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外伝-JMG [ジェット・モード・ガン] -  作者: ただっち
最終章ー鳴り響く終焉の咆哮ー
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Mission8-1

 クトゥルフ。

 世界の旧支配者だったとされる生命体。

 その旧支配者は、かつて海から世界を支配していたという。

 だが、旧支配者はとある者との戦いに破れ、海底深くに神殿を用意してそこに眠りについたという。

 今までのタルタロス、アトランティス、ムー大陸などから考えて、ここも特殊な場所であることは確かだろう。

 特殊……というより、特異的な空間なのかもしれない。

 現代に至るまでの科学ですら、時折覚醒する能力(アビリティ)について完全な解明ができていないこの状態で、不可思議な現象など分かるわけもない。

 故に俺たちは警戒しなければならないのだ。

 

 「もうすぐルルイエに着くわね」

 

 完全回復した白百合は、甲板で潮風を感じていた。

 海底ではなく、海上ということもあり、久々に船の上でゆっくりとした時間が過ごせていたのかと思う。

 

 「ねぇ、ジェット……」

 「なんだ?白百合」

 「ルルイエで天野翔琉博士を助けるじゃない?」

 「うん、そうだな」

 「そのあとって、博士を元の世界へ返すんでしょ?」

 「まあそうだな」

 「そのあとってどうするの?」

 「そのあと?」

 

 天野翔琉博士を助けて、元の世界へ返して……そのあと……か。

 思えば任務と殺ししか行ってなかったな。

 未来を奪う仕事をしていたのに、未来の話をするだなんて不思議だけど……。

 

 「そうだな……どっか、誰も知らないところでゆっくりと何気ない生活がしてみたいな」

 「あー、自給自足的な?」

 「そうそう。そんで、誰にも知られることなく、静かに過ごしていたいな……もう、利用されたりされるのは嫌だしね」

 

 そうだ。

 もう、俺は自由になりたいんだ。

 何者にも支配されたくない。

 もう……誰にも……。

 

 「うんうん。それでいいと思うよ」

 「でも、誰にも知られていない場所なんて中々ないよな~」

 「無かったら探せばいいさ。まだまだ人間が知り得ていない未開の地も在るかもしれないのがこの星でしょ」

 「そうだな……そうだよな」

 「……ねぇ、ジェット」

 「ん?今日はやけに……‼」

 

 俺は驚いていた。

 だって、普段は暴力的で、狂暴で、切れると無差別に切り捨てる冷酷な女暗殺者である白百合の……白百合の……唇が……。

 

 「ふぅ……」

 「し、白百合??」

 

 声が裏返るほどに俺は動揺していた。

 いや、動揺どころじゃない。

 顔が熱い……。

 心臓の鼓動も早くなっている。 

 

 「まったくジェットったら。こうでもしないと、私の気持ちなんて伝わらないんだから……」

 「え?」

 「私、組織を今回の件で裏切ってしまったんだから、もうあの場所へは戻れないの。だから、ジェット……ちゃんと、責任取ってよね」

 「せ、責……責任??」

 「私と結婚して、穏やかに隠居生活を送るの!」

 「え、あ、は……はい……」

 

 こんな感じで俺と白百合は結ばれたのだった。

 なんとも、男としては他人に自慢できない結ばれ方である。

 

 

 ルルイエまで残り数㎞というところから、既に海上都市ルルイエは見え始めた。

 不気味な石柱が建ち並び、異様なまでな霧が辺りを覆っていた。

 そして、一番の決めては、海洋生物たちの死骸が、石柱に槍で串刺しに張り付けられていることだ。

 不気味という観点より、異常であると言わざる終えない。

 なにより、一部の海洋生物は石のようなものになっているけど……。

 なんだ?そういう習性なのか?それとも……。

 

 「ジェットくん。用心しなよ……」

 

 そういって甲板にフルートが出てきた。

 あれ?そう言えば、俺はなんでこの人のことをフルートだって知ってるんだ?

 俺はこの人と会うのは初めてのはずなのに……。

 いやまて……なぜ、この女がこの船に乗っている?

 

 「……お前は誰だ?」

 

 そう俺がフルートと呼んでいたその女に言うと、フルートは身体をグニャリとネジ巻き、見るも無惨な化け物のような生命体に変化した。

 なんだこれは。

 

 「あーあ……変身魔法解けちゃった……」

 「お、お前は……」

 「私はフルート……天野翔琉の異世界での仲間にして、3人の太古の魔導士の1人……」

 「で、でも……聞いてた姿とは……」

 

 ジンライや、ディルたちから聞いていた容姿とはまるで違う。

 この姿は本当に……。

 

 「ええそうよ。化け物の姿に変えられた……というより、替えられたと言うのが正しいのでしょうね」

 「替えられた?」

 「実は私、ルルイエに既に行っていたのよ」

 「‼」

 「そこで、ある敵と戦ったの。確か、イースって名前だった」

 「確かそれってクトゥルフ神話に出てくる大いなる一族の名前?」

 「えぇ。あいつは、最後の末裔っていってたわね」

 「確かに、イースの大いなる一族は精神を入れ替える力を持っているとは伝承で聞いたことがあるけど……」

 「にわかに信じられないでしょうけど、事実……私はここにいる」

 「でも、それならなぜみんなに話さなかったんだ?」

 「こんな姿の状態で話したところで、みんなは納得してくれないと思ったからね……とりあえず、今はジェットくん。そして、白百合さん。あなた方にだけ、真実を……」

 

 と、フルートがなにか話そうとしたとき、それは海底から飛来した。

 海から勢いよく飛び出して、甲板に上がるのは水着姿の女だった。

 美しい髪をなびかせて、透き通るような肌を見せつけるかのようにこちらを向く。

 

 「ダメでしょ?フルートちゃん。逃げちゃあ……」

 「イース……」

 

 ごくりと息をのむフルートの様子から見ると、この肉体がフルートの本体。

 そして、その肉体に宿る精神がイースと呼ばれる存在。

 

 「君が見てしまった出来事は、口外されると危険だからね……だからこうして……って、おやおや。もう、お仲間を連れてきたのかい?」

 「……認識をずらす魔法で、転移してきたふりをしてたんだけど、さすがは翔琉の一族……異変に気づいて現状を見抜いてくれたわ」

 

 いや、別に見抜いてないけどな。

 

 「ほほう。旧支配者様がお気に入りのあの生物か……ガタノトーア様の石化や旧支配者様の精神異常にも耐え抜くまっこと、不可思議な人間の血を持つ者か……」

 「さすがは翔琉ね。ってことは、あなたたちの力の源は魔法……」

 「そうだな。そう言うのが人間らしくて分かりやすくてよいのだろ?自身たち以外を魔と記し、魔の者が扱う法術(ほうじゅつ)だから、魔法……うまいものだ。ケケケケッ」

 

 不気味に笑うイースに、歯軋りをするフルート。

 今まさに戦闘が起きようとしたその時、甲板にディルが上がってきた。

 

 「ねぇ、ジェット……くん?ん?なにこれ?敵?」

 「そうなのよ!!助けてディル‼」

 

 そういってイースは、ディルの方へと向かう。

 イースは、フルートの身体を奪っている状態。

 だからこそ、気づかれないと思った。

 

 「あら?フルート……どうしたの?」

 「ジェットくんたちが、あの化け物に操られてしまっていて……力を貸して、ディル‼」

 「あー、そういうことね。いいわよ」

 

 嘘だろ?と思っていたが、ディルは魔法を放つ構えをとる。

 

 「ディルやめろ!!」

 「やめるもなにも、私は障害物に邪魔するだけよ」

 「さあ、ディル‼やってしま……え?」

 

 ディルが解き放った魔法は、フルートに当たる。

 だがそれは、フルートの肉体……すなわち、イースが潜入している身体だったのだ。

 

 「そ、そんな……な、なんで……」

 「ばっかじゃないの?私が友達を間違えるわけないじゃない。どんな姿にされようと、私は大切な友達であるフルートを間違えないわ」

 

 にこりと、化け物の姿に替えられたフルートに向かってディルは微笑んだ。

 フルートは思わず涙をこぼしていた。

 

 「くそ……だが、どうする?俺様がこの身体を奪っている限り、何者にも……」

 「空間魔法:魂変更(ソウルチェンジ)

 

 ディルがそう言うと、フルートとイースの身体は入れ替わる。

 つまりは、お互いがお互いの肉体へと戻ったのだ。

 

 「そ、そんな馬鹿な!!」

 「ありがとう、ディル」

 「私は時空間を操る魔導士。空間に細工すれば、魂さえも抜き取れる空間を作ることができる……さあて、お前……覚悟しろよ?」

 

 ふふっと笑いながら、拳をパキパキッとならしているディルと、どこからか取り出した鈍器を持っているフルートがゆっくりとイースへと近づき。

 そして……。

 

 「ギャァァァァァァァァァァァァァ!」

 

 という断末魔が海上に鳴り響くのだった。

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