その警報レベルの種類は、1~10ある。
9の場合は、侵入者である。
【緊急警報発令・緊急警報発令・この基地に侵入者が潜入した・繰り返す侵入者が潜入した・至急要人を保護し、脱出せよ・研究員はデータをサブのサーバーへと移して、第二合流地点へと退避せよ……】
という感じで、緊急連絡が俺の端末に流れてきた。
ルート隊長と、白百合、そしてミランダさんは天野翔琉博士の保護を最優先。
俺は、侵入者の排除へと向かう。
「ジェット君……」
と現地へと赴こうとした俺に、天野博士はそっと耳打ちをした。
その内容はにわかに信じがたいものであった―――――