Mission8-5
間一髪……と言うところで、天野翔琉博士を救出できた。
いや、もう瀕死なんだから、間一髪でも何でもない。
俺たちは遅すぎたのだ。
神殿の構造は思った以上に複雑だった。
そのため、最奥まで辿り着くにはだいぶかかってしまった。
でも驚いたのは、神殿の最奥部に天野翔琉博士は居なく、割れた結晶と液状の跡みたいなものが、点々と別口に続いていたことだった。
そこから、ディルは天野翔琉博士は自力で脱出し、逃げていると推測した。
何から逃げているのか……それは、彼を捕らえようとする者。
彼はそれから逃げ切ればどうにかなると思ったのだろう。
だが、それこそが罠だったのだろうな。
「翔琉‼」
そう言ってライが急いで駆け寄り、俺から翔琉を受け取るとすかさず治療を開始した。
「翔琉……あぁ……翔琉……どうしてこんなことに……」
ボロボロと涙をこぼしながら懸命にライは治療を施そうとするが、魔法がうまく発動しない。
この空間……なにか、特殊な結界みたいなものでも貼ってあるのか?
それとも、ライの心のせいなのか……はたまた、天野翔琉博士自身の……。
「ライパパ!どいて!俺が治療する‼」
そう言ってジンライが、身体に光を灯して、博士に光を注ぐ。
だが、やはり……彼は回復しない。
「そんな……神魔法を使っているのに……なんで……」
「それは、あいつのせいだからよ」
と、ディルはクトゥルフの方をギロリとにらみつける。
そして、言った。
「どういうつもりかわからないけど……覚悟しなさい……アマギ」
アマギ?
あいつが?
「あははは。流石は時の監視者。よくぞ見破ったね……」
「アマギぃぃぃぃ‼」
ギリッと、ジンライは巨体なアマギを睨み付ける。
その目は真っ赤になり、怒りが支配しているようだった。
「おぉ、怖い怖い。あー、そうそう。翔琉は回復できないようにしといたから、あと持って数分……くらいかなー。だいぶ出血もしてたみたいだからな☆」
そう言って切り落とされた触手の落ちたところを指差す。
そこには確かに、出血多量と言えるレベルで真っ赤に地面が染まっていた。
「白百合、輸血パックは?」
「カプセルタイプがあるけど……彼の血液型分かるの?」
「俺とおんなじ……」
「了解」
白百合は、博士にカプセルを飲ませる。
青白くなっていた彼の顔はだいぶ色は戻っているようだが、出血は止まらない。
「だめね、これじゃあ気休めにもならないわ……」
「荒業でいいなら……」
そう言って炎の大魔導士エンは、もっとも傷の深いところに手を当てそして……。
「ぁぁぁぁぁぁ!!」
博士の傷口を焼いた。
まあ確かに、これで一時的には出血はおさまるけど……。
それでも。
「そいつの死は決定している」
そうアマギは笑いながら言う。
だが、次の瞬間アマギは吹き飛ばされる。
それは、エンの嫁であるファイの打撃を食らったからだ。
「あんたには、まだちゃんと仕返ししてなかったから……たっぷりしてやるわ」
「あ、私もやる~召喚魔法‼召喚‼暴風龍」
ライの弟子フィリは、魔方陣から風を纏ったドラゴンを呼び出し、使役し攻撃し始める。
攻撃が二人によって激化する中、俺と白百合は治療中のジンライたちを守るべく展開した。
もちろん、アマギへの攻撃は忘れない。
俺は銃撃、白百合は斬撃で。
「空間魔法でこの場所を結界から遮断して……」
「俺が神魔法を濃縮させて……」
「二人で光治をかければ治るはず」
そう言ってディル、ジンライ、ライは必死になって博士を治そうと頑張っている。
だが、その努力虚しく、一向に効かない。
「いったい、何が原因なんだ!」
「こうなったら……ジェットくん、ちょっと来て‼」
「はい?」
「今からあなたを翔琉の精神世界にジンライと一緒に飛ばすから‼」
「なにぃ??」
どうしてそうなった?
「外的要因じゃなくて、魔法が効かないのは内的要因かもしれない……それを確かめるために、あなたとジンライを送りたいの‼」
「いや、なんで俺なの?」
「精神世界に潜るのは近親者の方がより安全なの。あなたは、翔琉の血を持ったクローン……云わば、翔琉の血統であるからそれに該当するわよね?」
「あぁ……そういうこと」
「ジンライは翔琉が産んだ子供だから翔琉の近親者……だから、二人が……」
「ん?ちょっと待て……今不自然はワードがでたぞ?」
「……時間ないの!詳しくは、潜ってる間にジンライから聞きなさいな‼」
そう言ってディルは俺とジンライの頭に手を当てる。
そして俺たちはそのまま意識が消えたのだった。




