Mission4-7
禁じられた兵器【エーギル】。
古い文献には、地上全てを焼き付くし、地球そのものを破壊することもできる悪夢のような兵器。
大昔、ポセイドンがまだ生きていた頃の時代に作ったらしい。
神の名を持つその兵器は、ポセイドン亡き今使えなかったはずだったのに……今は、オクトンが兵器の鍵となってしまっている。
つまり、あの兵器を止めるためにはオクトンを殺すしかないってことだ。
『アハハ……オマエラヲコロシテ、ポセイドンノイナイセカイモツイデニブッコワシテヤル‼』
拡声器のように、辺り一帯にオクトンの声が響く。
「白百合、ナイフは?」
「……あいつに食べられちゃったの。服ごと」
「なら、これ貸してやる。無いよりましだろ?」
と、俺は足に仕込んでいたサバイバルナイフを彼女に手渡した。
彼女は、俺が羽織らせたコートをしっかりと着て、スッと立ち上がる。
「うん。これなら、行けるわ」
「ライたちは……?」
と、不意にライたちを見ると、そこにはちゃんと服を着ているライたちのすがたがあった。
「あれ?君たちも服食べられたんじゃ……」
「ん?あー、食べられたけど、予備の服とか別空間にストックしてあるから、服食べられたところで、なにも変わらんぜ」
「あ、そうなのね……」
じゃあ、すぐに服着ろよ……とかは言わないでおこう。
「さてさてさーて……どれを使うかな……」
俺は懐から2種類の武器を取り出して、迷っていた。
1つは対戦車ライフル。
もちろん、下手をすれば衛星さえも落とせるように改造してあるものだ。
そしてもう1つは、俺の最後の奥の手……。
対戦車ライフルなど、蚊ほどに思えるほどの兵器だ。
だが、効果範囲が広い上に、こんな海底にまで届くかどうか……。
「んじゃ、これだね」
と、対戦車ライフルを手に取る。
あの兵器は、また別の機会にとっておくとしよう。
「白百合、行けるか?」
「……ええ。この借りは、きっちり返してやらないとおさまらない……」
鬼気的なオーラを放つ白百合は、いつもの戦闘モードになっている。
否、いつも以上に恐ろしいほどの殺気を放っている。
「ジェット……援護よろしく……」
そういって白百合は、【エーギル】へと突っ込んでいった。
放たれる無数の弾丸を斬り分け、突き進んでいく。
「ふん、他愛もない……」
『チョウシニノルナヨ‼コムスメ‼』
そういって、今度はミサイルが無数に飛んでくる。
だが、白百合はそれすらも斬り分ける。
しかも、爆発しないように信管を外すように斬り分けている。
「さっすが~」
と、俺は感心していた。
てか、俺の出番なくね?
「いや、びっくり。あの娘、あんなことができるんだね、ジェット」
「そうだぜ、ディル。なにせ、白百合はこの世界でも1、2を争う近距離戦闘のプロだからな」
と、俺が自慢気にディルに語っている頃、【エーギル】の砲弾は、全て切り分けられていた。
もの見事に、真っ二つだ。
『バカナァァァァァァァァァァァァァァ‼コムスメゴトキガ……コノ【エーギル】ヲ‼』
「……オクトン。お前は、とんでもねぇ人物を怒らせてしまったんだってことさ」
ズバッ、ズバッ……と、【エーギル】は鮪の解体ショーの如く、ズバズバと切り分けられていく。
「……俺、いらなさそうだな……」
とは、いいつつ俺は対戦車ライフルの構えを解かない。
最後の最後まで、油断大敵だ。
追い詰められたタコが何をするか、分からないしな。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」
だがそんな心配とは裏腹に、鬼気的なオーラを放つ少女の咆哮と、共に……【エーギル】は、その身を真っ二つにされ、崩れ落ちたのだった。
凶悪な兵器と言われた、【エーギル】が……こんなにも簡単にやられてしまった。
ビックリだよね。




